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336. ミケランジェリの後始末 2 (連) ★

挿絵挿入しました(3/5)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m




アスに確認したサクラはさて、イシルに何て言おうかまた頭を悩ませる。


隠しても仕方がないし、隠すつもりもない。

二人が鉢合わせする前にイシルに話さなければまたややこしいことになる。


そう思い、サクラはイシルがいるであろうメイの薬草園へと急いだ。


『カクレンボウ』

確認が終わったから報告だ。


執務室を出るとマルクスが後ろからサクラに声をかけてきた。


「お急ぎならお送り致します。アス様の領域内なら可能ですので 村の入り口までお送りできますが」


「……結構です」


「左様でございますか」


サクラが断ると 心なしかマルクスが残念そうにした気がした。

うん、ありがとう、マルクスさん。

しかし、フリーホール並みの転送はゴメンです。

恐怖で考えがすっ飛んでしまっては困るのだよ。


マルクスに別れを告げ、早足で廊下を歩いて行くと 後ろでドアが開く音がした。


そして サクラは声をかけられる。


「サクちゃん?」


サクラをこう呼ぶ相手は 異世界で一人しかいない。


「サクちゃん、だろ?」


サクラは恐る恐る振り返る。


そこには――


イケメンマッドサイエンティスト風エリートサラリーマン系銀縁眼鏡様が 死に別れた恋人を見つけたような顔をして立っていた。


「ミケちゃん……」


『カクレンボウ』の『(レン)』がこんなところに潜んでいたとは……

先方(ミケランジェリ)との『連絡』が。


後ろに撫で付けた髪は乱れなく、銀縁のメガネの奥の切れ長の目は少し潤み、神経質そうな口元がきゅっ、とひきしめられている。

ああ、やっぱりビンゴ、大好きな()





挿絵(By みてみん)





「こんなところで会えるとは、やはり運命の赤い糸で結ばれているんだな」


ミケランジェリが クイッと眼鏡のブリッジを指で押し上げる。

うわああ!いただきましたよ、ご馳走さまですその仕草。


はぁ、と ミケランジェリが 艶っぽくため息を吐いた。

うん、イイ!


「だが残念だ……私は運命に逆らわねばならん」


「ん?」


「私は……出逢ってしまったのだ」


ミケランジェリが申し訳なさそうにサクラを見つめる。

なんだ?なんの芝居が始まるんだ?


「悪魔の()()()あの御方、そう!アス様に!!」


いや、悪魔ですよ、本物の。


「私は傲っていた。あの方を前にすれば私など足元にも及ばない」


おっ!引くことを覚えたんだ、ミケランジェリ。

アスが鼻をへし折ってくれたんだね。

そりゃそうでしょ、悪魔なんて紀元前から存在してるんだ。

デーモン小◯閣下なんて御年10万飛んで58歳の悪魔であらせられる(2020年現在)


「サクちゃんは私の天使だ。だがしかし、許してくれ私は行かねばならん」


ミケランジェリは断腸の思いと言わんばかりに唇を噛む。

いや、大変悩ましくなまめかしいお顔で結構ですが、何で私がフラれたみたいになってんだ?


「アス様はローズ商会の総統にして絶対的権力を有しながら お姿は女神のように美しく、泉のように知識がわき出てくる。ベールに包まれた本質は 残酷で冷酷、なのに……」


ミケランジェリが頬を染めて悦に浸る。


「甘美なのだ///」


うっわ~


「脳髄をかき回されるような恐怖と悦楽を見た……」


ほんと、何したんだアス!!


「私はアス様のためなら……魔導に堕ちてもいい」


お二人とも十分ダークサイドです。


「しかし困った、、恋仲がこじれた男女に友情は芽生えないと本にはあったが、さくちゃんとは、その、、と、、友達でいたい///」


恋愛指南書まで読んでいるのかミケランジェリ。

そう言えばミケランジェリの知識は全て本から得たものだとアークが言っていた。

そりゃ恋愛も人間関係もうまくいくはずもないよ、マニュアルくん。

その顔で言葉を飾りたて、マニュアル並べてたら胡散臭すぎるし、尚且つ使いこなせてないもん。


「出来ることなら 今まで通り『サクちゃん』と、呼んでもかまわんだろうか……友達として///」


マニュアルは捨ててその()のままを出したらいいんだミケランジェリよ。


「いいよ『友達』」


「いいのか!?」


なってないし『恋仲』


それに『友達』として近くにいれば、シャナやイシルとの関係のフォローもしやすくなると思う。

ギルロスのところにも謝罪に連れていける。

ギルロスは死に目にあわせたんだし、『ラ・マリエ』にいるならこのままって訳には行くまい。


乗りかかった船だ、一緒に沈む気はないが、せめて岸にたどり着くまでは乗っていこう。


サクラは右手を差し出し、ミケランジェリに握手を求めた。


「友達、ヨロシクね、ミケちゃん」


「サクちゃん///」


ミケランジェリが控え目にサクラの手を握る。

そう。控え目に。

ミケランジェリは口だけで 積極的にサクラに触れては来ない。

ミケランジェリがサクラに触れたのは吸魔装置が破壊された時(←サクラがやった)にサクラを庇うためと、別れの時(←しかも酔ってた)だけだった。


何だかんだでミケランジェリを憎みきれないのは 本当に人に対して不器用なのが見えるからだ。


(ん?)


握手をするミケランジェリの首もとにキラリと一閃きらめき、ヒヤリ、刃物が現れた。


サクラは何が起こったのかわからず目をぱちくりさせる。

当のミケランジェリも 己の首に刃が当てられていることに気がついていないようだ。


ミケランジェリの後ろで気配なき人影が動く。


「その手を離せ」


ピタリとミケランジェリの頸にはりつくアサシンナイフ。

それを持つ冷たい瞳の人物――


「イシルさん!?」


薬草園にいるはずのイシルだった。


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