表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/557

318. ミケランジェリの館 3 (ミケの野望)





″ピコーン……ピコーン……″


″ドゥン……ドゥン……″


薄暗く青白い明かりの中、沢山の配管、配線がめぐらされ、機械音が鳴り響くミケランジェリの館の地下室。


「これはまた、けったいなお部屋ですね……」


サクラは恐る恐る部屋の中に足を踏み入れた。

計器や振動計、波形の映るモニターのようなもの、、ちょっとさわったら壊しそうで怖い。


(魔法の世界にしては近代的な……)


ドワーフの村は勿論だが、アザミ野の町でも、ローズの街でもこんな大掛かりな機械は目にしなかった。


「吸魔装置だ。この装置は大地の魔力を吸い上げて自在に操ることが出来るんだ」


だからミケランジェリは地下に牢を作るのは勿体ないって言ってたのか。


「へぇ~、これもミケちゃんが考えたの?」


「その通り、、と言いたいところだが、これの半分は先人が開発したのだ。私はその続きを引き継いだまでさ」


「でも完成させたのはミケちゃんなんでしょ?」


サクラに言われて ふふん、とミケランジェリが得意気に笑う。


「そうだ。他の者はまだ完成には程遠いであろう」


ふははは、ざまぁみろとミケランジェリが高笑いしながら悪態をつく。

(きさぎよ)い程性格悪いぞ、ミケランジェリ。

普通人前でそんな姿は見せないものだよ。


「そして、今日すべてが完了する。サクラ、君はその為にここに来たんだ」


「……これがミケちゃんのお願いなの?」


「ああ、そうだ」


部屋の真ん中に何かをためるタンクのようなものがあり、地に根差す木のように蛇腹の配管が伸びていて、その前に椅子が置いてあった。


……嫌な予感がする。

ミケランジェリが『サクちゃん』呼びをしていない。

仕事モードだ。


その椅子の上には くるくるの管の繋がったヘルメット。

パーマ当てる時の機械じゃないよね?


「そこに座ってくれ」


「分かった」


サクラは部屋の中央の怪しげな椅子に座った。


(『座ったんだからお願い終わり!』とはいかないだろうな……うわっ!何!?)


座ったとたんサクラの腰にベルトが巻き付いた。

サクラは不安げな顔でミケランジェリを見上げる。


「安全ベルトだ、心配するな」


いやいや、安全ベルトが必要ってことは 危険ってこと!?


ミケランジェリは サクラにヘルメットをかぶせながら説明を始めた。


「この吸魔装置は 大地の魔力を吸い上げて ここに座った者に供給するんだ。だからどんなに魔力の低い者でも ()()()()()()()究極の力を得ることが出来る」


「……はぁ」


「走るのが早い者がいるとする。だがその者は体力がなく長くは走れない。それは勿体ないと思わないか?


「勿体ないですね」


「魔法もそうだ。才能はあっても魔力が足りない者はいるのだ。サクラは究極魔法を扱う才能はある。けれど、発動には魔力がたりない、、だね?」


「……究極魔法?」


「私が初めてサクラを感じた時///あの瞬間を思い出すとゾクゾクするよ」


ミケランジェリは恍惚の表情を浮かべ語り出す。

いや、ヤメテその言い方……


「あの時にサクラが使おうとしていたのは『アルティメット・メテオ』だよ!何処にも属さない幻の魔法だ。天の星を雨のように地に降らせるあの究極魔法!一体どんな原理なのだ!?」


天から星が降ってくる……

隕石?

そんな魔法使ってないよ?


「あ!」


あれだ!

シイルが本の虫干ししてた時に見た本の中に宇宙の図解らしきものが描かれていた本があった。

あの時はイシルに本を閉じられて止められたんだった。

魔力量を出しきってしまうと魔力切れを起こして動けなくなり危険だからと。

ミケランジェリはあの時からサクラを狙っていたのだ。


「そこで登場するのが吸魔装置だ。この吸魔装置と一体になれば サクラの魔力は枯渇することなく どんな魔法をも使えるようになる!私の思うままに!」


おい、コラ、ミケランジェリ、それはつまり、あれかい?

私は()()()()ってこと!?


「私はサクラに魔力を与え、サクラは私に魔法を与える。これぞ支え合い補い合う愛のかたち///」


おーい!なんか色々間違ってるよー!?


ミケランジェリが吸魔装置の電源を入れる。

キュィーンと チャージャー音のようなものが響く。


「さあ!サクラよ!ゼラニウムの街にむけて究極魔法を発動するのだ!私のために!!」


(……やってやろうじゃない)


サクラは魔力を増幅させる。

キラキラと銀色の光がサクラのまわりに溢れてくる。


「ふふふ、いいぞ、サクラ」


だが、それはゼラニウムの街に向けてではない。


(そんなミサイルの発射ボタンを押すようなことしてたまるか!!()()()落としてやる!!)


「サ、サクラ?」


(こんな危ない機械ぶち壊しじゃ!!)


サクラは魔法を膨れ上がらせ、タンクの中に溜め込むイメージをわかせた。


機械なら電気に弱いはず。

サクラは究極魔法ではなく、サンダー系の魔法をこの部屋に向けて注ぎ込んだ。

いや、自分死にたくないし。

火事は自分も危ないから、火魔法は却下。

水は機械自体に防水加工してあるかもしれない。

狙うわ機械のショートなり。

暴発してしまえ!!


″パリパリ……バチバチッ″


青白く細かい稲妻がチリチリと機械のまわりをめぐり出し、そこかしこで火花があがる。


「危ない!サクラ!」


ミケランジェリは計器の異常をみとって吸魔装置の電源を切った。


″パリッ、、ボフン!!″


「きゃあ!」


後ろで青い稲妻がチリチリと吸魔装置を包み、漏電したかと思うと、大きな音がして 明かりが落ちた。


(あれ?)


暗闇の中、ふわんと何かに包まれて サクラには何の衝撃もこなかった。


「大丈夫か?サクラ」


耳元でミケランジェリの声がする。

パッ、と明かりがつくと、ミケランジェリがサクラを覆うようにして 抱きしめていた。


「……ミケちゃん?」


「うっ、、」


庇ってくれたの?

ミケランジェリはサクラを抱きしめたまま 動けないでいる。

ゼーゼーと肩で荒く息をしながら呻いている。


「ミケちゃん大丈夫!?」


サクラは自分でやっておきながら 思わず声をかけた。


「サ、、クラ、、私の事は心配いらない。、、ぐふっ」


口をを押さえたミケランジェリの指の間から血が滴り落ちた。


「でも、血が……って、鼻血!?」


ミケランジェリが手をどかし、顔をあげると鼻から血がダバダバと……


「やわ///やわやわ///柔らかいね、サクちゃん……」


怪我じゃねーのかよ!!

どんだけ女に耐性ないんだ!?ミケランジェリ!!


ミケランジェリはふらふらとサクラから離れると 鼻にティッシュを詰めながら立ち直った。


「魔力の暴走くらい慣れている。小型の吸魔装置をつけているからな」


鼻ティッシュで偉そうに言われてもねぇ……

しまりませんよ、ミケランジェリ。


小型の吸魔装置……

それでミケランジェリには魔法が効かないのか。

ドワーフの村を襲った魔物にも取り付けていたから コッコもディコトムスも ミケランジェリと同じく魔法が効かなかったのか。


「しかし、起動させたまま発動しないなんて危ないな、何故発動しなかった」


戦争の引きがねひけるかよ!!


「ゼラニウムの街がどこだか知りません」


「ああ、迂闊だったな」


ミケランジェリがサクラに地図を示す。

サクラは示された地図でドワーフの村を探した。


「ん?サクラ、どこを見ている?」


「え?いや、私文字がまだよく読めなくて……」


「そうか、、私が一から教えてやろう。うん、いいなソレ///手取り、腰取り……」


なんか色んな妄想が駆けめぐってるようですね?

顔が崩れてるよミケランジェリ。


「ゼラニウムの街は ココだ」


ああ!折り畳まないでえぇ~


「まあ、どちらにしろ今日は無理だな。吸魔装置も修理しなくてはならん。そうだな、ゼラニウムの街には一度連れていってやろう、その方がわかりやすいだろう」


「ゼラニウムの街に何かあるんですか?」


サクラはミケランジェリに理由を聞いてみる。

ミケランジェリの性格は歪んでいるが、サクラを助けてくれる心はあるんだ。

もしかしたら、ゼラニウムの街にとんでもない兵器があって、ミケランジェリはそれを止めるために頑張る正義の味方かもしれないじゃない?


「ふん!私をバカにした奴等に思い知らせてやるんだ」


ああ、私がバカだった。

『野望』と言っている時点でミケランジェリが正義の味方なわけなかった。

ミケランジェリ……君の良いところはやはり顔だけか。


ドワーフの村は地図ではわからなかったけど、とりあえず吸魔装置は壊せたようだ。


ミケランジェリは吸魔装置の応急処置に入るようで、サクラは部屋で過ごすように言われた。


「よもや私から離れようと思うとは思えないが――」


何処からくるんだその自信……


「サクラが逃げたら逃がした者に制裁を加えるからな」


優しいところもあるかなと思い始めたのに、やはりゲスいな、ミケランジェリ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ