359. 豊穣祭 6 (プンパニッケル/二日目) ◎★
挿絵、料理写真挿入しました(3/24)
豊穣祭は三日間にわたって行われる。
″一日目は村人全員で水と土に感謝をし、清め、洗い流し、土の豊かさを讃えます″
イシルの言葉通り、昨日は村人全員で泥んこ水遊びをして、笑い合い、豊穣神の『水』によって清め洗い流された『土』で初物の作物を収穫した。
″二日目は光と風に感謝をし、崇め、子供達が着飾って『宝車』を引き、ねり歩く″
御輿?いや、パレード?
「儀式は昼過ぎからなので、お昼前に行って屋台でご飯を食べましょうか」
「……じゃあ朝食は控え目にしようかな」
サクラはテーブルを見る。
テーブルの上にはオープンサンドが乗っていた。
オープンサンドのパンはドイツの黒パン プンパニッケル。
褐色の固いライ麦パンだ。
ライ麦は精製がされていないから、ビタミン、鉄分、それからダントツに高いのが食物繊維で、普通の食パンの4.4倍と言われ、ほぼ一食分の玄米ご飯に匹敵する量がある。
パンプニッケルは普通のライ麦パンと違い、麦の粒を固めたような感じで、ほろほろと崩れてしまいそうな感じ。
粘度がなく、重いです。
全部が粉ではないので、デンプンの含有量が低く、糖質ダイエットに向いてるんですね~
味は、好き嫌いが別れます。
少し酸味があり、膨らんでいる感じがまったくない。
独特な香りもします。
しっとりしていて、ぎゅっとしてるパン。
穀物を固めてあるから、焼くと香ばしい香りが立って、ハードパンが好きならはまるかもしれません。
食べ方はうすくスライスして。
12枚切りの食パンくらいの薄さですが、サンドイッチには向かないですよ?
なんたって、重い。
焼いて、上にスプレッドして食べるのがよいかと。
クリームチーズとの相性は抜群です。
「いただきます」
カリカリに焼かれたプンパニッケルの上には 粗挽き胡椒の効いたクリームチーズが塗ってあり、ピンクの生ハムがキラキラ輝いている。
″カリッ″
香ばしい穀物の香りと、がりっと硬いパンはクセがあるけど、噛むほどに味が広がる。
そこに滑らかなクリームチーズが、ホロホロと崩れるパンを絡めていく。
「んふっ///」
生ハムのしょっぱさと ベールのようにうすく柔らかな舌触りが、とっても贅沢~
″あぐっ″
クラッカーでも、ラスクでも、シリアルでもないプンパニッケル。
噛みごたえがクセになる!うまいな。
皿には半分に切られたパンプニッケルのオープンサンドが三枚のっている。
三枚は多いから、どっちにしようか……
食欲そそる黄色いタマゴサラダがこんもりのったほうか……
ツヤツヤトマトとチェダーチーズのシンプルなほうか……
(いや、タマゴでしょ)
サクラはタマゴサラダのオープンサンドにかじりつく。
″あぐっ、もぐっ″
ふんわり、してるのに、黄身はねっとり、白身ぷるぷるタマゴサラダ!
パンプニッケルの酸味を包み込んで、タマゴの甘みがくわわり、ザクザク、ホロホロ絡んで美味しい!
「ん~///」
何この朝食のクオリティ、見た目だけでも誘惑半端ない!
イシルさん、なんか、腕あがってません!?
あんた何になる気ですか!!
こうなると トマトのやつも食べたくなる……
しかし、2つ食べただけでもお腹は満たされている。
これで1枚分だもの、3つ目いったら屋台が遠退く。
今日も新じゃが料理多いだろうし、そうなると糖質も多いだろう……
「なんだ、サクラ食わねーのか?」
手の止まったサクラをみて、ランが「もーらいっ」と サクラの皿からトマトのオープンサンドをさらっていってしまった。
サヨナラ、ツヤツヤトマトさん。
トマトのみずみずしい酸味とプンパニッケルの発酵の酸味、そこに酷のあるチーズの酸味。
トリプル酸味のコラボレーション、その世界を感じてみたかった……
(半分ずつ食べればよかった(涙))
残念!!!
◇◆◇◆◇
今日は外からの客も多いからと ランは警備隊の仕事へと行ってしまった。
サクラとイシルは 掃除や洗濯、家の用事を済ませると、屋台巡りをするために、魔方陣を使い 昼前にドワーフの村の組合会館へとやってきた。
地下の階段を上がり、秘密の扉を開けると、何やらもめてる声が聞こえてきた。
「だから、そんなジャラジャラしたのつけたくねーって!」
ユーリの声だ。
「しょーがねーじゃん、光の使いの役なんだから」
それに答えるのはトムだ。
サクラとイシルは 声のする組合会館の大テーブルが置かれている部屋を覗いた。
部屋に入ると、宝船をひく子供たちが集まり、支度をしている。
「なんでオレが」
「楽器ができないから」
「うっ……」
「力が弱くて船ひけねーから」
「ぐっ……」
どうやらユーリが 飾りをつけるのを嫌がっているようだ。
(かっ、可愛い!!)
子供達は皆、民族衣裳のような服を着ていた。
オーガの村は着物みたいなのだったけど、ドワーフの民族衣裳は、現世で言えばアイヌ民族の衣装がちかいかな。
トムは風を象徴する緑の服に 渦巻き模様、首からは風に揺れる葉を模した首飾りをかけている。
ユーリの衣装はオレンジを基調とした華やかなもので、太陽のシンボルをかかげた装飾をつけることになっている。
「かわ、、カッコいいね!ユーリ」
サクラはユーリに声をかける。
あぶない、可愛いとか言っちゃうとこだったよ、、
『可愛い』とか言ったら余計に拗ねるだろう。
「おっ、サクラ!……とイシルか」
トムとユーリはサクラの後ろにイシルをみつけて顔をしかめた。
「オレ、みどりの方がよかった」
オレンジなんて、女みたい、と。
赤い色は女の子の色~って固定観念あるあるですね。
そんなこと言ったら真っ赤っかなギルロスは超女子になってしまうだろ!!
って、いうわけにもいかないか。
「光の使者って、明るくてかっこいいじゃない。ユーリは明るい色も似合うね」
「そうか?」
「そうだよ、ちゃんと着て歩くの見たいなぁ~」
「……サクラがそう言うなら」
ユーリはトムから首飾りを受け取り首からかけた。
(すまん、ユーリ)
嘘じゃないけど、カッコいいというよりはやっぱり可愛らしい。
ユーリはきれいな顔をしている。
大きくなったらさぞかし美人になるであろうな……
パンプニッケルは成◯石井やC◯LDINAなんかの輸入食品店に売ってます。
スライスしてあり(はがすの大変)
チアシード入り、とか、プロテイン入り、とかあります。
食べたら残りは一枚ずつラップして冷凍保管してますよ。
パンプニッケルは作るのに時間を必要とするので、パン屋さんには置いていないとこが多いです。




