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382. 指切拳万


神との謁見(診察)


75.3kg→74.8kg

血圧132-82

体重も減ってたし、血圧もまあ、よかろうということで、サクラはさっさと診察を終え、処方箋を受けとると、みやげ物を物色しに東京駅を目指した。


″昼までに異世界に戻り、オーガの村の男祭りに連れていってもらう″


それが今日のサクラの予定であり、目的である。


診察が早く終わったから、最寄りの駅から山手線に乗り換えてもまだ九時前、目的の東京駅はほぼ反対側で30分はかかる。

あれ?外回りの方が近かったかなと思いながら山手線内回りの電車に乗り、サクラは――


″むぎゅう~″


地獄を見た。


山手線内回り、8時台、超!通勤ラッシュ!!


(忘れてた~~~~!!)


サクラは朝の通勤ラッシュに乗り合わせてしまった。


サクラの後ろのサラリーマンがサクラを鬱陶しそうな顔で見たので、背負ってるリュックが迷惑なことに気づき、背中からおろす。


久しぶりの現世で、世間の流れの感覚が戻らず、ちょっとしたおのぼりさん状態だ。

こんなだったなと思いながら電車に揺られていると、新宿駅につき、一気に人が降りた。


(うわっ!リュックもってかれる!)


人の流れにリュックが流されそうになり、一旦流れと共にリュックを追って電車を降りる。

リュックを胸に抱え、発車の音楽と、乗り込む人と共に再び電車に乗り込んだ。


″むぎゅう~″


乗車率何%ですか!?

降りた人より乗った人の方が多いですよね!?


(ひえええ~~)


危険、危険すぎるよ、現代世界!

企業戦士サラリーマン。

彼(彼女)らの戦いはこんなところから始まっているのね――


(タスケテ、、イシルさん~~!!)


渋谷まで乗りきれば少しは緩和するはずだ。

しかし皆さん慣れたもので、この状況下でも器用に新聞読んだりケータイ見たり、電車に合わせてゆーらゆら。

サスガです。

毎日の事ですもんね……


そんな中、電車がゆっくりと停止し、車内放送が流れてきた。


″車内点検のため停車いたしました。しばらくお待ち下さい″


(オー・マイ・ガッ!!)


朝の電車はノロノロ運転な上によく止まる。

人身事故やホームでのトラブル、ラッシュの混雑により、気分が悪くなるお客様……


車両点検と言っても色々だ。


・非常通報装置の作動があった場合

・荷物挟まり等によるドア閉鎖確認ができない場合

・(途中で下りたお客の通報による)忘れ物確認

・空調設備の不調

・(乗客同士の喧嘩などによる)車内設備の破損

・車輌故障

・人身事故等によるブレーキ設備等の損害確認

・投石や飛来物によるガラス破損等

・小動物轢断や衝突による損害確認


車両の不備だけではなく、なんでもかんでも「車両点検」で統一されている。


特に朝は駆け込み乗車や、スマホ落とした!とか、カバン挟まった!とかで、10分くらい遅れるのは日常茶飯事。

一度電車とホームの間に落ちて挟まった人を見たことある。


(せめて次の駅に入ってから止まってくれたら良かったのに)


すし詰め状態の車内の空気は 一秒ごとに悪くなる。

皆さんのイライラオーラがピリピリと伝わってくる。

異世界の魔物なんかよりもよっぽどどす黒いオーラがみえますよ?

真に恐ろしきは人の心なり、ああ、現代、ストレス社会!

せめて車両点検の理由だけでも教えておくれ、駅員さんよ。

目算がたてば少しはこのイライラも軽減されようぞ!


しばらくしたところで 再び車内放送が入った。


″線路内に人が立ち入ったために停車いたしました。確認がとれるまでしばらくお待ち下さい″


車両点検じななかったじゃん!

そして、しばらく待つのかよ……

なんだ、酔っぱらいか?朝からご機嫌な事ですね……


その後″確認がとれましたので……″と、出発するまでに10分くらいかかった。


渋谷で人が降りると、少し空いてくれたが、品川でまた人が大量に乗ってきた。

すし詰めとまではなかったが、浜松町まではそれなりに混んでいて、サクラが降りた東京駅で、サクラと入れておくだけなの代わりに 沢山の人が乗車していった。


東京駅につくまでに、″停止信号です″″後続の電車が停止したので″と、何度か停止した。


(……疲れた)


サクラは山手線を降りるとベンチに座り、しばらくボーゼンとする。

異世界で のびのび、のほほんと暮らしていたせいか、社会に対する時に自分が纏う『社会人』のシールドが消え失せているようだ。


そして、なにより

異世界では 常にイシルがサクラの心配をしてくれている。

危ない時にはいつもイシルが助けてくれている。


(私、社会復帰できるかしらん……)





◇◆◇◆◇




予定よりも30分程遅れてようやくサクラは東京駅のみやげ物を物色しはじめた。

電車遅延もあったけど、疲れてすぐには動けなかったのだ。


東京駅でみやげ物を買うついでに、駅ナカにある百貨店に寄ったら、サイリウムではなく、ペンライトが売っていた。


ラプラスは″光る棒″と言っていたので、ペンライトでもいいだろう。

サイリウムは一度きりの使い捨て。

ペンライトはサイリウムほどの強発行ではないが、何度でも使えるからね。

しかも、色の切り替えもできる。


(よし、アキバまで行かずにすんだ!)


アキバに行けばド◯キホーテで色んなものがまとめて買えるだろうけど、今日はダメだ!

今日は″男祭り″がサクラを待っている。


サクラはみやげ物とペンライトを買い込み、ドラッグストアーがあったので、ついでに日用品やら消耗品なんかも買い込むと、さっさと地元の駅まで戻ってきた。


地元駅に戻ると、駅ビルにある100均で一応ラプラスのためにサイリウムを買い(他にもお菓子とか色々買った)現在。


まだ、12時前――


(イケる!)


本日最難関の場所へとやって来た。

そう、如月の和小物屋へ。


捕まっては長引くからと、サクラは客なのにこっそり店にはいる。

他の客は見当たらないが、如月は奥の作業場で(かんざし)作りに熱中していて、サクラに気づいていないようだ。


(よしよし)


サクラは色々と見繕い、目についたものを籠に入れ、僅か10分足らずで良さげな小物を買い集めて如月のところに持っていった。


「こんにちは、如月さん」


サクラが如月に声をかける。

すると、如月はサクラを見てフリーズした。


「相変わらず作業に集中すると気づかないんですね、如月さんは。不用心ですよ?」


「サクラ、、さん?」


サクラは愛想笑いをうかべると″会計お願いします″と、レジに商品を置く。


「お久しぶり、ですね、サクラさん///」


如月が代金を計算しながら、ちょっと嬉しそうに サクラに話しかけた。

如月の目元が少し潤んでる、、

え?え?なに?そんなに久しぶりだっけ?


「……そうですか?」


「ひと月半ぶりですよ」


あー、色々あったからね……

体重ふえたり、ミケちゃんに拉致られたり、、


「二週間後って言ったのに……」


「すみません、忙しくて」


いや、私、客よ?

お友達じゃないんだから、買いたいときに勝手に来るわ!


サクラは代金を支払うと、長居は無用とばかりにおいとまの挨拶をする。


「じゃ、如月さん、また!」


「え!?もう行っちゃうんですか!?どうして!?」


如月がサクラの腕を掴んで引き留める。

どうしてって言われましても……


「いや、忙しいので」


男祭り!イケメンの武踏を見に行くんだよ~!

早くしないと、リベラさんの剣舞がおわっちゃうよ~!!


「少しくらい話していってもいいじゃないですか」


「いや、今日は本当に急いでいて――」


サクラがお断りすると、如月は手を離してくれた。

が、ポロリと如月の目から涙が一粒こぼれて、サクラはぎょっとする。


「待ってたのに……」


(え″っ!?)


如月の目からポロポロと 涙がこぼれる。


「二週間後って言うから、待ってたのに……」


うわ!なんだコレ!?

私が泣かせてるの!?


「あきらめかけた頃に、、期待させるようにやって来て、、すぐ行っちゃうなんて……」


如月が、さめざめと泣く。

なんか、私悪い男扱いですよ!?


「ごめんなさい、如月さん、今日は本当に急いでるんで、、その、、次回!二週間後じゃダメですか?」


「……二週間後?」


如月が寂しそうに濡れた瞳をサクラに投げかける。


「二週間後!お話、沢山聞きますから、今日はほんとに、ごめんなさい」


次回現世に来る時に、イシルさんに 少し遅くなるって断りを入れれば、一時間くらいなら大丈夫だろう。


「約束、ですよ?」


「約束します!」


約束すると言うサクラに、如月がサクラに小指をたてて向けてきた。

え、今どき指切りとか本当にする人いるんだ……


サクラは如月の小指に 自分の小指をからめる。


″ゆーびきーりげんまん″


「約束、破ったら……」


″うーそついたら″


「心臓を捧げてもらいます」


うお!針千本じゃなく、まさかの進◯の巨人!?


″ゆーびきった″


ぴっ、と、小指を離すと、如月がちょっと嬉しそうに小指を胸に懐く。


なんだか如月さんが吉原の遊女に見えてきたよ……

こりゃ約束破ったら、末代まで祟られそうだ。


「はい、じゃあ如月さん、また二週間後に!」


サクラは如月に店先で見送られて、急いで薬局に行き――


(男祭りいぃぃ!!)


13時前には 無事、異世界へとたどり着いた。


異世界につくと、いつもの場所で、いつものようにイシルがサクラを待っていた。


「お帰りなさい」


イシルはサクラから荷物を受けとると 亜空間ボックスへとしまう。


「ただいま、イシルさん」


いつもの事なのに、、

凄く、ホッとした――








♪指切りげんまん 嘘ついたら針千本のます 指切った♪


江戸時代の遊郭では、遊女が本命の男性客に誓いを立てるため、自らの小指の先を切って渡すという儀式的な風習があったとか。


げんまんは『拳万』

嘘をついたら拳で1万回殴られて、針を千本飲まされるという……


さらに歌には『死んだら御免』と続くらしい。


時代的に、本当に″死んだらゴメン″なのか、″死ぬ気で守る″決意の言葉なのか、″守れなかったら死んでお詫びする″なのか


如月の『心臓を捧げて』は、間違ってなかったんですね、コワイ……

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