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287. 迦 寓 屋 8 (ピンポ~ン)





「サクラ、みーっけ!」

「サクラ!ありがとう!」

「僕にもちょうだい!」

「ちょっと苦いけど甘いのありがとう!」

「僕もらってないよ!」

「サクラ!」

「サクラ!」


部屋に戻ろうとしたサクラは10人くらいの小学生~中学生くらいまでの男の子達に囲まれた。


「「ぎぶみーちょこれいと!!!」」


サクラが庭園でチョコをお供えした白狐達だ。

イシルは白狐達の勢いに サクラの隣から押し出される。


「あげるから、ちょ、待って……」


サクラはもみくちゃにされながらチョコを一人づつに渡す。


「この前来たときの、ピザも、ありがとう!」

「おいなりさんも美味しいの!あれ、好き!」


「うん、よかった」


サクラはなでなでと 白狐達の頭を撫でる。


「会いたかったの、()()()()


(かっ、可愛い、、()が言えないのね///)

キツネ耳をぴこぴこさせながらにしゃりと笑う白狐はユーリやトムと同じ一年生くらいか。


「ずっと お礼が言いたかった///」


顔を赤らめながら、むきゅっ、と サクラに抱きついたのは 四年生くらい?

サクラはうん、うん、と頭をなでる。


「サクラ!」

「サクラ~」

「サクラ///」


「ひゃあ!」


ふたたびもみくちゃだ。


「ちょ、一人づつ、。」


可愛いけれど、いっぺんに相手なんて出来ませんよ?

聖徳太子じゃないんだから!!


「サクラ、いい匂いがする///」


そう言った白狐は中学生くらいか、、


″カツーン……″


軽く何かが跳ねるような音が休憩ホールに響く。


″カツーン……カツーン″


ピクリと白狐達の動きがとまり、全員が一斉に音のするほうを向いた。


″カツーン……″


(助かった)


白狐達はその音を出すものを食い入るように見つめている。


(何?)


″カツーン……″


音を出してるのはイシルだ。

白狐達に弾き出されたイシルが白い玉をテーブルに落としている音だった。


(ピンポン玉?)


″カツーン、パシッ″


イシルはピンポン玉をテーブルに落とし、跳ね返ってきた玉をパシンと握り、手のひらに隠した。


白狐達は前のめりになり、ひょい、ひょい、と体を揺らしながらイシルの手の中を伺っている。

白い玉を探しているようだ。


イシルは再び白狐達の目の前にピンポン玉を出すと すーっ、と、右から左へと見せつけるように移動させた。

それにつられて 白狐たちの顔も右から左へ すーっ……


白狐達がピンポン玉に見入っている。


イシルは懐から大きなしゃもじのようなラケットを取り出すと、グリップを握り 白いボールを机に落とし、跳ね返ってきたところを 壁に向かって打ちつけた――


″スコーン″


(卓球!?)


卓球の壁打ちである。

イシルは跳ね返って来てワンバウンドした玉を再び打つ。


″パシュッ″


綺麗なフォーム、、

卓球の玉を打つ姿さえカッコいいですよ、イシルさん!


″カコン、トンッ……パシッ″″


イシルが壁とラリーを繰り返し行うと、それに合わせて玉を追う白狐達の首も右へ 左へと一斉に動く。

あれだ、動物に鏡の反射の光を見せて揺らすと全員がそれに合わせて首を振る感じ。

手が出そうになっている者もいる。


(かわいい~!!踊ってるみたい)


イシルはひととおりやり方見せつけると、中学生くらいの白狐にラケットを渡した。

テーブルを二つくっつけて説明する。


「二人で遊べます。テーブルひとつが君の陣地です。必ず自陣と敵陣に一度バウンドさせて打ってください」


わーっ、と白狐達が机のまわりに集まってきた。

ネットはないが、遊びでラリーをやるなら ネットが無くても出来るだろう。

イシルは一度 白狐の相手をしてラリーして見せると、ぽかんとしているサクラの元へと歩いてきた。


「行きましょう」


サクラの手をとって歩き出す。


「イシルさん、手を……」


無駄だと思うが言ってみる。


「嫌ですよ」


が、言葉を被された上に 更に強く握られてしまった。


「手を離すとすぐに邪魔が入りますから」


あ、ちょっとムッとしてる。


「優しくしすぎです」


「すみません」


でも、子供だし、という言葉は飲み込む。

倍返しで返ってくるのがみえているから。

それに、、拗ねた感じのイシルがかわいい。


「イシルさん、さっきのあれは?」


ああ、とイシルがちょっぴり笑う。


「キツネは犬と同族ですからね、狩猟本能で 動くものに反応するんです」


成る程、キツネもボールを追いかけるなんて知らなかった。


「卓球もシズエさんが?」


「ええ、バドミントンはキツすぎると言って続かなかったのでで、室内でも出来る運動として卓球を選んだようでした」


温泉に卓球、流行りそう。

てか、定番?





◇◆◇◆◇





『月影の間』につくと イシルは座布団にあぐらをかいて座った。


「お茶入れますね」


お茶をいれに行きたいのだが、イシルがサクラの手を握ったまま離さない。


「イシルさん、お茶を……」


「お茶はいいので座ってください」


イシルが逆の手で座布団を進めてきたので、サクラはその上に座る。

正座、苦手なんですけど……


イシルはサクラが隣に座ると ようやくサクラの手を離し、

何やら 亜空間ボックスから取り出した。


「えと、、それは……」


イシルが亜空間ボックスから取り出したものを見てサクラが驚く。

イシルが手に握っているもの、それは――


(耳かき!?)


白いほわほわのついた お馴染みの竹製の耳かきだった。

イシルはサクラの側の自分の腿をポンポンと叩く。


(え″っ!?)


「いらっしゃい」


()()に頭を乗せろと いい笑顔でサクラを誘う。


(私がやられるの!?)


「イヤイヤイヤイヤ」


ずざっ、とサクラが身を後ろに引いた。

やってあげるならまだしも、やってもらうとかあり得ない!!

そんなことされたら……


(骨抜きですよ!?)


「おいで、サクラ」


超絶甘い笑顔と声。

うーわー!!

トリミングの次は耳かき!?

今日は甘やかし作戦ですか!?

それもシズエ殿の入れ知恵ですかぁ~!?


「私がイシルさんのをやりますよ」


イシルの手から耳かきを奪おうと手を伸ばすが、ひょいっ、とかわされる。


「私、耳弱いんですよ~」


「知ってます」


サクラは伸ばした腕をイシルにとられ、ぽふん、と体を倒された。


「ひゃ///」


イシルの足に頭を乗せられる。


「その可愛い声が聞きたいんです」


(ひいいぃぃ///)


サクラの耳がよく見えるように、ついっ、と イシルが指でサクラの髪を耳にかけた。


「っ///」


つーっ、と耳の縁をなで、ちょっと耳を引き、ふっーと息を吹きかける。


「うくっ///」


サクラが身を固くする。


「リラックスしてください」


そんなこと言われても、恥ずかしいやら、照れくさいやら、、

イシルからはお風呂上がりのいい匂いがするし、心臓はバクバクするし、顔はあついし、、

もう 何がなんだがわからない。


「力を抜いて」


「は、はい///」


「いれますよ?」


イシルがクスリと笑い、耳かきをサクラの耳元へと持っていく――――


「お食事お持ちいたしましたのですじゃ~」


入り口で声がして、サクラはガバッと起き上がる。


″ガラッ″


お膳を持ったセイヤが入ってきた。


(助かった!!)
















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― 新着の感想 ―
[良い点] 白狐48が可愛すぎてノックアウトです…… アカン、私この旅館行ったら萌え死にます…… ちっちゃい子わちゃわちゃ可愛すぎです……!! イシルさん、犬科のみなさん扱いに慣れていらっしゃるご様…
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