376. 日曜教室 2 (ミケランジェリvsシムズ)
トムにザリガニ釣りのコツを教えてもらってからは ミケランジェリも徐々に釣れるようになり、最終的には面白いほどよく釣れた。
釣りに飽きた子供達が遊び始める。
釣ったザリガニを使ってレースだ。
ザリガニを横一列に並べて置き、どのザリガニが一番早くゴールするか競争させるのである。
「行け!ツインアーム・ストロンガー!」
「負けるな!クリムゾン・ガーディアン!」
子供達はそれぞれ自分のザリガニにカッコイイ名前をつけ、競わせる。
誰のザリガニが一番にゴールするか。
ミケランジェリも青いザリガニに名前をつけ、レースに参加した。
「ふふふ、勝つのは私だ!!行くのだ!ブルー・インフェルノ、愚者共に地獄を見せてやれ!」
ミケランジェリの青いザリガニ″ブルー・インフェルノ″は、地に足をおろすとと大きなはさみを高く振り上げ、上体を起こし、ファイティング・ポーズをとった。
「わあ!」
「かっこいい!」
「ふはははは!強・者・降・臨!!」
そして、ブルー・インフェルノは、その雄々しい姿をさらしたまま――
″ズザッ″
後ろに下がった。
「「へ?」」
「ブルー・インフェルノ?」
″サササササ……″
ブルー・インフェルノは威嚇するようなポーズのまま、ちょこちょこと足を動かし、あっという間に、遠くへ離れる。
なんて前向きな逃げ方!!!
「あはは!面白いね!ミケのブルー・インフェルノ」
「威張った感じがミケにそっくり~」
″今日はこの辺で勘弁しといてやろう″
そう聞こえてきそうだよ。
「待て!ブルー・インフェルノ!くそっ!」
ミケランジェリは 網を持ち、ブルー・インフェルノを急いで捕獲に走った。
なんとか川に入る前にブルー・インフェルノを掴まえると、水際に立っていたシムズがミケに話しかけてきた。
「ねぇ、ミケ、これできる?」
「ん?」
少しぽやっとした感じの、笛が好きな少年シムズ。
シムズは 石を拾うと 水際に立ち、アンダースローで川に向かって 横から低く投げた。
″ピッ、、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッチャポン″
シムズの投げた石は水面を跳ね、ちゃぽんと落ちる。
水切り遊びだ。
「ふむ」
流体表面と固体の衝突。
浮く筈のない石が 条件をみたすことによって生まれる出来事。
古くから研究され、今だ興味の尽きない現象だ。
衝突時の流体の表面の大変形を扱うことは難しく、水面へ投げ入れた小石が小さな波紋を作り反発する条件について単純な現象論も見いだされていない。
(石選びが決め手となるな)
ミケランジェリは手頃な石を探す。
(平たい石がいいだろう。いや、水にあたる面が少し反っているほうがいいのか?レンズのように……)
「ミケ、まだ~?」
「少し待て、えーと、、」
(摩擦の少ない、つるりとすべやかなものがいい。川原には流されて角が取れた石が多いからな、、大きさは、あまり小さすぎても良くない。軽すぎると空気の抵抗で軌道がぶれやすくなり安定しないだろう。しかし重すぎると、跳ねるために十分なスピードと回転を与えられない)
「ねー、ミーケー」
「急かすな、シムズ」
(考えても仕方ないのか)
ミケランジェリは 直感で石を何個か手にしてみる。
すると、三個目に、手にするりと馴染むものがあった。
(これだ!)
投げるのはミケランジェリなのだから、自分が持ちやすく、投げやすいものを拾った。
ミケランジェリは助走をつけ、水際までステップを踏むと、
上体を低めに、アンダースローで、できるだけ水面ギリギリで、石に横回転をかけて思いっきり腕を振った。
「ふんっ!」
″ブンッ、、ピッ、ピッ、ピッ、チャポン″
「……出来た」
「始めてにしては上手いじゃん、ミケ」
ドワーフの中に一人紛れている人間の少年、スカしていると思っていたユーリが褒めてくれた。
「ふはははは、まだ、こんなもんじゃ終わらんぞ!勝負だ!シムズ!」
ミケランジェリはコツをつかみ、五段まで自身の記録を伸ばした。
しかし、子供とはいえ、怪力ドワーフの投げる速度に敵う筈もなく……
トムに続き シムズにも勝つことは出来なかった。
しばらく水切り遊びに熱中していたが、ミケランジェリはふと 子供の数が少ない事に気づく。
(いかん、引率なのに本分を忘れていた)
太陽が真上にある。
ということは、そろそろ昼だし、村に戻らなくてはならない。
「ちょっと待ってろ」
ミケランジェリは子供達を集めると、待つように指示をし、いない子供を探しに行く。
いないのは トムとザムザ。
「多分 三本杉の方だと思うよ」
シムズがそう教えてくれたので、ミケランジェリは 三本杉の方へ トムとザムザを探しに出かけた。
(まったく、世話のかかる……)




