357. 豊穣祭 4 (リンスウィール) ★
挿絵挿入しました(3/22)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用ください。
本日いれました挿絵は昨日前話に入れたものです。
こちらの方が相応しいと思い、移動しましたm(_ _)m
″ピシッ、パリッ″
小さな亀裂の音に テンコと争っていたランは動きを止める。
「ちょ、たんま、お前、、」
「ふはは、怖じ気づいたか、小僧!!」
嬉々として色粉だらけで畑を駆け回っていた如鬼のテンコが ランがねをあげたのかと 得意気に笑う。
「いや、うるさい、お前″待て″」
「ゴーン!?」
悲しいかな犬科の性かな、テンコはランの″待て″の言葉に待ってしまう。
ランは人々の歓喜の笑みの高まる中、ジャガイモ畑の真ん中で、背中から卵を下ろすと その胸に抱えた。
″ピキッ、パキパキ……″
産まれる……
青い卵は ふるふるとふるえながら、その殻を内側から割り、生まれでようとしている。
が、ふいに、戸惑うように 身を潜めた。
「怖がらなくていい」
ランは卵に笑みを向ける。
大丈夫、待ってるよ、と。
「出ておいで、リンスウィール」
ランの言葉に安心したかのように 卵がまばゆく光り――
その光は 空へ向かって 一直線に舞い上がった。
″キュイ――――ン……″
リンスウィールは シャララン、、シャララン、、と、美しい鈴の音のような羽ばたきと共に その姿を現した。
″キュイ――――ン……″
水のように蒼く清らかな肢体は 透明な輝きをもつ鱗で被われ、しなやかに、悠然と 空を泳ぐ。
「龍……」
生まれでたのは、美しい龍だった。
魚のような鰭をなびかせ泳ぐ 優しい顔をした蒼い龍。
″キュイ――――ン……″
リンスウィールの鳴き声が雨を呼び、晴れ渡る空から雨が降る。
さわさわと 優しく降り注ぐ温かな恵みの雨に 畑にいた人々が 空を見上げた。
「水龍じゃ!」
「龍神様だ!!」
「なんとも美しい!」
「今年は命の水の年だわ!」
村人が歓喜の声をあげる。
降り注ぐ雨を全身に浴び、ハグをし、祝いの言葉をかけあっている。
″おめでとう豊穣祭″、″大地に感謝を″、″水の力に敬意を″
「でかしたぞ!福男!」
大柄なドワーフがランにかけより、ばんばんと背中をたたき、ハグをしてきた。
「うわっ!」
それを合図にしたように、そこらじゅうにいた村人がランに駆け寄ってハグをする。
「大したものねぇ、ランちゃん、おめでとう!」
「いや~、ドワーフ以外から福男が出たときはヒヤヒヤしたがなぁ、ありがとう、君のおかげだ」
「おめでとう!ラン!」
「こんな立派な豊穣神は見たことないぞ!」
「ありがとう、福男!!」
「今年は豊作間違いなしじゃ!わっはっは……」
サクラとイシルは さわさわと雨に洗われながら 揉みくちゃにハグされるランを見守っていた。
不思議なことに、豊穣神リンスウィールの降らせる雨が 体についた色をきれいに流し落とし、その色は土に染み込み、消えていった。
「福男って何ですか?」
「毎年豊穣祭の前になると 村に卵を拾う者がでるんですよ。それが福男です」
「今年はランだったんですね」
「ええ、言うと反発しそうでしたから 隠すのに気を遣いましたよ」
「あまのじゃくですからね、ランは」
卵の色は毎年違うし、何が産まれるかはその人によってかわるという。
「まさか龍が産まれるとは……」
イシルさん、なんだか誇らしげですね!
まるで授業参観に来て、息子の発表を見てるお父さんみたいですよ?
そして、雨にうたれるお姿も素敵です。
みずもしたたるなんとやら、、ですね!
「『卵』が『福男』に選ぶ者は 村で一番愛に溢れ、愛されている者だと言われているんですよ」
イシルが嬉しそうに目を細めてランを見つめる。
「そっか……」
サクラもランを見る。
警備隊で頑張ってたもんね、ラン。
「そっか……」
サクラもイシルと同じように、なんだかとっても暖かい気持ちになって 人だかりの中心にいるランを見守った。
◇◆◇◆◇
「それ!種芋を撒け!」
七色の色粉の染み込んだ畑に ジャガイモの種芋を一斉に投げ込む。
すると、色玉の薬草効果と リンスウィールの雨を含んだ畑から すぐに芽がでて、葉が茂り、一面にジャガイモが実った。
「収穫じゃ!新じゃがの収穫じゃ!」
その場にいる全員でジャガイモ掘りだ。
屈強な鍛冶職人たちも、小さな子供たちも、今日は全員で収穫に取り組む。
サクラも、イシルも、ランもシャナもギルロスもテンコでさえも、芋掘り参加。
豊作!大量!新じゃがおいしそう!!
ジャガイモだけじゃなく、麦畑でも、葡萄園でも、大根、キャベツ、茄子、ピーマン、、ドワーフ村の全ての畑で同じことが行われているらしい。
豊穣祭一日目、正に体力勝負なり!!
「僕はそろそろおふるまいの手伝いに行きますが、サクラさんも行きますか?」
「料理ですか?」
「ええ」
「多分、ここにいるよりもやれることが多いと思うので、行きます」
「そうですね。ランは……」
イシルが立ち上がり畑を見回すと、ランはテンコとどちらがより多くジャガイモを採れるか競い合っていた。
「ふはははは!穴掘りは得意じゃ!ほれ、ほれ!」
「アホか、ひっ張ればジャガイモ抜けんだろ!てか、泥をこっちにかけんなよ!」
……仲良し?
「楽しそうなのでほっときましょう」
「料理ならシャナも誘いますか?」
「そうですね、救護ももういらないでしょうからね」
サクラとイシルはシャナを誘い、おふるまいの手伝いをすべく、連れだって村の門前広場へと向かった。
シャナと一緒にメイの治療院で風呂に入り、身綺麗にすると、門前広場へ。
今日収穫されたものは『初物』として、全て村に納められる。
組合会館に全て集められるのだ。
そして、始めに村人全員で食べるために炊き出しがある。
門前広場に大鍋をかまえ、おふるまいだ。
村人も旅人も隔てなく 料理が振る舞われる。
『シャモア鍋』の時みたいに。
広場ではサンミが指揮を取って料理を始めていた。
アイリーンもいる。
「ハッピーファティリティ!サクラ、シャナ」
「ハッピーファティリティ!アイリーン」
サクラはアイリーンにハグをして豊穣祭を祝うと、組合会館で身綺麗にして先に来ていたイシルの所へ手伝いに行った。




