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325. ミケランジェリの館 9 (イシルとの再会) ★

挿絵挿入しました(2/17)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m




ラプラスは『ラ・マリエ』の上空に到達すると、サクラをぽいっと放り投げた。


「ぎやああぁぁ!!」


″ウギャギャギャギャ(笑)″


ラプラスがけたたましく笑う。

何がそんなに愉快なんだ!?

顔か!?顔がそんなに面白いか!?

紐無しバンジーなんてやらされたらみんなこんななるわ!!


牢から出すんじゃなかったよ!このお構い無し野郎!無茶苦茶だぁ~~!!


着地!着地!着地の魔法~~!!


(あ……)


サクラの落ちていく先のバルコニーに佇む人影が見えた。


(イシルさん!!)


と、アスだ。


イシルが(サクラ)に向かって手を伸ばしてきた。


すると、ふわっとサクラの落下速度が落ちて、ふわふわと滞空するサクラからイシルの顔がよく見えた。


(イシルさんだ……)


イシルは少し疲れた顔をしていた。


(心配、かけたよね、ごめんなさい)


涙目になるサクラを見てイシルが感慨深げに笑った。


(はっ!)


このままでははイカン!今のこの軌道のままいくと、サクラはイシルの元に落ちてしまう!


イシルの唇を強引に奪った上に、失礼にも盛大に『お前より好みのイケメンのところに行くぜ!』と、振り切り、おそれ多くも『あばよ』と目の前で消えてしまった手前、、会わせる顔がないっっ!!

今更どのツラ下げて顔を合わせろと!?


(うっ、くっ、、)


サクラは頑張って空中を泳ぐ。

が、一向に進まない。軌道はかわらない。


″ウギャッ、ヴギャギャッ(笑)″


空中で変な動きをするサクラを見てラプラスが笑う。

ああ、うっさいラプラス!

愉しそうでなによりだね、このすっとこどっこい!


サクラはせめて隣の窓へ降りようと手をバタつかせた。

犬掻き、クロール、平泳ぎ……

が、その甲斐もむなしく、イシルの元へ。


″ぐいっ″


「ひゃあっ///」


イシルがサクラを捕まえる。





挿絵(By みてみん)





サクラは、きゅっ、と イシルにかみしめるように抱きしめられた。


(うっ///イシルさん)


もう、会えないと思っていた。

あのままお別れだと思っていた。


″きゅうっ……″


力強い腕がサクラをつかまえてはなさない。


イシルの匂い、

イシルのあたたかさ、

イシルの存在を思い知る。

サクラの中で占めるその存在の大きさを。


会いたかった……


じんわりと、イシルの存在がサクラの心に染み渡り、胸が熱くなった。

目頭が熱くなった。


(はっ!!)


「イシルさん、放してください、、」


サクラの言葉にギクリとイシルが身を硬くし、サクラは慌てて言葉を続ける。


「いや、あの、着替えないと!このまま(ウェディングドレス)じゃ神に会えないです!もう、時間がないんです!自分じゃ脱げないから……」


「ああ、そうですね、もうそんな時間ですね」


イシルはサクラを抱いたまま 部屋の中に入るとソファーに座り、膝の上のサクラのドレスの背中のホックを外しにかかった。


″プツン、プツン、、″


(NO――――!!)


「イヤイヤ!イシルさん違います!そうじゃない!外さないでぇ!!」


えっ?と イシルが手を止める。


「見えちゃう、見えちゃいますから!!」


バルコニーにはイシルの他に アスといつのまにやら人型になったラプラスが立っていた。


「あ、すみません、こんなところで、では別室で……」


と、サクラを抱えて立ち上がる。


「それも違います!!」


どちらかと言うとイシルに一番見られたくない。

コルセットでぎゅうぎゅうに締め上げられ、ボンレスハムのようになった姿なんて……


「アス!アス~」


サクラはイシルの腕の中でアスへと手を伸ばし、名前を呼んだ。


「サクラさん!?何を、、」


「何って、着替えるんです!アス、手伝って」


「は?なんで、アス?」


「だってアスは男でも女でもないですから」


アスには着替えも二度ほど手伝ってもらっている。

この中で選ぶなら、、アスだ。


「はあ!?」


「アス、早く、時間がないから」


「はーい♪」


サクラに呼ばれたアスがイシルの腕の中から するりとサクラを奪い取った。

イシルがサクラの言葉に慌てる。


「サクラさん、アスは男でも女でもないんじゃなくて……」


男でも女でも()()のだ。


「さぁ、お着替えしましょうね~♪」


アスはイシルの言葉を遮るようにそう言って サクラをお姫様抱っこすると イシルにみせつけるように、楽しげにくるくるまわった。


「ちょっと、アス、私 自分で歩けるから……」


「ふふふ、だーめっ、靴はいてないでしょう?」


サクラのウェディングドレスの裾がフワフワと華やかに舞う。


「いいわね~ウェディングドレス姿って、白いドレスの意味は『あなたの色に染まります』よね~ステキ♪」


これは、わざとだな、アス。

イシルをあおっている。

何かの、、仕返し?


「悪いわね~イシル。ご指名だから仕方ないの」


「うぐっ、、」


「アタシがちゃ~んとお世話して(脱がせて)あげとくから、あんたは大人しく待ってなさいね、イ、シ、ル♪」


「貴様……」


「うふふ、花嫁を奪い去るって、キモチイイ~♪」


「アタシを煩わせた罰よ」とアスが高笑いしながら サクラを抱えて 颯爽と執務室を出た。

その背にラプラスが声をかける。


「サクラ、コロッケは……」


「ごめん、ラプラスー、帰ってきたら~、ご馳走~、するからあぁ~~」


イシルとラプラスを残して、サクラはアスに抱えられ、ドップラー効果を発生させながら サクラの部屋へと着替えに行ってしまった。


「……コロッケ」


しょんぼり、ぽつねんと 爺様が二人。


「コロッケは僕がご馳走しましょう」


しょんぼりに、ぽつねんが……いやいや、

ラプラスにイシルが声をかける。


「本当か!?」


「ええ、サクラさんを助けてくれたんですよね」


「まあな」


運んだだけだけど。


「お礼もかねて、僕が作りますよ、コロッケ」


「よいのか?お主、顔色が優れんようだが……」


「大丈夫です」


イシルはアスの執務机にガツンと拳をおろす。


″バキッ″


頑丈そうな執務机が ぱっきりと真ん中から二つに折れた。


「何かしていないと 気が狂いそうなんです」


「ハハハ!そうか!それは頼もしいな、うむ、世話になる」


何が頼もしいのかはわからないが、イシルとラプラスは連れだって『ラ・マリエ』の調理場へと向かった。





◇◆◇◆◇





「大変だったんだから、イシルを封印しとくの」


こちらは『ラ・マリエ』のサクラの部屋。

アスがサクラのドレスの背中のホックを外しながらぼやきだした。


如鬼(ニョッキ)三匹とヨーコとアタシの五人で封印したのに 結界破っちゃうんだもん、勘弁して欲しいわ、まったく、どんだけ元気よ!」


「アスがイシルさんを引き止めておいてくれたんだね、ありがとう」


封印はどうかと思うが、アスはサクラの気持ちをくんでくれたのだ。

今もイシルと顔を合わせづらいサクラのために、こうしてつきあってくれている。


「で?そいつは、、ミケなんとかは何処に住んでんの?」


サクラのドレスのコルセットの紐を緩めながら アスがサクラに質問した。


「わかんないよ、私 土地勘ないし」


ドレスとコルセットを 胸の前で押さえたまま サクラは背後のアスへ答えを返した。


アスはサクラの返答に少し違和感を覚えた。


(言いたくないの?)


「かわいそうに、、こんなにぎゅうぎゅうに締め付けちゃって……苦しかったでしょう?」



サクラの背中は締め付けられた跡が残り、サクラの肌が赤くなっていて痛々しい。


「アスの作ったコルセットの凄さがわかったよ。いつもはこんなに苦しくないもん」


「でしょう?アタシは凄いのよ」


アスにコルセットを緩めてもらって サクラはようやく息が楽にできた。

はぁっ、と深呼吸をする。


″ツイッ、、″


「ひいいっ!」


アスに 締め上げで出来た背中の跡をなぞられてゾワリとし、サクラは悲鳴をあげた。


「治療してあげる♪」


「いらん!いらん!ありがと、アス!時間ないから!」


「え~残念~」


サクラは着替えをひっつかむと 着替えるためにウォークインクローゼットへと駆け込み、カーテンを引いた。

そんなサクラに アスが言葉を投げ掛ける。


「そのドレス、ダリア商会で扱ってる布じゃないわね」


「そうなの?」


ダリア商会はアスが取引している商会で、繊維業界の大手だ。

この辺りでは独占的といってもいい程に。


「でも、宝石はルピナス商会のものね。竜ちゃんが飛んできたのは西。西側でダリアと取引がなくて、ルピナスとはある。そしてこのデザイン、、」


「……」


アスが思考を巡らせていると、着替えを終えたサクラがウォークインクローゼットから出てきた。

アスは拾い上げておいたパーカーをサクラに着せようとして、ポケットに何かが入っている事に気がついた。


「ん?サラ・ブレッド?」


ペーパーに包まれた食べかけの『サラ・ブレッド』

しかも、作りたてのようだ。

珍しい。


「てことは、サラ・ブレッドの生産工場の近くかしら……だいたい絞られてきたわね」


サクラがアスの推測を聞きながら微妙な顔をしている。

アスはそんなサクラの微妙な感情を()()で読み取った。


「なぁに、して欲しくないの?仕返し」


「……うん」


「あんなことされて!?あんた、バカなの?また来るわよ、ミケなんとか」


「いや、それは私がいなければ……」


「それは言うな」


珍しくアスに怒られた。

おねぇ口調でもなく、本気の殺気だ。


「……はい」


サクラは大人しく頷いておく。


「ミケちゃんはさ、悪い人じゃないんだよね。ただひん曲がっちゃってるだけでさ」


シャナにしたことは許せないけど、サクラが言葉をかわしたミケランジェリは なんだか憎みきれないところがあった。

クマのぬいぐるみ『アール』に話を聞いてしまった事もあって、出来ればそっと見守りたい。


「呆れた、、敵に情をわかせてどうすんのよ、お人好しすぎるわよ」


「だよねー」


「アタシはよくてもイシルは納得しないわよ」


よく考えれば一番の被害者はイシルとシャナだ。

いや、ギルロスも、大怪我をしている。


「う~ん……出来ればミケちゃんには手を出さずに『吸魔装置』だけ壊して欲しいんだけどなぁ……」


「吸魔装置?」


「ミケちゃんが作った 魔力を吸収する装置だよ。大地の魔力をそれで吸い上げて使うことが出来るんだって」


「何ソレ、便利ね」


「便利だけど、使い方を間違うと戦争になっちゃうよ。現にミケちゃんは私を使って お父さんのいるゼラニウムの街を潰そうとしたんだから」


「ゼラニウムの街をねぇ……」


あ、やべ、街の名前言っちゃった。


「とにかく、その『吸魔装置』さえなくなっちゃえば 私は必要ないわけだからさ。私は『故障』させただけで『破壊』まではできなかったから」


「じゃあ今は動かないのね、その装置」


「恐らく」


「わかったわ、アタシがなんとかする」


「本当!?」


「本当よ。その代わり……」


その代わり?

アスとの取引の代償にサクラが構える。

が、それは意外な言葉だった。


「必ず、帰って来て」


「えっ!」


「あんたが帰って来なかったらシャナがいたたまれないわ」


アスがシャナを引き合いにだし、サクラの情に訴える。


「イシルのとこに居づらいなら ()()|にすめばいいじゃない」


ほだして――


「必ず、戻って」


願って――


「じゃないと、ミケなんとかはどうなるかわからないわよ」


結局脅す。


「何より、アタシが困る。」


「アス……」


「アンタがいなかったら、、アタシ――」


アスが切なそうな瞳でサクラを見つめた。


「商売なり立たないでしょ?」


ああ、そうですか。


「……わかった」


「約束よ」


サクラはアスにしっかりと約束させられた。

サクラの体の周りに金色の光の粒が舞う。


時間だ。

神の召還

医者の診察。


「待ってるから」


アスは笑顔でサクラを現世に送り出した。


「待ってるわよ……愛しい人(サクラ)







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