378. リベラとヒナ ★
挿絵挿入(2021/4/19)
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時と場所はオーガの村に戻りまして――
ラプラスに拉致られてシャナの麺工房でラーメンを食べたサクラは、イシルのお迎えが来て 麺工房を後にした。
アスとラプラスは サクラを無理やりつれ回したことで仲良くイシルから頭突きをもらい(←過保護心配性やきもち発動)、麺工房の中でのたうちまわっている。
サクラとイシルが工房を出たところで オーガの村で明日から始まる男祭りのために帰ってきたであろうヒナに会った。
「サクラさん!いらしてたんですね」
ヒナはサクラを見かけると ぱたぱたと駆け寄ってきた。
そんなヒナの姿を見て、サクラが思わず感嘆の声をあげる。
「うわあ、ヒナ、似合うね~」
祭り用の巫女服に着替えたヒナが少し照れ臭そうにサクラにはにかみをかえし、その恥じらう姿は可憐でとても可愛らしい。
「仕事、早く上がったの?」
「はい、バーガーウルフの新人さんへの引き継ぎが終わったから、アイリーンが早上がりさせてくれたんです。それで、リベラと一緒に ヨーコ様の回廊を通って帰ってきたんですよ」
ヨーコの回廊とは、転送用の魔方陣と同じ作用があり、アスの館『ラ・マリエ』に繋がっている。
アスが使ったという魔方陣も この回廊のようだ。
″リベラと一緒に″で 少し頬を染めるヒナが微笑ましい。
ヒナはリベラが好きだから。
リベラはというと、″ヒナの気持ちは単なる憧れ″と言って、相手にしてくれないというが。
「今、リベラと明日の衣裳合わせをしていたんです」
「お祭り用の?」
ヒナは巫女服の上に 薄く白い羽織を羽織っていて、ヒラヒラはためき、赤と白で白無垢の花嫁さんのように清らかだ。
「ええ。祭りの初日は 昼の演舞から始まるんですけど、今年はヨーコ様が珍しく皆の前に出てくださるというから、皆はりきっちゃって」
「そうなんだ~」
「これもサクラさんのおかげですね」
「へ?私?」
「はい」
特になにかしらした覚えはないよ?
意外そうな顔をするサクラにヒナが言葉を続ける。
「今まで誘っても『つまらぬ』と言って顔を出さなかったのに、サクラさんがドワーフの村のために頑張ってるの見て、ヨーコ様もオーガの村のために何かしたいと思うようになってくれたんです」
「サクラは不思議と人の心を和ませるからな」
ヒナの言葉の後をとり、ヒナの後から人が現れた。
その人物の祭り衣裳姿を見て、サクラはまたしても感嘆の声をあげた。
「わあ!リベラさん」
それは、ヒナと一緒にドワーフの村から帰ってきた 警備隊員唯一の女性隊員、リベラだった。
そう、ヒナの意中の人。
リベラはいつものビキニアーマーではなく、立派な甲冑に身を包んでおり、勇ましい。
それが、凄く様になっていてかっこいいのだ。
「……胸、どこ行ったんですか」
「ハハハハ!サクラは物言いがストレートだな、サラシでまいてある」
あんな立派な巨乳がサラシでつぶれるものなのか、、
「見る?」
「いえ、ダイジョブです」
オーガの村は和服に近いからか、リベラが来ているのは 戦国武将が着るような甲冑に似ている。
しかも、ナイスなボディーが甲冑で覆われ、一見女性だとは気づきにくい。
祭り用の化粧をしているのか、目元が赤く紅で染められていて、逆にそれが女性らしさを消し去っている。
誰がみても超イケメン!
「似合いすぎですよ、リベラさん」
クスリとリベラが笑い、サクラに意味深な視線を投げた。
「惚れた?」
「はい、惚れちゃいそうですね!」
ウン、ゴホン、とイシルとヒナが咳払いをする。
おっと、ごめんよ、ヒナ、つい感動が口から出てしまったよ。
「ハハハ、惚れてもらうために サクラが見に来るなら明日からの祭は本気で頑張ろうかな」
サクラをナチュラルに口説きそうになるリベラを 慌ててヒナが止めに入った。
「リベラ!もう、行かないと」
「あ、そうだった。じゃ、行こうか、ヒナ」
「はい、ではサクラさん、イシルさん、お祭りいらしてくださいね!」
リベラとヒナはお祭りの準備に行ってしまった。
サクラとイシルも 家に帰るために歩きだす。
「サクラさんは、まったく……」
サクラがイシルの隣に並んで歩きだしたら、イシルがチロリとサクラを見て ブツブツとボヤキ出した。
「何ですか?」
「愛想が良すぎますよ」
リベラさんにまでヤキモチですか?イシルさん。
「え?だって、単なる社交辞令じゃないですか」
惚れたって言ったわけじゃないんだし。
みんなが惚れちゃいそうなくらいカッコよかったし。
リズとスノーが見たら大騒ぎだっただろう。
「まあ、リベラは常識人ですからね、社交辞令なのもわかっているでしょう。ギルロスみたいに危なくはないでしょうが、勘違いする輩もいますからほどほどにしてくださいよ」
「大袈裟ですよ~単なるお世辞じゃないですか~」
お世辞ねぇ、と、イシルが考える。
「じゃあ、僕にも言ってください」
「何をですか」
「社交辞礼」
社交辞令ね。
それなら言えるさ!
「え~っと、、イシルさんは、カッコいいです」
「……月並みですね」
えっ!!
ちょっと、今、気持ちが顔に出ないよう結構精神的体力使ったんですけど!?
「えっと、優しくて、料理上手で、素敵です」
「それだけ?」
足りない?おかわり所望ですか、そうですか……
「それから、、面倒見が良くて、器用で、なんでも出来て、尊敬してます」
「で?」
で!?
「で、頼りがいがあって、物知りで、物腰柔らかで、すごいなぁ、と思います」
チロリとイシルがサクラを見る。
あれ?ご不満?
「強くて、好奇心があって、研究熱心で、奥ゆかしくて、えーと、美人で、うー、箸の持ち方がキレイで、えー、料理が美味しくて、あと、、あと、、笑顔がかわいくて……」
あわあわと答えながらイシルを見ると、サクラの隣でククッとイシルが可笑しそうに笑っていた。
(これはもしや、遊ばれてる?)
くそう!仕返ししてやる!
「それに、細かくて、意外と根に持ちますよねぇ~」
今まで良いことしか言わなかったサクラの急カーブの言葉にイシルがきょとんとした顔をした。
サクラがかまわず言葉を続ける。
「やられたらやり返さないと気がすまない、クールに見えて負けず嫌いです。あと、引いてるように見えて押しが強くてわがままです」
「サクラさん――」
「説教するし、お節介で、結構イタズラも好きで、子供みたいな事もするし、計算高くて、意地悪で、腹黒い面もあって、、うおっ?」
言葉の途中でサクラは横から延びてきたイシルの手に引寄せられ、抱きしめられた。
「良くわかってますね、僕の事」
お世辞ではなく、悪口を言ったのに、何故かイシルは嬉しそうだ。
「そんなに、見てくれてるんだ、僕の事……」
あわわわわわ///
ポジティブシンキング!!
「もっと聞きたい……サクラさんの言葉で」
スリッ、とサクラの頭に頬を寄せる。
「えっと///ホントに、今のはおいといて、、凄いと思ってますよ。ルヴァンたちのことや、シャナさんとミケちゃ……ミケランジェリの事、アールの事まで取り持って、気づかって――その、ありがとうございます」
「サクラさんがお礼を言うことじゃないですよ」
「いえ、嬉しかったんです。同じように気にしてくれてる人がいたことが。だがら、ありがとうございます」
やんわり、きゅうっ、とイシルがサクラを抱く手に力を入れた。
「それで、どう思った?」
どう?
「価値観が同じって、凄く、、いいなぁ、と」
「うん、それで?」
「それで……」
サクラが黙り込む。
「言って、今 思ってる事」
今、思ってることは――
「は、放してもらってもよろしいでしょうか……」
フフッ、とイシルが笑って答える。
「嫌です。それから?」
それから!?
「大変、恥ずかしいです」
「僕が納得するまで放しません」
うーわーん!!
納得する言葉って何よ!!
えっと、えっと、、
パニクるサクラに イシルがサクラの耳に口寄せして懇願する。
「ごちゃごちゃ考えないで、僕の言葉に思ってることを素直に返せばいいだけですよ?今、どうですか?」
素直に?どう?
「……苦しいです」
「物理的に苦しいわけじゃないでしょう?そんなに絞めてません」
「う///ドキドキ、しますから」
サクラの耳元に寄せられたイシルの口からクスリと小さな息がもれる。
「僕も、ドキドキします……それから?」
イシルの声が優しく次を求めてくる。
「胸が、、きゅっとなります」
「うん。僕も……それは、嫌?」
イシルの声が甘く促す。
「嫌じゃ、ないですけど、、」
「″けど″は いらない。嫌じゃないなら、何?」
イシルの声が誘うようにサクラの言葉をを求める。
「……離れたく、ない」
「うん、僕も。離れたくない」
今、ふわふわして、とっても幸せな気分。
「それで?サクラは僕の事、どう思う?」
「私、イシルさんの事……す――」
″ガタガタンッ″
あれ?
なんか、術中に はまってる??
「うおっ!」
サクラとイシルの横を荷馬車が大きな音を出し通りすぎ、イシルの声に誘導されていたサクラが我を取り戻した。
「チッ」
″チッ″て、イシルさん、今舌打ちしましたね?
「リベラに言ったみたいにサラッと言ってくださいよ、″す″の次は何ですか?」
「うぐ///」
空気をぶち壊されたイシルがサクラに詰め寄る。
「……また言いますか?″スキヤキが食べたい″って」
うわ!!やっぱりそれを言わせたいんだ!
「イシルさん、底意地が悪いですよ」
「サクラさんが素直じゃないからです」
「じゃあ言いますよ!″す″の次ですね!私の思ってる事、それは――」
それは――
「すきうどんが食べたいです!!」
「……」
「……」
「サクラさん」
「はい」
「うどんは糖質多いですよ」
「……はい」
はぁ、っとイシルがため息をつき、再び歩きだした。
サクラも横に並びついて歩く。
「サクラさんは、まったく……」
サクラがイシルの隣に並んで歩きだしたら、イシルがチロリとサクラを見て 再びブツブツとボヤキ出す。
またこのパターンでごめんなさい。
心の準備が出来てません。
「今日はすきうどんじゃなく、昨日仕込んだ豚の角煮ですから」
イシルの言葉にサクラの顔がパーッと明るくなった。
「わあ!角煮、大好きです!」
「チッ、、」
あれ?イシルさん今舌打ちしましたか?二度目ですよ?
「角煮には言えるんですね……」
いやいや、食べ物と一緒にされたいですか?イシルさん。
「お世辞も″料理″が二回出てきたし、僕はいつになったら″料理″に勝てるんだか」
やっぱり細かくて、意外と根に持つタイプですね、イシルさん。
◇◆◇◆◇
サクラとイシルはちっちゃな攻防戦(←イチャイチャ)を繰りかえしながら、森のお家に帰るために 迦寓屋へと歩いていた。
そろそろ迦寓屋に到着するかというところで、イシルが思い出したようにサクラに聞いた。
「ところで、覗いたんですか?」
「えっ?」
「古竜が言っていましたよね?」
ラプラスが言っていたのは、サクラがラプラスに頼んでイシルの寝室を覗き、寝顔を拝見した事だ。
一難去ってまた一難!!
もう忘れてると思ってたよ~
「いや、あの、、」
ここは素直に謝るべきか!?
「何を覗いたんですか?」
は?
「話の途中で入ってしまったので、ノリで便乗しましたが、サクラさんは何を覗いたんですか?」
うわあ!ラッキー、バレてない!
「あー、、アスがヘソクリ隠してるところを……」
「隠し財産ですか。僕はてっきり古竜の風呂を覗き返したのかと思いましたよ」
「そんなことしませんよ///」
「わかってます、冗談です」
「……」
今日は変なノリですね、イシルさん。
(そうだ、ラプラスは私が風呂場でババンバ歌ってるの知ってたんだった)
サクラの隣を歩いていたイシルが立ち止まり、何かを考えている。
「どうかしましたか?イシルさん」
「サクラさんの風呂を覗いた分のおかえしを忘れました。戻って古竜に もう一度頭突きを――」
「うわあ、イシルさん、いいです、帰りましょう!帰ってき角煮に火入れしましょう!」
やられたらやり返すもほどほどにしてくださいよ!イシルさーん!!
ぐたぐだですみません(^_^;)
五日ぶりの更新で 文章のカンがおかしい……
がんばります。




