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302/557

302. オーガの村 7 (脱出) ★

前回の前半部分の続きになります。


挿絵挿入しました(2/7)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m




″ガリガリガリ……″


サクラは薄暗い穴の中で 壁に石で絵を描き始めた。


「何描いてんの?魔方陣?」


魔方陣?そんなもの描けん。


「んー、、出口」


「はぁ?」


ルヴァンが「何言ってんのお前、、」と、バカにしたような声を出す。


ヨーコから貰った魔力は、一度くらいなら魔方陣が使えるとアスは言っていた。

一度くらいなら 人が運べる。

チョコレートを離れた部屋から掌に転送出来たのだ、きっとあの要領でやれば 出られるはずだ。

三人いっぺんに行けるかどうかは分からないが。


しかし、目標がないとイメージしにくい。

だからイメージしやすいよう、サクラは壁に絵を描いているのだ。


「よし、出来た」


「なんだ、ただの四角じゃねーか」


いちいち癪にさわる言い方をしてくれるなぁ、ルヴァンよ。

今の言葉の裏には「頭大丈夫か?」が含まれてたよね?

お答えすれば、さっき頭打ったから大丈夫ではないよ。


「違うよ、ちゃんと見てよ、ドアノブもあるでしょ」


長方形の右端に丸が描いてある。

そんなことで フンっ、とドヤ顔をするサクラも大人げない。


サクラが描いたのは『ドア』

このドアと、村にあるドアをくっつけるイメージだ。

一番近くて助けが呼べそうな場所と言えば、、


(シャナさんの麺工房だな)


あそこにはイイ(ガタイ)をした男衆(ヤロー共)がたくさんいるから、穴堀りくらいちゃちゃっと出来るだろう。

そして、シャナは勘がいいから、気づいてくれるはず。

もし、三人転送は無理でも、子供二人ならサクラ一人分(体重)もないだろうから、脱出できると思う。

サクラのために助けを呼んでくれるかどうかは疑問が残るが……


決して犠牲の精神があるわけではない。

サクラだってこんなとこでくたばるのはゴメンだ。

だが、数日後にはどうせ神に呼ばれる。

死にかけてても神がなんとかしてくれるだろう。

これぞ本当の神頼み。なんちゃって。


(入り口は人の出入りが激しいから、繋げるなら、工房の奥の扉)


ど○でもドア作戦開始!!


サクラは目の前の扉もどきとシャナの麺工房の休憩室への扉を思い浮かべ、集中する。


(むんっ、、)


集中するサクラの周りに キラキラと銀色に輝く光がサクラの内側から溢れだした。


「なんだ、、これ、、魔力?」

「キレイ……」


星屑のような光に包まれるサクラに ルヴァンとカナルが魅入っている。

サクラが手を前にかざすと、銀色の光がドアモドキに注がれた。


ドアモドキと、シャナの麺工房の扉。

その二つの扉を、紙の上に書いた()()に見立てて、紙を曲げてくっつけるようにイメージすると――


″ぐにゃり″


(つながった!)


手応えを感じ、サクラは銀色の光に包まれたドアモドキに手を突っ込んだ。


″スッ、、″


「うわっ!手が中に入った!!」

「おばちゃん、凄いね~」


カナル、水辺で「おねえさん」と呼んでくれたのは毒リンゴを渡すためだったのね、、いいけどさ。

手探りで表を探ってみると、、うん、障害物は無さそうだ。


「外に出られるよ!ルヴァン、カナル、くぐって!」


「えっ?これを?」


「早く!つながってるうちに」


カナルがサクラを見上げる。


「おばちゃんは?」


「後で行くから」


「う、、」


カナルがサクラにきゅっと抱きつく。


「一緒じゃなきゃ、いやだ」


うるうるの瞳でサクラを見上げる。


ええー!!なにこれかわいい!!

くっ、この非常時に何の御褒美!?ごちそうさまです!だけどそんな場合じゃないっ!


「ルヴァン、カナルを連れて、早く!」


「……」


「早く!魔力が持たないよ!」


「何でお前は先に行かねーんだよ」


「三人出られるかわからないから、先に出て!」


「向こう側が大丈夫だって保証はねーだろ、お前が騙してるかもしんねーし」


はいぃ!?

この期に及んでまだ信用されてない!?

どんだけひねくれてるんだこのガキは!!


「だから……」


ルヴァンはサクラの首に手を回し きゅっと抱きつく。


「一緒じゃなきゃ、ダメだ」


うわあぁ///なんじゃこりゃ~!!

可愛いなお前ら!!


「ん?」


三人団子になってると、サクラの突っ込んでいた手を向こう側で誰かが掴んだ。


″グイッ″


「うわあぁ!!」


サクラを掴んだ手が 思いっきりサクラを引っぱる。


″ズルズルッ、、″


「ひやぁ!!」

「わあ!」

「うわっ!」


サクラとサクラにくっついていたルヴァンとカナルは 芋づる式に銀色の光の中へと引きずり込まれた。


″サクラさん″


キラキラと眩しい銀の世界。

こんな時までイシルの声が、、幻聴が聞こえるなんて、、

末期だ。


銀色の光に 赤紫の光が混ざる。

花吹雪のようで キレイ……


銀色の光が赤紫に圧倒され、次第に赤紫一色になった。


「へ?」


赤紫の光がおさまると、視界がひらけ、目の前に見えるのは 沢山の人の顔!

見覚えのある麺工房の男衆(ヤロー共)と、シャナの姿。

そして――


「サクラさん」


今度こそ本物のイシルの声、イシルの姿。


「イシルさん」


心配顔のイシルはサクラの腕を掴んでいた。


(イシルさんが気づいて 引っ張り出してくれたんだ)


赤紫はイシルの魔力の色。


「ルヴァン!カナル!」


突如現れたルヴァンとカナルに、トトリが二人を見て駆け寄ってくる。


「トトリ、お前、何でここに、、」

「トトリ兄ちゃん!」

「よかった!無事でよかった!うぐぅ」

「泣くなよ、トトリ」

「だって、、ひぐっ、」


「彼はここに助けを求めに来たんです。何でもするから、あなた達を助けてほしい、と」


イシルがトトリにかわって説明した。


そうだったんだ。

トトリ、君も友達思いのいい子じゃないか!


「マフ達は?」


「……アザミ野に、行った。助けてって言ったんだけど殴られて、、」


トトリはその先を濁し、しゅんとする。

ルヴァンはそれだけで察したようだった。

捨てられたのだ。


「イシルさん、ありがとうござ、、いてて、、」


サクラが頭をおさえる。


「サクラさん、怪我してるんですか!?」


「いや、ちょっと 安心したらあちこち痛みを思い出して」


イシルは表情をなくし、


″ひょいっ″


サクラをお姫様だっこで抱えあげ、


「あわわわ///イシルさん!ちょっと、、」


みんな見てる!!


「五月蝿い」


ええっ!!御立腹!?


「シャナ、休憩室借ります。その子達の治療は任せましたよ」


「……ええ」


″ぱたん″


静かな音と共に イシルはサクラを連れて休憩室に消えた。


「大事ないか、シャナ」

「あれ?子ブタちゃんとイシルは?」


サクラとイシルが扉の奥に消えた後、入れ違いにひょっこり ヨーコとアスが顔を出した。

サクラの力を察知して 様子を見に来たようだ。


シャナはカナルに回復魔法をかけながら 無言で休憩室の扉を指差す。


「拉致られたのね」


アスは扉の向こうを見透かすように目を細めると カナルの世話をしているシャナに再び目をむけた。


「あんたも大概、、複雑な()してるわね」


「……」





挿絵(By みてみん)





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