341. ランと山歩き 2 (キムパプ) ◎◎
料理写真挿入しました(3/5)
料理写真二枚目あとがきに挿入(2021/8/4)
サクラはイシルがメイの薬草園へと出かけた後、ランと森にウォーキングへ出かけるための準備をする。
「サクラー、何してんだよ!早く行こーぜ」
「ちょっとまってよ」
サクラはキッチンで煎り卵をつくっていた。
「なにやってんだ?」
「いや、どうせならお弁当持っていこうかと……」
「そんなん作ってたら遅くなるだろ」
「アリものですぐ作るから、、」
サクラは炊いてある麦飯を取り出す。
「なんだ?握り飯か?」
「いんや、のり巻き」
麦はパラパラしていて粘りけがない。
もちあわやもちきびなど、他のもっちり穀物と一緒に炊いてあっても、おにぎりにするのはキビシイ。
そこで登場するのが『海苔』である。
「おにぎりだとご飯が主役になっちゃうから」
サクラが作ろうとしているのは『キムパプ』
韓国風のり巻きである。
キム→海苔
パプ→ごはん
で、短縮すると『キンパ』と聞こえる。
キムパプはお酢ではなく、胡麻油で味付けしたご飯と生魚以外の具材で作ります。
スタンダードなキンパの具材は甘辛ごぼう、炒め人参、卵焼き・ほうれん草ナムル、たくあんですが、お好きなものをいれてください。
イメージとしては棒状の……混ぜる前のビビンバみたいな味だ。
「昨日の夜タッカルビだったから韓国料理たべたくなっちゃったんだよね」
サクラはラップの上に大判の海苔をおき、雑穀ご飯をその上に薄ーくひいた。
ほんとに、薄ーく。
量はコンビニおにぎり一個分くらいかな。
海苔は韓国海苔ではなく、普通の海苔を使います。
「飯に味ついてんの?」
てらてらと光るごはんを見てランがサクラに質問する。
「胡麻油と塩ね。さて、入れるものは……」
サクラは保冷庫から常備おかずを見繕って取り出した。
入れられそうなのは『ほうれん草のナムル』『人参のキンピラ』『ひき肉とごぼう炒め』『菜の花のおひたし』『ゼンマイとさつま揚げの煮物』このあたりだろう。
すぐ食べる訳じゃないからあまり水分が多いものは入れられない。
お昼に食べるなら海苔がべっちゃりなっちゃうからね。
サクラは海苔の手前半分にひいたごはん上に具材を並べていく。
キンパの魅力は何といっても中身の多さ。
ごはんよりおかずの量が多いほどだ。
ごはんちょっぴり、おかずたんまりで糖質オフ!!
ご飯を海苔の手前側半分に敷き、奥側ののり代を多くとる。手前にのり代がないほうが、巻き終わりをくっつけやすくなる。
そして、今日の場合、のり巻きのようにカットしてもっていくわけじゃないし、自分がかぶりつくのだから、切った時の見た目も気にしない。
見映えしなくてもよし!
だから『卵焼き』ではなく『煎り卵』で十分なのだ。
「私は、、菜の花かな」
ほうれん草か菜の花か迷い、菜の花を選ぶ。
ごはんの上に横に一列に煎り卵をならべ、ラインを作る。
そのとなりに横一列に菜の花を並べていく。
その隣に人参のキンピラのライン。
玉子の黄色、菜の花の緑、人参のオレンジ。
食べごたえのあるものが欲しいから、、さつま揚げ!『ゼンマイとさつまあげ』もさらに一列にならべた。
そして、パリパリ歯応えの『たくあん』も。
五式の短冊~
横一列にまんべんなくごはんの上に具材を並べたら、ラップの端を持ち上げ、海苔をつまみ、くるっとまいていく。
す巻き?無くても大丈夫!
ラップで、簀巻きの要領で、 海苔の反対はしに水を塗ってぎゅっ、くるっと巻いていき、握るだけ。
″ぎゅっ、ぎゅっ、″
「できた!」
日本ののり巻きより少し細目ののり巻きの完成!
恵方巻のようにかぶりつく 具材たっぷり爆弾のり巻きだ。
棒状のおにぎり。
海苔の表面にさっとごま油をぬって、胡麻を散らせば完成だが、お外に持っていくから今日はぬらない。
「ランは何入れたい?」
「肉だろ」
「肉、ね」
ランの分は ごはんを少し厚目につくる。
ごま油で風味を加えたごはんの上に煎り卵の黄色にひき肉とゴボウの炒めもの……うわ、これだけでもう美味しそう!
ほうれん草に、人参……
「人参いらねー」
チッ、、まあ、いいか、ゴボウの炒め物+人参のキンピラじゃ味が濃いかな。
人参は入れないでおく。
しかし野菜はたべて欲しい。
「キュウリならいい?」
「いいよ」
キュウリを縦に細長く切って、そのうちの一本を入れる。
「巻いてくれる?ラン、巻くの上手いでしょ?ロールキャベツも上手かったから」
「おう!」
ランがのり巻きを巻いている間にもう一本。
海苔の上にごはんを敷き、卵のラインをつくり、あとは、、魚肉ソーセージ!丸々一本入れてやる。
菜の花も入れとこう。
「次はこれ巻いといてね」
サクラは魚肉ソーセージ巻きをランに託した。
次は、、海苔、ごはん、卵を準備して、何にしようかな~あ!カニかまいいね!カニかまと来たら緑は、、キュウリ!、、あっ!ランが今見てないから人参のキンピラも入れちゃえ~そしてそれを隠すように ほうれん草のナムルをのせ、、
サクラはランが見てないうちにくるっと巻いてラップする。
「ラン、三本で足りる?」
「もう一本」
「はいはい」
海苔にごはん。残りの卵を全部入れ、ほうれん草に、、何入れようかな……
イシルさんなら納豆キムチとかでも良さそうだけど、ランは納豆食べられない。
「これ入れてよ」
サクラはランが持ってきたものを受けとる。
「あ!ツナ」
いいね!ツナとくれば、チーズ!ツナチーズ、意外と合うんですよ キムパプに。
歯応えが欲しいから、キュウリかな。キュウリ、、あれ?キュウリがない?
″パリパリパリパリ……″
食うなよ、ラン。
「……巻いてくれる?」
「おう!」
サクラの分の一本、ランの太めの ラップ巻き爆弾のり巻き四本をリュックに入れて ようやくサクラとランは山へウォーキングに出かけていった。
◇◆◇◆◇
イシルの森の家を出て先ずはいつもの獣道へ。
「サクラ、張り切りすぎると途中でへばるぞ」
腕を大きく振りながら歩くサクラにランが注意する。
「やり過ぎると 運動みたいに続かなくなるからな」
あいたー、ランにはわかっている。
サクラが運動さぼっていることが。
「自分に課せすぎるなよ、なるべく続く方法でな」
「あい。」
森の家から獣道へ出て、左へと折れる。
こちら側はまだ歩いたことがない。
「ラン、置いていかないでね」
知らない道は心細い。
ランがいなくなったら迷子だ。
「見失っても喚べるだろ」
ばーか と、ランがしらっとした目でサクラを見た。
「あ、そうだった」
いつまでたっても慣れない。
いやさ、喚んだら来るって現世ではないからね?
慣れないのも無理ないのよ。
救急車だって呼ぶの戸惑うのに。
呼んで来てもらったとたんに治ったらどうしようって(←小心者)
ナースコールだって押せないのよ?
「いつになったら 頼ってくれる?」
さわっ、と 風がふいて ランの長い前髪が髪がサラリと流れ、切れ長の瞳がサクラを見つめる。
澄んだ蒼い目は冷たい印象を与えるが、サクラを見つめる瞳の奥は暖かい。
「サクラ……」
くそう!無駄にイケメンめ!!
「いつも頼りにしてますぜ旦那!」
甘くなりそうな空気を回避すべく、サクラはにっかり笑ってランの背中をバンバンっ、と叩いた。
「……」
ぶち壊し、成功!!
しばらく歩くと水の音が聞こえてきた。
「こっちも川に出るんだね」
「こっち側は川向こうに渡れるように橋がかかってるんだ」
「へぇ~」
川原に出ると 成る程、上流より浅くて川幅が狭くなっている場所があり、あきらかに手作りの橋がかかっていた。
「イシルさんが作ったのかな」
「かもな。イシルは必要ないだろうけど、なんだ、『シズエ』だっけ?は必要だったろうしな」
そうだね。
イシルさんがシズエ殿を抱っこして川を渡るとは思えない。
また シズエ殿も望まなかっただろうから。
サクラとランは川を渡る。
丸太を組んで作った橋は 頑丈だが、柵がついてないから要注意。
「ほら」
ランが左手を差し出す。
「滑るから」
「お、おう!」
サクラは男らしく返事を返し ランの手を握った。
成る程、濡れて滑るな、橋。
「うわ、うわっ」
へっぴり腰のサクラを見てランがアハハと笑う。
そして、握った手をグッとひいて サクラの両手を自分の腰に捕まらせ、サクラの手に手を重ねる。
勢いでランの背中に顔を埋める。
「ちょ///ラン」
「何だよ、今さらだろ?平気でまたがってたくせに」
「ぐっ、、それは黒豹姿でしょうが」
「人間のままでもオレは構わないけど?むしろそっちの方が……」
「はいはいはいはい渡りましょうね!落ちるときは一緒だね!心強いよ!!」
しばらくおとなしかったから忘れていましたよセクハラ大魔人!
今日は1日コレをかわしながら歩くのか……
サクラはランに抱きつくような形で橋を渡った。




