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299. オーガの村 5 (失せ物) ☆

Ichen様よりFAいただきましたので挿入致しました(2/3)

ゴルゴン族の男!ありがとうございます!

第三の目の刺青と蠢く蛇がセクシー!そして腕が( *´艸`)




「泣かなくて良いよ、お嬢さん、その()()()は見つかるから」


サクラが下を向いて失くしたペンダントを探していると 怪しい薬屋の店主、ゴルゴン族の男が サクラに声をかけてきた。

サクラはハッと顔をあげる。

サクラが男を見ると、包帯で隠した目元の奥にある瞳が サクラを見透かすようにじっと見つめていた。


「白い薔薇のブローチ……いや、ペンダントかな」


(あたり!!)


知っている筈がないのに 男は サクラの失くしたものをぴたりと言い当てた。


ゴルゴン族は 瞳を閉ざすことにより『少し前』と『少し先』が見えるという。

その彼が 失せ物は見つかると言っている。

イシルの白薔薇のペンダントは 見つかる と。


「どこに!?」


サクラは藁をもすがる気持ちでゴルゴン族の男に駆け寄った。


「そんなに大切なものか?」


サクラの剣幕に男がクスリと笑う。

思わず笑ってしまうほど サクラの顔が必死だったのだ。

サクラは商品台に手をつき、身を乗り出し 男に迫る。


「大切です、とても、、」


店主は食らいつきそうなほど間近に迫るサクラの顔に手を伸ばすと サクラの目元を親指で拭い「でも」と 言葉を続けた。


「それを見つけても 泣いている君が見える」


予言めいた男の言葉。


「それでも 見つけたいか?」


「見つけたいです!!」


サクラは即答する。

自分が泣くのはかまわない、そんなことより、イシルをがっかりさせたくない!


「ならば行くといい。村の入口、それを持っている人間の子供が見える」


「ありがとうございます!」


サクラはゴルゴン族の男に頭を下げると 踵を返し、村の入口に向かおうとして、、思いとどまった。


「あの、お代は、、」


占い師なら見料がいるはずだ。

もってないけど。


「俺の()()()が当たったらでいいよ」


後払いでいいの!?助かります!


「はい!また来ます!!」


ありがとうと 礼を言い、今度こそサクラは 村の入口に向かった。


「また 来れたらいいね」


男は呟いて 再び仕事に戻った。







挿絵(By みてみん)

Ichen様よりFAいただきました!

ゴルゴン族の男







◇◆◇◆◇





サクラは走る。

村の入口に向かって。


この村にいるのは オーガの子供ばかりだ。

人間の子供なんて 滅多にみかけない。

いるとしたら……


(来るときに会った盗賊家族の三人の子供!)


サクラは走る。

息が切れ、心臓が口から飛び出しそうだが、必死で走る。


(露店市場に盗賊家族の店はなかった、早く行かないと村を出てしまうかもしれない)


この歳になって全力疾走とかきついっす!

足がガクガクする。


(うおおぉぉ!!)


できる限り早く、もつれそうな足を回転させ、地面を蹴る。

シャナの麺工房を通り越し、村の入口、門前に――


(いた!)


村の門前で待ちぼうけの三人の男の子がいるのが見えた。

サクラに水辺でリンゴをくれた小さな子供と、小学四年生くらいの男の子が二人。

一人は紺色のコートを羽織り、もう一人は赤いベストを着ている。

他の家族はおらず、馬車もまだ来ていない。


(間に合った!)


紺色のコートの男の子は 手持ちぶさたに コインのようなものを上に弾いては受け止め、弾いては受け止めを繰り返している。

キラリと光る 小さなチャーム。

チェーンはついていないけど、あれは、、


(私のペンダント!!)


サクラは子供達に近寄ると、大人げなく三人にくってかかった。


「返して!!」


「うわっ!」

「びっくりした!」

「なんだよ!?」


「それは私のよ、返して!」


ペンダントを弾いていた 紺色のコートの男の子が 侮蔑を含んだ視線をサクラになげる、、多分この子がボスだ。


「これはオレが拾ったんだからオレのだよ」


「私が落としたのよ」


サクラの言葉に もう一人の、ボスと同じくらいの歳の 赤いベストを着た男の子が横やりを入れる。


「えー?いつ?どこで?何時、何分、何十、何秒?」


うー、憎たらしい、、異世界でも子供の言うことは一緒かよ!?


「今日、オーガの村で、朝から今までの間に私が落しましたっ!!返してっ!」


「それが人に物を頼む態度かよ」


ボス格の男の子がニヤニヤとサクラを見て嗤う。

ぬぐぐ、、性格ひんまがってるな、、

しかし、そうだ。

盗賊家族という先入観から頭ごなしに食って掛かった自分も悪い。


「すみません、それは私のです。返してください」


サクラは子供達に頭を下げた。

お願い、返して……


「おばさん、プライドないの?」


すぐに頭をさげたサクラにボス格の男の子が呆れた声を出した。


プライドで腹はふくれない。

頭ひとつ下げてすむなら、いくらだって下げる。


「プライドは君にあげるから、返してください、お願いします 御礼もさせていただきます。だから、返してください」


「……」


ボス格の紺のコートの男の子が黙る。

しかし、その隣から またもや、同じくらいの歳の男の子が口を出してきた。


「おばさんのものだって証拠でもあんのかよ」


まったく、小賢しいわ!

言いたくなかったが、、


「あるよ、証拠」


「「えっ!?」」


子供達が驚く。


「裏に、、マークが刻んであるんだから」


ペンダントトップを持つ子供が 裏返してみる。


「なんだコレ、キズじゃねーのかよ」


「三日月よ」


月のマーク。

恥ずかしいから言いたくはなかったが 仕方がない。

イシルをいつも側に感じていたくて、(イシル)のマークを サクラが自分で刻んだのだ。

乙女チックだろーが、ダサかろーが、女々しかろーが、、何とでも言うがいい!

誰にも迷惑かけていない、(ひそ)かなサクラの想いだ。


「……返せ」


サクラの奇妙な気迫に 子供達が後ずさる。

下手にでてればいい気になって、、


「返しなさい!」


サクラの中で感情が爆発し、言葉と共に子供達に踊りかかった。


「「うわっ!鬼ババだ――!!」」


子供達が一斉に走り出す。


「待てっ!!」


「「うわ~~!!」」


鬼ごっこ開始である。


子供達は ペンダントトップを バスケットボールの要領でパスし合い、サクラを翻弄する。

逃げるすれ違いざまに スイッチしたり、投げる振りしてフェイクを入れたり。


慣れている。

スリの達人も真っ青、チームができている。


しかし、サクラは見失わない。

見失うもんですか!!


「何で誰が持ってるかわかるんだよ!?」


子供達の方が驚く。

サクラの執念深さに。

映画『タ◯ミネーター』の『T-1000』のように(←古い) 正確に誰が持っているか かぎ分ける。


「くそっ!」

「どうする、ルヴァン」

「ルヴァン」


このままではつかまると思った子供達は――


「行くぞ!」

「まって、、」

「こっちだ カナル!」


村の外へと走って逃げた。


「待ちなさいっ!」


サクラも追いかけて 村の外へと飛び出した。


子供達は村を飛び出すと 隠れやすい森へと飛び込む。

躊躇してなんかいられない、迷子になったらランに迎えに来てもらえばいい!

今は、見失わないことが第一だ。


しかし、、

すばしっこい子供達は すぐに緑の中にまぎれてしまった。


″シーン……″


(どこに、隠れた?)


サクラは慎重にあたりを見回した。

茂みと木ばかり。


(木の上に上る時間なんかなかったから、この茂みの中にいるはず、こうなったら、、)


サクラは魔法を発動する。

いや、銀色魔法は使わないよ?

イシルと約束をしたからね。

生活魔法で使えるのはこの場合、、風魔法!


「春いっちばーん!!」


サクラは風魔法を発動する。


″そよそよそよ……″


心地いい風……

うん、だよね、所詮サクラの生活魔法は 洗濯物を乾かす程度の風しか出ない。

春一番とは程遠い。


しかし、それで十分。

さわさわと揺れる茂みをサクラは見つめる。


そよそよとそよぐ風に茂みが揺れて、、


緑の間に見えるもの……


自然界にない、不自然な紺


子供の一人が着ていた上着の色だ。


(見つけた!)


サクラは 紺色めがけて飛びかかった。


「うわっ!」

「ひっ!」


「返しなさい!」


隠れていたのは水辺でサクラにリンゴを渡してきた小さな男の子と はじめにペンダントをもっていた ボス格の紺色コートを着た男の子。


二人の子供は サクラから逃げて後ろに下がった。


″ズズッ……″


二人の子供が下がった足元の地面が滑り、、


「えっ!?」


二人の子供が滑り落ちる。


″はしっ″


サクラは咄嗟に手を伸ばし、二人の男の子を掴んだ。


「お前、、」

「おばさん、、」


″ズルッ″


しかし、二人を支えきれず、サクラは男の子二人と共に滑り落ちてしまう。


「「うわああああ!!」」


「ルヴァン!カナル!!」


残った男の子の呼ぶ声が森に響く。


「誰か、、誰か呼んでこなきゃ、、」


赤いベストを着た男の子は 青い顔をして オーガの村へと人を呼びに行った。


「いてててて……」


サクラは滑り落ちた先で身をおこす。


″ゴチン″


「あいたっ!」


どうやら穴の中のようで 頭を打った。

暗くてよく見えない。


すぐ隣で、ぽうっ、と、蝋燭の光程の灯りが灯り、男の子の顔が見えた。


「カナル、大丈夫か?」

「うん」


小さい子が「カナル」

青いコートの男の子が「ルヴァン」


ルヴァンは火魔法を使えるらしく、蝋燭の灯りは ルヴァンの魔法によるものだった。


小さな穴は何かの巣穴なのか、自然に出来た空間なのかわからないが、立ち上がることは出来ない高さで、三人でいっぱいだった。


「ルヴァン、、でいいかな?名前」


サクラが 青いコートの男の子に聞く。

ルヴァンはサクラをチラッと見ただけで返事はしない。


「火……消してくれる?」


サクラは、落ちた方向を見つめている。

サクラ達が落ちてきた穴の入口は――


土砂で塞がっていた。


(生き埋めだあぁ!!)








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― 新着の感想 ―
[良い点] 挿絵に使って頂けるとは、感無量っ!! 有難うございます~  まさかお兄さんの登場場面に絵を入れて下さるとは~ お兄さんが、見えない時間を見る時、こんな感じかなと思いました。 挿絵にして下…
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