332. 銀狼亭のおうちカレー ★☆
挿絵挿入しました(2/24)
Ichen様よりFPいただきました!(3/8)
後書きに銀狼亭のおうちカレーを再現していただきました!
ありがとうございます(≧∀≦)
是非とも見てください!
コロッケその厚さなんと3センチです!!
食べたいっっ!
次の日、サクラは久しぶりにイシルと一緒にドワーフの村へとやってきた。
今日は門前広場に開店したばかりのマーサのパン屋のにいくのだ。
昨日 迦寓屋で作った温泉まんじゅうを手土産に、銀狼亭の裏からキッチンに顔をだすと、サクラとイシルは仕込み中のサンミに声をかけた。
キッチンには、カレーのいい匂いがしていた。
「カレーパン用のカレーですか?」
マーサのパン屋のウリはカレーパンだ。
「いいや、それはもう昨日のうちに渡してあるよ。これは朝からカレーが食いたいって客が来てね」
朝からカレーとは元気な客だな。
「しかも、コロッケトッピング10個だとさ」
それはもうカレーのほうがトッピングなのでは?
サンミがクイッ、と ダイニングを親指で示す。
ご本人様がいるというわけだ。
どれどれ、どんなヤツが……
サクラはカウンターからひょいッと覗いてみた。
客は一人。
″もぐもぐもぐ……″
「げっ!」
カレーをもりもり食っていた輩が 顔をあげ、閉じた瞳でサクラを見た。
「お主も来たのか、サクラ」
「……ラプラス」
お前か……
「丁度良い、おかわりを頼む。トッピングはコロッケ10個でな」
「……かしこまり」
引きこもりは何処へ?
「ああ、トッピングは二個以外は別のせで頼むぞ?カレーがかかってても旨いが、サクサクを食いたいからな」
「……ラジャ」
随分ツウな注文のし方するのね。
世界は視なくて良いのか?古竜ラプラスよ
「こうしていてもちゃんと視えておるわ」
おかわりのカレーをサクラから受け取り 食べながら ラプラスがスラスラとサクラに応えだす。
「お主の今朝の食事は パンであったな。野菜サラダには裂いた鶏肉にゴマドレッシング。目玉焼きはひとつ、スープはクリーム系で、お主は『つけパン』派ではなく『浸パン』派」
そのとおり
「いつもより小食だったのはこの後『パン屋』に行くからだ。」
よくご存知で。
「食後はコーヒーで、猫の小僧が出掛けた後、あのエルフとイチャイチャと……」
「わあ///何視てんだラプラス!!?」
イチャイチャなんかしてませんよ!?
出掛ける前に掃除洗濯してきましたからね!仕事してましたよっ!
「とろとろと煮込まれた角煮のように 絞まりのない顔をしおって、、」
ブタさんからはなれてはくれないんですね?
まあ、イシルさんに隠れてデレデレはしてましたが……
イケメンですからね。
髪を編んでないときのイシルさんは 前髪が出来た分ちょっとだけ幼く見えて新鮮でした。
ずっとみていられる。ふふふ……
「その顔だ」
ラプラスに突っ込まれた。
スプーンで人の顔を指差してはイケマセン、行儀悪いなラプラスよ。
「貴方はアスのところに?」
イシルが残りのトッピングのコロッケ八個を皿に乗せ持って来て ラプラスに声をかけた。
あれ?いつの間に仲良くなったんだ?この二人。
「いや、いい寝床を探したのだ」
ラプラスがそれにうきうきと答える。
よっぽど寝床が気に入ったようだ。
「ひんやりとしていて、適度に湿度があり、静かなのだ。悪魔が家具も用意してくれたしな」
意外と面倒見いいな、アス。
「人目を気にせず、竜のままでも過ごせる広さ。たまには羽をのばしたいからな」
そんなとこあったっけ?
「何より、あの建造物が良い。古の文字が綴られた柱、魂の眠る場所、懐かしい、故郷のような場所だ」
それって……
「ドワーフの坑道!?」
「そうだ。遊びに来るが良い、お主も遊びに来るであろう?エルフよ」
「ええ」
あの坑道には イシルの旧友が眠っている。
サクラはそれを気にしてイシルに聞いた。
「いいんですか?あの場所は……」
イシルは気にしてくれたサクラにちょっと笑ってみせる。
「僕のものではありませんから。それに……」
それに?
「ドラゴンが住めば 彼の魔力であの坑道も潤うでしょう。花でも咲けばいい弔いになります」
「そうなんですね」
ドラゴンって偉大なんだなぁ……
ちょっと見直したよ、ラプラス。
″もぐもぐもぐ……″
しかし、よく食うな。
「『カレー』とは旨いものだな。コロッケとも合う」
「でしょう?さすがサンミさん!」
銀狼亭のカレーは サクラが現世から買ってきたルーを使ってつくってみせた いわゆるおうちカレーを参考にして再現している。
本格カレーとは違う、マイルドな味わい。
うん、コロッケ合うよね~
まだまだ改良の余地はあるとサンミは言うが、どこか懐かしい、飽きの来ない素朴な味。
ラプラスはカレーは崩しながら食べるのではなく、全部混ぜ派のようだ。
野菜はごろっと大きめで。
ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎとシンプルに。
豚バラを炒めて 脂を出し、野菜を炒めてルーを足す。
あめ色タマネギ?いいえ、食べるためのタマネギです。
ほっくりジャガイモがとけてとろみがついている。
それにプラスコロッケ10個ってどうよ?
『別皿』指定せんでも乗らんわ!
どんだけジャガイモ食うんだ、羨ましい。
ラプラスはコロッケをスプーンで裂く。
″サクッ″
あげたてのさっくりコロッケは その音だけでも美味しいのが伝わってくる。
黄金色のジャガイモがカレーに合うように滑らかにマッシュされていて、少しバターの香りの強い 甘めの味付けになっている。
カレーのジャガイモとの差別化をはかるために、サンミが色々考え中なのだ。
ラプラスは全部混ぜしたカレーと一口大にスプーンで切ったコロッケを一緒にすくって口に入れた。
″カリっ、、あむっ″
ああ、サクサクのコロッケとカレー、、食べたいッ!!
″もぐもぐもぐ……″
ラプラスが口を動かすと サクッ、サクッと良い音が聞こえる。
一つ目のコロッケを食べ終わると、ラプラスは二つ目のコロッケにソースをかけた。
(味変だぁ~意外と物知りだなラプラス!あ、色々視てるからか)
ツン、と ソースの香りが漂い サクラは味覚を鼻から刺激される。
(う、う、うまそう///)
サクラがごくりと喉をならした。
カレーにかけるのは人それぞれあるよね~
ソース派、醤油派、ケチャップ派。
私はマヨラーだがマヨネーズはかけない。
かけるとしたらチーズくらいかな。
うちの母上はね、牛乳かけてましたよ。カレーに。
いや、作る過程で牛乳入るならわかるよ?ミルクカレー。
しかし、食べてるときに皿の上のカレーにかけたの見て 子供ながらにドン引きしましたよ。
お家だから出来たのね。
好きなように食べられる。
それもおうちカレーの醍醐味のひとつ。
(ああ///食べたい!)
カレーは伝染する。
一人たのむとつられて注文してしまう。
サクラは旨そうに口にスプーンを運ぶラプラスに ぽーっと見惚れている。
正確には、カレーにだが。
「行きますよ」
「え?」
ラプラスの食べっぷりに見惚れていたサクラはイシルにぐいっと腕を引かれた。
何?何?
「その顔は人前でしちゃ駄目です」
あれ?ヨダレ出てたとか!?
「そんな切なそうな顔、僕以外の前でしちゃダメ」
あれ、食べたいが全面にでてましたか、イカンイカン。
「みっともなかったすね、すみません」
サクラは口元をぬぐいながらイシルに謝った。
そんなサクラをイシルはじと目で睨む。
「わかってないんだから」
「ん?」
「なんでもありません」
イシルがちょっぴりむくれている。
「これから食べるんでしょ、カレーパン」
そうだ!カレー食べるんだった!
「行きましょう!イシルさん!」
サクラは振り返り、ラプラスに『私を視るな』と念押しすると、イシルの手を握り、ぐいぐい引っ張ってマーサのパン屋へと向かった。




