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298. オーガの村 4 (露店市場) ★

挿絵挿入(1/20)

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襖の向こうにサクラがいる。

サクラとイシルを隔てているのは 薄い紙の戸板のみ。


好きな人がすぐ隣に寝ていると思うと それだけで心が浮き立つ。

側にいるとおもうだけで 気になって眠れない。


なのに、、


「すかーっ」


今日もサクラはぐっすり 眠っていた。


(サクラさんは そうでもないのかな)


一日イシルについて歩き回ったからつかれたのだろう。

いや、昨日の夜もぐっすり眠っていた。寝つきが良すぎる。


(……憎らしい)


甘い気持ちを噛みしめていたのは自分だけかと思うと つれないサクラが憎らしい。


それでも 顔が綻んでしまう。

襖の向こうからすー、すー、と、一定のリズムでサクラの寝息が聞こえてくるから。


イシルは顔を見たくなり うっすら襖を開けてみる。


(……やっぱり)


ちょっぴり口を開けて寝ているサクラの寝顔。

イシルは寝ているサクラの枕元にしゃがむと サクラのアゴをかくんと閉じさせた。


「無防備なのは寝顔だけにしてほしいですよ」


隣に異性がいる自覚がないのか?

イシルはサクラの浴衣の襟と裾の合わせを直し、布団から出ている手足をしまい、首まで布団をかけてやる。


(明日の朝も狐達が来る前に起こさなくては)


朝、布団をたたみに来た狐達に あられもない浴衣姿を見られないように。


イシルはくしゃっとサクラの頭をひと撫でし、額に祝福をおとすと 部屋へと戻る。


すー、すー、と 隣の部屋で眠るサクラの心地よい寝息を聞きながら 幸せな眠りについた。





◇◆◇◆◇





案の定、次の日の朝、サクラは盛大なる筋肉痛にみまわれた。

全身がビキビキ痛む。

ふくらはぎ、太もも、尻と、下半身は勿論の事、腕、肩、背中、アバラ、ミゾオチ、背筋と、上半身もイタイ!

歩くってこんなに全身の筋肉使ってるんですね!


「今日はやめておきますか?」


「いえ、行きます」


筋肉痛は動けば治る!

サクラは今日もイシルについてオーガの村へと出かけて行った。

Let's ウォーキング!


今日もシャナの麺工房から始まり、豆腐製造所、醤油製造所、味噌製造所をまわる。


歩いているうちに体の痛みもほぐれてきたし、一度通った道だから歩きやすかった。

ペース配分も考えて、各製造所では無理してイシルについて回らず、入口付近で休憩させてもらったりもした。

今日はいい感じだ。


お昼は味噌製造所で茄子味噌炒めと麦飯をいただいた。

味噌の出来も上々のようだ。


味噌製造所までまわりきって、シャナの麺工房へと露店市場を抜けて帰る。


昨日は並んでいる品物ばかりに目を向けていたが、さすが異世界、露店市場にはいろんな種族がいる。

人間、ドワーフ、オーガ、ハーフリング、獣人、、

この『獣人』が 実に魅力的だ。


メイやメリーさんのように『獣』が主体の人は一発でわかる。

獅子の獣人、鷹の獣人、ワニの獣人、、サスガ戦士の集まる村、強そうな獣人が多いですね!


『獣人』は親が兎だから兎の獣人が生まれるわけではないようで、兎の親から虎の獣人が生まれることもあるそうだ。

まったく『獣』の外見をせず、体の一部だったり、能力だけを持つ『人』タイプの『獣人』もまれにいる。


「あの、翼がある人も 獣人ですか?」


サクラはイシルに質問する。


「あれはハーピー族ですね」


ランやヨーコのように『人間』の顔を持ち、翼の先に小さな手を持つハーピー。

ボディーは人型で 腰から下が鳥、美しく立派な尾を携えている。


ハーピー族は『人』が主体の獣人。

こちらはハーピーだけの『種族』のようで、同じタイプの子供しか産まれない。

サクラには見分けがつかない。

現世でも、顔を見ただけではどこの国の人かわからないのとかわらないか。


サクラとイシルは昨日の怪しい薬屋の前を通りかかる。


(うおぉ///)


サクラはそこに座る人物を見て 釘付けになった。

昨日は店先の商品と盗賊家族に気をとられスルーしてしまったが、精力剤系漢方薬を全面に押し出している露店の店主は とてもイイカラダをしていた。

イケメンボディーの持ち主ですね。

ここの薬売れそうですよ、そんなカラダしていたら。

匂いたつような男の色香漂う細マッチョ!

薬の効き目抜群!?

腕の筋肉、さわってみたい、

お腹の腹筋、オイシソウ……


「サクラさん、見すぎです」


「すみません///」


「まったく……」

(僕が脱いだら逃げるくせに)


いやいや、イシルさん、そんな呆れたジト目で見ないでください、決してお兄さんのイケメンボディーだけに気をとられていたわけではないですよ?

だって、あれ、、あの頭は、、


イケメンボディーの店主の頭部では 髪がうにょうにょ動いていた。

蛇だ。


(髪が蛇って、メデューサですか!?おまけに包帯で目隠ししてるとか、、)


「あの人は、蛇の獣人ですか?」


「彼はゴルゴン族のようですね」


ゴルゴン、、やっぱり。


「もしかして、目を見たものは石になる、とか?」


「よく知ってますね」


ギリシャ神話に出てくるゴルゴーン。

大地の女神ガイアが巨人の味方として産み出したゴルゴン。(ヒュギーヌス説では男だった)

ゴルゴンの娘、三姉妹で有名なメデューサは、その美しさを女神アテナと競ったため、女神の怒りに触れ、三姉妹とも自慢の髪を蛇に変えられてしまった。

その目を見たものは、恐怖のためか、美しさのためか、身を固くして石になってしまうという。


「じゃあ、大変ですね、ずっと目隠ししたまま生活するなんて」


「そうでもないようですよ、彼らには 彼らのかわりに物を見てくれる蛇達がいますし、石化防止解除の薬も、魔法もありますから 不自由はないと思います」


「なるほど」


ゴルゴンの石化を解くには『ゴルゴンの流した涙』が有効だ。

本人達が売ってるってどうよ!?ごめんね って渡すのか?

異世界においては『石化』って 大した問題ではないのね。


「それに、彼らには 瞳を閉じることで別のものを見る『力』が備わるんです」


「『力』ですか」


「ええ。彼らには『少し前と少し先』が見えるんです」


「過去と未来ってことですか?」


「遠い未来は見えないようですが、その能力を生かして 薬師や失せ物探し、占いを生業としている者が多いですね」


過去を探り 病の原因を探り 薬を調合する。

未来を見て、最適の薬を売り付ける、まさに名薬師!


この世界の者でない私の未来も見えるのだろうか……


そう言えば 夢で会った古竜(エンシェントドラゴン)のラプラスも ずっと瞳を閉じてこの世界を見つめていた。

この世界の全てを記憶する存在 ラプラス、元気かなぁ、、


漢方薬の露店の先で武器を売っていた家族風盗賊は今日はいなかった。

もう、旅立ったのかもしれない。


「イシルさーん!」


露店市場の出口付近で サクラとイシルは オーガの村人に声をかけられた。


「よかった、まだ帰ってなかった」


「どうしたんですか、イサミ」


イサミと呼ばれた男は、確か 醤油製造所にいた人だ。


「ちょっと、発酵の具合が違う()があって、見てもらうのを忘れてたんですよ、よかったら見てもらえませんかね」


イシルはちらりとサクラを見る。


「サクラさん、歩けますか?」


醤油製造所、一番遠いよね?


「いや、ちょっと……私、先にシャナさんの所に行ってますよ」


「それはダメです」


え?何で?


イシルはふむ、と考えて サクラに近づく。


「わっ!イシルさん、ストップ!ストップ!」


イシルがサクラを抱えようとしたので、サクラは後退りイシルに待ったをかけた。


「こんな人混みで、無理です///」


サクラはイシルを全力で拒否する。

恥ずか死ぬわ!

ドワーフの村で手繋ぎでさえニヤニヤ、ニマニマされてるのに、人前で抱っこちゃんなんて、この先オーガの村歩けなくなる!!


「ここで待ってますから」


露店の合間に人一人座れそうなスペースを見つけてサクラが座り込んだ。


「ここでですか?」


「ああ、ここなら隣はキチザの店だから安心だな」


どうやら隣の露店はイサミの知り合いの店ようで、イサミがキチザに話をつけてくれ、イシルも渋々納得する。


「じゃあ、ちょっと行ってきますが、ここにいてくださいね?」


イシルは心配を拭えないようだ。

どんだけ子供扱いだよ。


「はい、何かあったらランを呼びますから」


「すぐ戻ってきます」


イシルはサクラにそう告げると――


「えっ?」


ひょいっとイサミを抱えあげた。


「うわああああ///」


イサミが恥ずかしくてわたわたと暴れるが、イシルは構わずガッチリイサミを抱えて逃がさない。


行きます、とイシルが一声かけると、イサミは顔を真っ赤にして両手で顔をおおった。

イシルはイサミを抱えたまま、ぴょん、ぴょん、ぴょんっと、建物を飛び越えながら 醤油製造所へと消えていった。


「う――わ――――///」


イサミの悲鳴が響き渡り 小さくなっていく。


(ごめんよ、イサミさん)


サクラがああなる筈だった。

サクラはイサミの無事を祈り合掌した。


(あれ?)


胸元で手を合わせ イサミの無事を祈るサクラは、、


(ウソ!)


胸元につけているはずのペンダントがないことに気づいた。


(ないっ!?)


ローズの町でイシルからもらった白薔薇のペンダント、今朝起きて着替える時につけたはずなのに ない!


(落としちゃった!?)


周りを探すが見当たらない。


「すみません、キチザさん、私落とし物したみたいで、ちょっと探してきます」


「え?おい、嬢ちゃん!」


「すぐ戻ります!」


サクラは露店市場の中を 白薔薇のペンダントを探して引き返した。


(あれを失くすなんて)


サクラは半泣きになりながら 人混みの中を下を向きキョロキョロ歩く。


(イシルさんが私のために選んでくれたのに)


同じものなんてない。

例えまったく同じものを買ったとしても、それは()()()()でしかない


(イシルさんが戻る前に見つけないと)


失くしてしまったなんて イシルに知られたくない。

涙がこぼれ落ちそうになった時――


「探し物かい、お嬢さん」


声をかけられた。

怪しい精力剤漢方薬のお店の目の前だった。




挿絵(By みてみん)





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― 新着の感想 ―
[良い点] お兄さんがカッチョイイ~!! 精力剤を売っているっていうのも(笑)このスタイルで、この腕で・・・うーん。素敵。 毎回挿絵を楽しんでおります。とっても細かくて、光景をサクラちゃんの目で見てい…
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