308. 給食 ★★◎
挿絵挿入(2/18)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m
挿絵もう一枚追加(2/22)
後書きにイメージ写真追加(2021/8/29)
多くてスミマセン(;∀;)
サクラはシャナとヨーコと一緒に露天風呂へと入っていった。
この二人との入浴は なんて魅惑的なんだ……
シャナがヨーコの背を流し、ヨーコがシャナの背を流す。
二人とも、、
ナイスバディ!!
女神ですか!?天女ですか!?ご馳走さまです!!
はぁ///絵になるわぁ~
「サクラ、背を流してやろう、近う寄れ」
はしっこでひっそりと体を洗っていたサクラにヨーコが声をかけてきた。
いやいや、オソレオオイですよ、ヨーコ様にお背中お流しいただくとか、何イベント!?
その空間に入っていくのは自殺行為だ!
まあ、見ている人はイナイんですけどね……
「何を恥ずかしがることがある、ささ、、早う、妾が冷えてしまうであろう?」
「……すみません」
サクラはタオルで前を隠しながら 腰かけを持ち、ヨーコの前に腰かけた。
「キレイな肌じゃな」
ふわふわとシャボンを泡立てながらヨーコがサクラの背中を洗う。
ええ、取り柄は肌だけですよ。
あとは誇れるものはございません。
「ふふふ、ムチムチで柔らかい……」
……それも否定できない。
人間なのに手の平に肉球ついてますから、、ぷにぷに。
和んでいただけて幸いです。
ヨーコがざざっ、と 肩から湯をかけてくれる。
あ~極楽……
トリミングされてる気分ですよ。
「頭も洗うてやろう」
「自分でやりますよ///」
断られたヨーコは残念そうだが、そこまでやってもらったら介護である。
「御酒をお持ちいたしましたのじゃ」
三人で湯船に浸かっていると、竹製酒器の入った桶を手にしたセイヤが入ってきた。
「うむ、ご苦労じゃ」
今日は月が明るいから 周りの星がかすんで見える。
雲ひとつなく、まだ寒い三月の夜空は澄み切っていて月が綺麗だ。
酒器の入った桶を湯に浮かべ、美女に囲まれ、月見で一杯だなんて、、まさに酒池肉林!!
「サクラは魔力を使いすぎておるから、酒なんぞ呑んだらたおれてしまう。こっちじゃ」
ヨーコが セイヤから 竹の筒に入ったものを受け取り サクラに渡した。
酒ではなく……
「アイス!!」
正確には ミルクのシャーベットだ。
スプーンですくって口に入れると ひんやりとした甘さが舌の上で溶けていく。
温泉に浸かりながらアイス!
おこたでアイスくらい贅沢!美味しい!!
「シャナさんにも一口」
サクラがアイスをすくってシャナに差し出す。
戸惑うシャナに、早食べないと溶けちゃう、と言うと、恥ずかしそうに口に含んだ。
「ん///美味しい、、スッキリしてるわね」
「ヨーコ様にも」
ヨーコも一口、あむっ、と。
「うむ///良い出来じゃ」
サクラはアイスを堪能し、シャナとヨーコは クイッ、と冷酒をあおり、体の外からも中からも気分もあたたまる。
シャナの部屋へ戻ってからも シャナとヨーコの飲みっぷりは見事であった。
″クイッ″
ヨーコはコロコロ笑いながら、シャナは表情もかえず、淡々とのんでいる。
「はいは~い♪今度はアタシも交ざっていいでしょ?」
料理に舌鼓を打っていると アスが酒を片手に 入ってきた。
「アス殿、酒を持ってきてくれたのかえ?」
「うふ♪アタシ特製の山モモマタタビ酒よ」
(げっ!マタタビ酒!?)
アスはいそいそと ヨーコとシャナに酒を注いでいく。
「子ブタちゃんも一杯どう?」
「今日は 魔力を使いすぎたので止めておこうかな……」
マタタビ酒では前回記憶を無くしている。要注意だ。
「イシルに会う前に一杯ひっかけた方がいいんじゃない?」
「えっ!?イシルさん、帰ってきたの!?」
「今お風呂に入ってるわよ」
アスが意味深に笑う。
「私、部屋に荷物取りに行ってくる」
サクラはしゅたっと立ち上がる。
今日はシャナの部屋に泊めてもらうのだ。
『月影の間』は 通路ひとつ向こうなだけだから、イシルが風呂に入っている間に 明日の着替えを持ってきて……
サクラ自身が何にモヤモヤしているのかわかってない。
イシルをずっとこのまま避けるわけではなく、とにかく、今は少し時間がほしい。
サクラは急いでシャナの部屋を飛び出した。
″コテン″
「おっと」
サクラが部屋を出てすぐに、シャナは顔色を変えないまま その場にコテンと酔いつぶれ、アスが慌てて受け止めた。
「あらまあ、」
アスは抱えたシャナを横にしてやると、自分の膝を枕がわりに貸してやり、ヨーコが半纏を持ち、かけてやる。
「今日はひたすらに酒を煽っておったからな……」
ヨーコがシャナの頭をそっと撫でた。
「一体何を背負っておるのやら」
「……」
「妾では頼りないかえ?」
ヨーコはシャナの寝顔に問いかける。
ヨーコとアスは シャナの寝顔を酒の肴に 飲み続けた。
◇◆◇◆◇
トトリは風呂からあがり、浴衣というものに袖を通した。
脇や足元がスースーして心許ない。
でも、柔らかい肌触り。
寝巻き、なのかな?
風呂を出ると、入口にある大衆浴場の隣の 大休憩所に連れていかれた。
ここは迦寓屋が営業されるようになれば 夕方までは外から来る客に解放される場所だが、夜は白狐達の部屋として使われている。
部屋に入ると いい匂いがした。
「給食係りは当番制なんだよ」
ミツバが部屋の端にある係り表へ案内して見せてくれた。
そこには名前の書かれた木札が48個ぶら下がっており、誰が何処の仕事につくか 一目でわかるようになっていた。
「ルヴァンとトトリとカナルの分だよ」
トトリ達の後ろで声がして にゅっ、と手が伸びてきた。
「ハジメ兄ちゃん!」
ハジメと呼ばれた 中学生くらいの白狐は、手に持っていた三つの木札を カラン と 壁にかけた。
そこには ルヴァン、トトリ、カナルと書かれた木の札がぶら下がっていた。
「偉いね、ミツバ、ちゃんと面倒みて」
ハジメはミツバの頭をナデナデする。
ミツバは嬉しそうに目を細めた。
「この札は一(1)、双(2)、弥生(3)兄ちゃん達が管理してくれてるんだよ」
あれがソウ兄ちゃんで、あっちがヤヨイ兄ちゃん と教えてくれた。
「十二番目の満兄ちゃんまでは早めに覚えた方がいいよ。仕事をする時のリーダーだからね。今はアス様の『ラ・マリエ』にけんしゅうに行ってここにはいない兄ちゃんもいるから、また教えるよ。あ、そこの御盆を持って」
ミツバが盆をもって列に並んだので、トトリ達もそれにならって盆を手にした。
列の先には、おかずや汁物をよそってくれる白狐が立っていた。
順番に めぐって食べ物をお盆にのせていくようだ。
リンゴの入ったマカロニサラダ、お肉ゴロゴロブラウンシチュー、ふわふわの白いパン。
「こんなに、、食べていいの?」
カナルが目をキラキラさせている。
「飲み物忘れてるよ、あと、これも」
ミツバがカナルの盆に カリカリ固そうなものと ミルクを乗せてくれた。
「ありがとう、ミツバ」
席にすわって早速いただく。
「「いただきます!」」
″はぐっ、むぐっ、もぐっ″
がっつくカナルにミツバが声をかける。
「慌てないでお食べなよ、誰もとらないし、おかわりしてもいいんだからさ」
カナルはうんうんとうなずく。
よっぽどうまいのか、ちょっと涙目だ。
「たんとお食べ、明日も働くんだから」
ミツバがカナルの背をとんとん、と 優しく叩く。
トトリはそれを見ながらマカロニサラダをパンにはさんでかぶりついた。
ふわっ、もちっ、しゃくっ、、
ふっかりしたているけど 噛みごたえのあるパンに マカロニのもっちり感、ヨーグルトのコクと酸味の中に シャリっとリンゴの甘さ……
ルヴァンはパンをブラウンシチューにつけて食べている。
「これ、なあに?」
ミツバがミルクと一緒に盆にのせてくれたカリカリの食べ物を見て カナルがミツバにたずねる。
「これは『竜田揚げ』っていうんだよ。今日は、、鯨かな。クジラの竜田揚げ」
「「クジラ!?」」
あのデカイ鯨!?
「ちょっと堅いとこもあるけど、美味しいよ」
「じゃあ食べる!これ食べたらクジラみたいに大きくなれるよね!」
なれないよ、カナル……
食べてみると、クジラの竜田揚げは意外と美味しかった。
馬肉とか鹿肉みたいな味がした。
「デザートもらってくるから」
そう言ってミツバは みかんを四個手にもって帰って来た。
ミツバは面倒見がいい。
いや、ここにいる全員が 下の者の面倒をみている。
貴族連中が行く『学校』ってこんな感じなんだろうか……
トトリはミツバが持ってきてくれたみかんをむいて口にいれる。
″シャリッ″
(半分凍ってる!!)
半分凍った冷凍みかんはシャリシャリ、甘酸っぱい。
「ミツバはさ、なんでそんな女みたいな格好してんの?」
おおっ!ルヴァン、いいこと聞いた!
オレが一番聞きたかった事!
「オレはさ、人化けが得意じゃないんだよね」
ミツバが恥ずかしそうに告白する。
「だから『ヒナ』を手本にして化けてるんだ」
「ヒナ?」
「ヨーコ様の巫女さ。ヒナはもっとかわいいんだ。今はドワーフの村にいるよ。会いたいな~ヒナに」
ミツバが手本にしている女の子がいるってこと!?
トトリの顔が期待に満ち、再びゆるむ。
トトリは『ヒナ』に会う日を夢見ながら 食事を終えた。
◇◆◇◆◇
サクラは『月影の間』で、入口にイシルの影が現れないかチラ見しながら リュックをごそごそと探る。
早くしないと、鉢合わせしてしまう!
明日の着替えと 歯ブラシ、タオル、あと……
″スルリ″
背後からサクラの脇の下を通り、手が出てきた。
(ひっ!?)
背後から伸びてきた手が ガッチリとサクラを捕らえる。
(お化け!?)
「何、してるんですか?」
(ひいいっ!)
すぐ耳元でイシルの声がした。
「い、い、い、イシルさんお帰りなさい お風呂に行ってたんじゃなかったんですか?」
サクラは何だか後ろめたくて振り向けない。
「サクラさんの気配がしたので 途中であがってきたんです」
なるほど!浴衣がちょっとしっとりしてるのはあわてて羽織ったんですね?
しかし、どこから入ってきたんですかイシルさん!?
気配がないのはいいとして、入口開きませんでしたよ?
「露天風呂は白狐達でいっぱいだったのでこの部屋の内風呂をいただいていました」
ああ!そっちのお風呂でしたか!!盲点!
くそっ、アスめ!ちゃんと言えよ!
「で、何してるんですか?」
なんだろう、この こっそり愛人に会いに行こうとしている旦那と それを見つけて遠回しにひき止めようとしている奥さん みたいな図は……
「あ、いや、、今シャナさんとヨーコ様と呑んでてですね、、今日はシャナさんと一緒に寝ようって話になって、、」
きゅうっ、と イシルがサクラを抱く手を強める。
「僕を置いていくんですか?」
(ひいぃぃ!)
うわー!何だこれ!?
仄暗い水の底からこんにちは。
冷や水を背中にかけられたように ぞぞっとしたよ?
いつものイシルさんじゃない!
幽霊にでも締め付けられてる気分です!
オーラが鬱々としてます、病んでますか!?イシルさん!?
「僕が言いすぎました すみません、理由も聞かずに」
イシルがサクラの背に顔を埋め 苦しそうに言葉を吐き出す。
「でも、怪我をしてほしくないんです。貴女に怪我を負わせてしまった自分が腹立たしいんです」
あわてて出てきたのだろう、イシルの髪の毛がまだ濡れていて、サクラの浴衣を濡らしている。
「……行かないで」
小さいけれど 悲痛な声。
イシルの切ない言葉が胸に刺さった。
結局好きな相手には弱いんだ。
「行かないで、サクラ」
更にきゅうっ、と抱きしめられる。
ギブギブ、イシルさん、ギブアップです!
物理的に行かせる気まったくないですよね?
それ以上しめられたら 私食べたもの出ちゃいます!!
「ぐふっ、イシルさん、髪乾かしましょうか、風邪引いちゃいますよ」




