351. 豊穣祭へのプレリュード 5 (エピローグ) ★
今日は本文が短目ですので リアルタイムで挿絵を入れました。
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用下さいまm(_ _)m
(もがっ!?)
バルコニーでベロニカと話をしていたサクラは 突然後ろから口を押さえられ、後ろに引っ張られた。
(落ちる!!)
バルコニーの手すりが腰にあたり、ぐらりと体が傾いて外に放り出される。
(うひゃあ!!)
もがくサクラを、何者かは背後から抱え込むと、そのまま階下の茂みにサクラを引きずり込み、サクラと共に身を潜めた。
(しーっ)
(!?)
この声は……
(何やってんすかイシルさん!?)
イシルだった。
サクラは サクラの口を塞いでいるイシルの手を引っ張って剥がすと、サクラを後ろから抱き抱えているイシルを自分の額越しに見上げながら 小声で突っ込んだ。
(何って、貴女を拐いに来たんです)
(はぁ!?)
イシルは悪びれもせず、さも正論ですといったふうに続ける。
(だって、嫌じゃないですか、ミケランジェリのパートナーなんて)
(いや、別にミケちゃんは……)
(嫌ですよ、僕は)
駄々っ子!?
(だから、邪魔しにきました)
いや、そんないい笑顔で断言しないでくださいよ、一応お仕事ですよ?お給料もらってますんで。
(それにしても、帰るならアスに言って行かないと……)
(大丈夫です。ここはアスの領域ですから、僕が来たことも、サクラさんの事も 全てお見通しです)
(……そうですか)
何を言っても無駄のようだ。
イシルがふわりと 内巻きに整えられたサクラの髪に触れる。
(髪、巻いてもらったんですね)
手に一房とり サクラの髪に口づけた。
うっわぁ///なんてことするんですかイシルさん!
キザですね!サマになってますが。
(可愛い)
はにかむイシルさんのほうが可愛いデス!
(ありがとうございます///)
なんか、あれですね、こんな茂みに潜んでいたら なんだかとってもイケナイことしてる気分ですよ?
(今日の装いも とても可愛らしい)
満足げにイシルが微笑む。
(そうですか?地味ですよ?)
かっちり、きっちり、クラシカルなドレス。
なんせ、壁の柄ですから。
(僕は、今日みたいな服装のほうが……)
イシルが言葉をためて、続きを耳元でささやく。
(好きです)
(……ありがとうございます///)
変なとこで言葉を切らないでくださいよ、ドキドキします。
(折角かわいい格好しているんだから 庭園を散歩してから帰りましょうか)
(え?じゃあ何で今まで隠れてたんですか?)
(ん――……)
(?)
(サクラさんとくっついていたかったからですかね)
はいぃ!?
(密会してるみたいで楽しいじゃないですか)
そう言ってクスクスと笑いながら、サクラを茂みから連れ出した。
春風に揺れる大輪の薔薇園の中を 手を繋ぎ、二人きりの時間を過ごした後、勿体ないからというよく分からない理由で 魔方陣ではなく、サクラはイシルに抱えられ 家路についた。
◇◆◇◆◇
出会うはずなんてなかった。
彼と私では 住んでいる世界が違うのだから。
けれど、出会ってしまった。
それは 単なる神の気まぐれだったのかもしれない。
出会いは突然で、彼は困っている私を捨て置けずに助けてくれた。
彼と会うたびに惹かれ、その声に酔い、一挙手一投足に心を揺さぶられる。
彼の何気ない仕草や言葉に ときめきと期待を持ってしまう。
私は 咲き誇る花の園を彼の案内で巡っていく。
花の香りに包まれた、私たちだけの秘密の時間。
このままずっと 彼のそばにいたい。
『どうかしましたか?』
黙りこんだ私を彼が覗き込み 首をかしげる。
『いいえ///』
だけど、それはいけない事。
私は知っている。
この恋に終わりが来る事を。
彼と私の世界が 二人を引き裂く事を。
『まだ少し肌寒いですかね』
そう言って彼は私に上着をかけてくれる。
花の香りよりも 彼の匂いと上着に残った彼の温もりに酔ってしまいそうだ。
私は祈るだけ。
この時が少しでも長く続くようにと。
神様、お願いです
彼のそばにいることをお許しください
その時が来るまでは――
【ソフィア・グロブナー著『シークレット・ガーデン』】より




