358. 豊穣祭 5 (ジャガイモだんご汁) ☆
Ichen様よりジャガイモ団子汁FPぶんどり……いただきました!
同じメニューを食べたかったなんて♪
これ幸いとばかりにくださいとお願いしたら快くくださいました!
ありがとうございます( *´艸`)
後書きに乗せさせていただきました。
おいしそうですので、是非ご覧下さい!!(3/24)
イシルのところに行くと、既に大量の野菜の下ごしらえを終えたイシルが鳥をさばいているところだった。
「仕事が早いですねイシルさん、私何しましょうか」
やることなければサンミのところにでも手伝いに行こうかとサクラが尋ねる。
「ジャガイモの団子を作ってもらえますか?」
ジャガイモ団子。
(片栗粉と茹でたジャガイモをつぶして混ぜて作るのは知ってるけど……)
材料を見渡すと、なるほど、切った野菜と一緒に 皮をむいてすりおろしたジャガイモが置いてあった。
すったジャガイモの汁が別にして置いてあり、下に澱粉が沈殿している。
『片栗粉』だ。
「混ぜればいいですか?」
「お願いします」
サクラは 澱粉の入ったボウルの上澄みの水を捨て、中に残った天然の片栗粉だけにする。
そこに、この澱粉を出したであろう、すりおろして水切りしてあったジャガイモを混ぜ合わせた。
″こねこね″
少しの塩を入れて。
″こねこね″
その間にイシルは大鍋に水、だし汁、鶏肉、大根、人参、ごぼう、しいたけ、を入れ、煮立たせ、鍋の準備を終えた。
「量が多いですからね、代わります」
サクラにかわり、イシルがジャガイモを良く混ぜ合わせる。
耳たぶのやわやかさくらいがベスト。
柔らかすぎたら片栗粉を足した方がいいけど、固くなりすぎないように注意してくださいな。
良く混ぜたら 一口大にちぎって丸める。
「真ん中を凹ませると火が通りやすいです」
平べったくして、ぽこんと真ん中を凹ませた。
ハンバーグとかも、そうだよね~
「私の田舎では 箸でつまみやすいようににぎるんですよ~」
「そんなやり方もあるんですね」
握って指の形に凸凹に作るのだが、私的には丸いつるんとした団子の方が舌触りが良くて好きだけど。
「鍋が煮えてきましたね」
イシルが醤油で鍋の味をととのえる。
「味をみてください」
サクラは呼ばれて イシルの差し出すおたまから味見をした。
″ごくん″
「ん~///いい味です」
「良かった」
サクラのうまうま顔にイシルが嬉しそうに頬を染めて笑顔になる。
イシルの微笑み返しに サクラはハッとする。
背中に突き刺さる、なまあたたかい空気……
これは……
(振り向けない)
絶対、サンミが ニヤニヤしているに違いないから。
「じゃあ、団子を入れていきましょうか」
「……はい」
二人でつくったジャガイモだんごを 野菜が煮えた鍋に加える。
″フツフツフツフツ……″
しばらくすると、だんごの表面がツルリとなめらかになり、浮き上がってきた。
火が通ってきた証拠だ。
イシルが出来立てをお碗に装って サクラに渡してくれた。
「食べていいんですか?」
「お昼、まだですよね。食べておかないと、この後食べそびれますよ。腹を空かせた輩が押し寄せてきますからね」
サクラにお碗を渡すと イシルは他の奥様方にも、お疲れ様です、食べておいてください、と配ってまわる。
気が利きすぎですよ、イシルさん!
「いただきます」
まずは汁から。
″ズズッ……″
「ふはぁ~」
なんだろう、この懐かしい感じ。
出汁が効いているのはわかるが、この素朴さは、、
ゴボウの香りか~
ほっこりと安心する田舎くささ!
勿論いい意味で。
細く長く幸せに、ゴボウは縁起のいい食べ物でもある。
「はぐっ、もぐっ」
ゴボウも早採り若々しい。
柔らかいのに独特の歯応えがあって、香りが強い。
鶏肉との相性もいいよね!
一緒に頬張ればお互いが味を尊重しあい、鳥の旨みとゴボウのエキスで口の中が幸せいっぱい!
「ん~///」
全く違う食感なのに、邪魔しない良きパートナー。
″むちっ、こりっ、じゅわ~″
鶏ごぼう、何気ないのに攻撃力高し!!
ああ、君もいましたね、椎茸さん。
今日は脇役だけれども、いい仕事してますね~
あなたはまた秋に会いましょう。
大根、人参、ふはぁ///
甘く、瑞々しく、生でもイケそう!
熱が加わり、ほっくり、美味しい。
大きめぶつ切り長ネギはトロリと甘く、体をぽかぽかあたためる。
和風感アップで心もぽかぽか。
でも、やっぱり主役はジャガイモ団子。
「はむっ」
一口でいきたいところだが、ゆっくり食べるために半分に噛みちぎる。
″むちっ″
「んっ///」
″つるん″
「んんっ///」
なんという弾力!
なんとすべやかな舌触り!!
″もっち。もっち。″
ジャガイモだけとは思えないもちもち感、甘さと旨さ。
やべぇ、やべぇすわ!!
無限にイケそう!!!
ずっともちもちつるつるしていたい!
また、このあっさりとした汁がイモ団子に良く合うわ~
食べごたえのあるだんごと、たっぷりの野菜で、腹持ち抜群ですね!
「サクラ、こっちおいで」
ジャガイモ団子汁に酔いしれるサクラをサンミが呼ぶ。
「野菜も良いけど、肉も食っときな」
サンミの前には肉と野菜を交互に刺した串焼き肉のBBQ
「ふおぉ!!ごっつあんです!!」
やっぱり肉、最上!!
肉があってこそ、野菜の良さが引き立つもの!
美味しそうに肉にかぶりつくサクラをイシルは、奥様方とジャガイモ団子汁をすすりながら眺める。
(やれやれ、本人は素直じゃないのに、胃袋だけは素直なんだから……)
はあ、と ため息ひとつ。
(もっと腕を研かなくては……)
結局、焼いただけの肉に負けちゃうイシルであった。
◇◆◇◆◇
飲めや歌えや大宴会。
豊穣祭一日目は大盛況のもとに、正しくお祭り騒ぎです。
ランは『福男』として引っ張りだこで酒を注がれまくった。
「大変な人気ですね」
「イシル」
少し酔いざましを と、宴から離れて風に当たっていると イシルがやってきて水を渡してきた。
「いらねーよ」
「飲むと明日の朝が少し楽になりますよ『龍神の水』ですから」
リンスウィールの水と言われたら飲むしかない。
ランは水を受け取り 口に含んだ。
冷たくて すっきり。水の甘みを感じる。
「サクラは?」
「アイリーンとシャナに取られました」
「うは、ダッセー」
「……良いんですよ、楽しそうなんで」
そう言ってイシルはゆるりとランの隣に座った。
宴会の喧騒を遠目に見ながら、ランはイシルに話しかける。
「お前、知ってたんだろ『福男』の事」
「ええ」
あっさりイシルが白状した。
結局イシルの手のひらの上かよ、と ランが面白くなさそうな顔をする。
「福男は村で一番愛されているものが選ばれます。同時に卵は愛されなければ孵らないんです」
「だから村じゅうのやつらが愛情こめて撫でたんだろ」
「そうですが、やはり君のおかげですよ。何が産まれるかは育てる者によって違うので」
「……」
「まさか龍神とはね」
イシルがランを見て嬉しそうに笑う。
「誇らしいです」
「っ///うるせー、食うはずだったのに逃げられて残念だよっ」
「そうですか」
「///」
ランの悪態も照れ隠しだとバレてて 余計に恥ずかしくなった。
(調子狂うな)
わはは、と、村人の楽しそうな笑い声が響いてくる。
それがなんだか、逆に静けさを引き立て、少し寂しくなる。
「……あいつ、行っちまったんだな」
ぽつりとそんな事が口をついて出た。
「いますよ、近くに」
「空の上に、か?」
リンスウィールはドワーフの村の豊穣神だから。
一緒にいることなんてできない。
″シャキッ″
「うおっ!?」
いきなりイシルがアサシンナイフを突き立てて、ランは慌ててそれを避けた。
「何すんだイシル!今の、、確実に殺る気だっただろ!?」
「ええ」
イシルがアサシンナイフをしまいながら笑顔で答える。
「以前の君なら今ので殺られていたでしょうが、今は水龍の加護がついています」
「え?」
水龍神の 加護……
(オレの力が増している?)
「気づきませんでしたか?」
内側に意識を向けると ほんのり リンスウィールの気配を感じた。
「だからって、アブねー確認の仕方すんなよ!」
「あはは、ただ言ったって信じないでしょう?」
イシルが可笑しそうに笑った。
声を出して笑うイシルは珍しい。
すこぶる機嫌がいいようだ。
「おまえ、酔ってんのか?」
いつもよりもくだけた態度のイシルに、ランが呆れた調子で聞き返す。
「そうですね、酔っているのかもしれません」
イシルは訝しげにイシルを見るランの頭をふわりと撫でた。
「酔ってます」
「……」
そのまま、手をすべらせてランをつつみ込む。
「ハッピーファティリティ、ラン」
イシルのハグは、ふんわり、優しくて、あったかい。
「……酔っぱらいめ」
ランも控え目にイシルにハグを返す。
自分も酔っているのかもしれない。
「ハッピーファティリティ、イシル」
祭の一日目が終わる――




