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385. オーガの村の男祭り 3 (カレーそば) ◎

料理写真入りです(2021/4/27)




イシルが部屋から出た後すぐに、サクラは ベッドのわきの椅子に忘れられたイシルの上着に気がついた。


(こっそり、拝借)


とろとろ、、


うとうと、、


布団の中でイシルの上着を抱きながら幸せな眠りにつく。


イシルの上着からはイシルの匂いがして、イシルの存在を感じられ、現世での疲れが癒されるようだ。


帰って来て、出迎えてくれたイシルの顔を見た瞬間に どっと疲れが襲ってきた。

安心したんだと思う。

それだけ 気を張ってたんだなと思った。

たかが満員電車に揺られたくらいで。


上京したての頃のことを思い出した。

田舎の一両車両と違い、長い長い電車。

勿論人も多い。


単線で、乗れば目的の駅に着く実家の電車とは違い、行き先もかわるし、乗り換えも必要、駅の中は迷路のよう。

待ってと走っても止まってくれない

(↑実家の電車はちょっと走り出しても止まってくれる。一時間に一本だから)


日曜は止まらない駅があるってどういうこと!?

何度駅員さん、お巡りさんにお世話になったことか。


田舎でのびのび何も考えずにいたところから都会の荒波に乗り込んだ 夢と勢いと体力任せだった無謀なる若かりし頃――


もう若くないんだよ、疲れます。

久しぶりに通勤ラッシュにもまれ、いかに異世界(こっち)で のほほんと暮らしてたか思い知った。

イシルの存在が いかに大きいかも思い知った。


サクラはイシルの上着を抱きしめて眠る。


(イシルさん、オラにパワーを!!)


サクラにパワーを注ぐように イシルの上着がくちづけをくれた。


とろけるような甘いくちづけに、サクラもその引き締まったくちびるに 応えて愛を返した。


イシルの上着はいい匂い。

優しく、あったかくサクラを抱きしめかえしててくれる。


すりっ、と すり寄ると、心地よく拘束された。


髪を撫で、頬を撫で、首から肩、背を抱き、腰を抱え……

まるで、イシルの腕の中にいるようだ。


安定、安心、癒し……そこがサクラの定位置であるかのようにしっくりくる。


イシルの上着は魔法の上着。

まるで、本人がそこにいるみたいだった。


ふわふわと、甘く、、心地よい、深い眠りに入って行き――


″コンコン″


サクラはドアをノックする音で目が覚めた。


(うにゃ?)


『サクラさん、おきてますか?』


ドアの外でイシルがサクラに呼び掛ける。

サクラは はっと目を覚まし、抱きしめていたイシルの上着を 元の場所――ベッドのそばにある椅子の背もたれに パサリとかけた。


″カチャリ″


入れ違いにイシルが入って来る。


(あっぶね!)


バレるとこだった!間一髪!!


イシルはサクラのそばによると、サクラのおでこに手を当て、首筋に手を当てた。


「熱は下がったようですね、晩ごはん、食べられますか?」


「はい、いただきます」


「ああ、僕の上着、ここにあったんですね」


イシルが上着をもち、行きましょう、と サクラに手を貸してくれる。


(セーフ♪)


バレていないようで、サクラはホッと胸を撫で下ろした。





――イシルはそんなサクラに、心の中でクスリと笑う。


セーフじゃないですよ?サクラさん。

上着、シワシワだし、ほんのり温かいですからね。

貴女の香りも移ってるし……

貴女はツメが甘いんです。


「そんなとこも かわいいですけどね……」


「何ですか?」


おっと、口に出ていたようだ。


「いえ、晩ごはんは簡単に お蕎麦ですけど、いいですか?」


僕もさっきまで寝てましたからね。

手抜きです。


「はい、お蕎麦、好きですから」


サクラはすっかり元気になったようだ。





◇◆◇◆◇





晩ごはんは『カレー蕎麦』だった。


ダシで材料を煮て、カレー粉、醤油、みりん、砂糖で味を調え、水溶き片栗粉を加えてとろみをつける簡単で美味しい料理。


『カレー南蛮』ではなく『カレー蕎麦』

二つの大きな違いは、長ネギが入っているかどうかです。


南(外国)から来た人『南蛮人』が、ネギを好んで食べていたようでネギ入りのものを『南蛮』と呼ぶようになったとか。


小鍋を覗くと、イシルの作ったカレーにはネギではなく玉ねぎが入っていた。

カレー蕎麦だ。


「残り物の組み合わせですみません」


どうやら一から作ったのではなく、亜空間ボックスにストックしてあった作り置きのカレーを温めたようだ。

少しダシでのばしてある。


「一人だったり、薬草園でメイ達と食べるのに カレーは手軽ですからね」


たまには手抜きも必要ですよ、イシルさん。

前の日のカレー、大好きです!


「ランはまだ帰ってないんですか?」


蕎麦をゆでるイシルにサクラが尋ねる。


「遅くなるようです。サクラさんは食べたら二時間は寝ないでしょう?先にいただきましょう。ランにはお肉でも焼いてあげますから」


すまんね、ランよ。


イシルが麺を少し早めに茹で上げ、水で洗って一度シメる。

この後暖かいカレーの中に入れるので、このほうが蕎麦が柔らかくなりすぎないのだ。


「「いただきます」」


丼に箸を入れてカレーの下から蕎麦を掘り起こすと、ふわんとスパイシーなカレーの香りも起こされる。


そのまま箸ですくって持ち上げると、蕎麦の一本一本の流れに沿って、つうっとカレーが流れ落ちていき、てらてらと蕎麦にまとわりつく。


″ずっ、ずるっ、、″


口にふくみすすると、つるつるとスムーズに口のなかに入っていった。


「んふ///」


お肉は豚コマですね?いい味出てる!

スパイシーなのにほんのり甘いのは、この豚コマのおかげだね。

そして春の新玉ねぎもトロッと甘く、柔らかい。


″もぐっ、こりっ″


コリコリ食感はエリンギですね。

エリンギとえのきのキノコカレー。

キノコの風味が味に広がりをつけてくれている。

コシコシのお蕎麦麺に良く合います!


″ずずっ、ずっ、、″


トッピングはねばねば食材のオクラです。

混ぜ混めばこのとろみが つるんとお蕎麦を口の中にするすると運んでくれる。


″もぐっ、もぐっ、、″


えのきのとろみと、オクラの粘り、そして、ちょっとザラリと舌にさわるのはとけたジャガイモ、、ジャガイモのデンプンのとろみ……


「んんっ///」


なんてとろとろな口当たりなの~!?

とろみのおかげで カレースープと蕎麦が一体となって絡み合い、味わい深い!

しかも、お蕎麦は程よい噛みごたえがあり、カレーに負けないお蕎麦の味が感じられる!


「こちらもどうぞ」


イシルにすすめられた副菜は、

常備野菜のたたきごぼうのゴマ和え

(ゴリゴリ~)


切ってもすぐのびてくれる豆苗と海苔のあっさりポン酢サラダ

(ごま油風味!?)


作り置き、たっぷりネギと鶏ひき肉の塩つくね

(旨すぎデショ!!)


「男祭り二日目は 一般の飛び入り参加もあるようですよ、サクラさん、何か参加しますか?」


オーガの村の男祭り二日目は確か運動会的なものだったはず。

リベラ率いる『赤軍』と ザガンの息子の率いる『青軍』


「いや、私、運動はちょっと……」


「景品もでるみたいですけどね」


「景品!?」


″景品″の言葉にちょっと心がくすぐられる。

いや、しかし、勝てないだろう、剣士達の村なんだから。





挿絵(By みてみん)






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