表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
283/557

283. 迦 寓 屋 5 (庭園めぐり) ◎

後書きにイメージ写真挿入(2021/9/14)




三月のうららかな日差しの中、『迦寓屋(かぐや)』の日本庭園の茶屋で 炊き込みご飯をご馳走になったサクラとアスは、店先の縁台で 食後に セイヤのいれてくれた笹茶をまったり いっぷく中。


「う~ん、和む~」


小腹が満たされたら欲しくなるのが甘いもの。


「でも、このシチュエーション、チョコじゃないんだよね……」


「そうなの?」


この時代劇の設定のような景色の中にあって、食べたいのはチョコじゃないでしょ。


「こういう雰囲気の中で飲むお茶にはさ、やっぱり『和菓子』が合うんだよね」


串に刺さった団子が食べたいなぁ……

甘タレをつけたみたらし団子、小豆あんを載せたあん団子、黒胡麻と砂糖をまぶしたごま団子、ずんだ、きなこ、小豆生クリームとかも好き!


(くはぁ///食べたい!)


もちもち香ばしくて、ほんのり団子本来の甘味を感じらる、甘くない素焼きだんごもいいなぁ~

醤油で味付けした醤油だんご、それに七味をかけてピリ辛団子、のりを巻いて磯部巻き団子、だんご♪ダンゴ♪だんご♪ダンゴ♪


()()、イシルに作ってもらえばいいじゃない」


「イシルさんを何だと思ってるんだ、アスは」


「子ブタちゃんのためなら はりきって作ってくれると思うけど?」


「和菓子かぁ」


異世界には『米』がない。

米系の粉から作られる和菓子は作れないということだ。


「お団子は無理かな」


次に現世に行ったら米の粉以外で作れる団子を調べるか。

小麦粉、小麦粉で作られる和菓子は……どや焼き、とか たい焼き、とか、まんじゅう……


「あ!温泉まんじゅう」


温泉水を使用し、重曹をくわえ、温泉の熱で蒸す 炭酸まんじゅうがあるじゃないか。

白いままもいいけど黒糖で黒蜜を作れば 生地に混ぜて茶まんじゅうにできる。

ふっかり、ふわふわの()に、甘く酷のあるあんこ……


「ん~、なるほど、ダンゴも温泉まんじゅうもお茶に合いそうね~それですすめてよ。アタシ、食べたい♪」


アスがサクラの想像した味覚を共有しておねだりする。


(あんこって作れるのかな?そもそも小豆ってあるの?)


なければ栗あんや芋あんでもいい。

次に現世に行ったら現物を買ってこよう。

イシルなら味がわかれば似たようなものが作れる。


「言っとくけど 和菓子は糖質高めだから私は食べられないからね?」


「え――――っ!!」


サクラが食べられなければアスは味わえない。


そんなことお構い無く、サクラはヨーコへの提案を一つ頭に書き留めた。


ちなみに、温泉宿の部屋にお菓子が置いてあるのは、温泉にはいる前に、お菓子を食べて血糖値を上げ、安全に入浴できるようにするための意味もあるそうだ。





◇◆◇◆◇





茶屋の裏手にも白狐の像があったので、チョコをお供えして奥へとすすむと、赤い鳥居が見え、ヨーコの神殿への石畳が続いていた。

オーガの村で見たヨーコの神殿とまったく同じに見える。

ていうか、同じ?


「もしかして、ここがオーガの村に繋がってるの?」


「察しが()いな、サクラは」


セイヤがそうだと教えてくれた。

イシルさんはここからオーガの村に行ったのか。


ヨーコに参拝(?)し、両脇のお狐様にチョコをお供えして 先へと進むと、大きな水音が聞こえだした。


「滝だ!」


それは、一本の大きな流れではなく、カーテンのように横に広がって落ちる滝だった。

岩肌からしみ出た湧き水が無数の“糸”を紡ぐ

流れ落ちる無数の白い滝は、美しい糸が垂れるように繊細。

滝壺はエメラルドグリーンに透き通り、底が、、見える!

周囲の緑と相まって、自然が生み出すダイナミックな絵がそこにあった。

有名な『白糸の滝』のように。


「う~ん、マイナスイオン!」


空気が先程よりひんやり感じるのはマイナスイオンのせいかな?

風が細かな水飛沫を サクラのもとまで運んでくる。


「あの滝の裏は 半洞窟になっておって 水位が低いときは歩けるのじゃ」


「へぇ~」


「もう少ししたらこのあたりは桜の花も咲くからのぉ、むこうから見えるこちらの景色もまた絶景じゃろうて」


「桜かぁ~キレイだろうなぁ~」


滝のカーテンの間から見える景色も素敵だろうなぁ……

そういえば お箸をイシルさんにプレゼントした時、『春になったらお花見に行きましょう』と言っていたっけな。


「その頃にはお客を入れたいわよね~」


サスガ商売人ですな!アスよ。

花見時期はかきいれ時、サクラが咲けば美しい景色に呑めや歌えや、財布の紐もゆるみます。

日本人だけ?


「あ!ここにもいらっしゃる」


サクラはひっそりとたたずむ白狐の像を発見し、またチョコをお供えした。


「全部見つけたら何か起これば面白いのにね」


アスが笑いながらサクラに冗談めかしたことを言った。


「全部見つけたら……いいかも」


「え?」


「全部見つけたら 記念品をあげればいいんじゃない?」


「面白いけど、どうやって全部見つけたって事を証明するの?」


「スタンプラリーです!」


女子旅の時にリズとスノーが作った『旅のしおり』のような冊子を作り、スタンプが押せるような手帳を作る。

白狐48に番号のふってあるスタンプを持たせておいて、発見したら押せるようにするのだ。


「『迦寓屋(かぐや)』の敷地を満遍なくまわることになりますし、記念にもなります。景品は そんなに高価なものじゃなくていいんですよ。お遊びですから。ただし、限定品で」


サクラはまた一つ、ヨーコへの提案を思いついた。


その後も、金魚がゆらゆら泳ぐ 瓢箪の形をたした『瓢箪池』や、石灯篭の並ぶ不思議な空間に佇む しめ縄をした『御神木』、登ると景色を一望できる『五重の塔』など、『迦寓屋(かぐや)』の庭園の中は他にも程見所が沢山あった。


「今日はこれくらいにして 温泉で汗を流してはどうじゃ?」


結構歩いたし、少し疲れもしたので サクラはセイヤの提案を受け入れ、『迦寓屋(かぐや)』の本館へと戻り、次は温泉へと案内してもらうことにした。







挿絵(By みてみん)


温泉まんじゅうイメージ。

茶饅頭と薄皮饅頭

一口サイズ一個で糖質15gとか!!破壊力すごすぎる!!

(実際は二口くらい、かな。一口にしては大きい。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 和の庭園、ステキです。 エメラルドグリーンの水底を見せる滝。それだけですごく癒されます。マイナスイオン~ 鯉の泳ぐ池や五重塔、みどころたくさん。 いっしょに散策しているような気持になってと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ