281. 迦 寓 屋 3 (花魁ヨーコ様) ★
挿絵挿入(1/3)
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「よう来たなサクラ」
見たものすべてを魅了するというお伽噺のかぐや姫。
そのかぐや姫の如く美しい輝きを放ちながら微笑むヨーコ。
(ゴクリ///)
着物の襟を肩までずらし、番傘をさしたヨーコは 女のサクラがみても心を奪われる。
どこかあどけなさを残すその顔は少し切なげな表情で悩ましく、見ているときゅっと胸がしめつけられる。
「どう?サクラ、これで絵を描こうと思うんだけど♪」
アスがヨーコの髪型を整えながらサクラに問うた。
「……却下」
「えっ!なんで?ダメ?ムラムラしない?」
ムラムラしまっす!
「ヨーコ様になんて格好させるんだ!この大バカモノぉ!!」
サクラはヨーコに近づくと 着物の襟を直し、肩を隠す。
「え~、だってヨーコ肌綺麗なんだもん 脚も出したいくらい」
お前は桃色映画監督か!!
「これは簪のプロモーションでしょ?ヨーコ様が綺麗なのはわかるけど、肌の露出は必要なし!そんなの私がユルさん!首筋だけでも見せるの勿体ないくらいなのに!」
あぶねぇ!!来てよかった!
「サクラ……」
ヨーコが驚いた顔で サクラを見る。
「ヨーコ様も嫌なら嫌って言わなきゃ!女の子なんだから」
「女の子……」
「子ブタちゃん、別にヨーコは嫌がってなんか……」
「うっさい!アス」
「いやん///」
「喜ぶな!!」
ヨーコの着物を直しながらアスに小言を言っていると、頬にふわっと暖かいものを感じた。
「……サクラは勇ましいのぅ///」
サクラの頬をヨーコの手が包んでいる。
「そんなに妾の事を思うてくれているとは」
美人のアップはいつまでも見ていられる。
ああ、なんて美しいんだ……
その美しいヨーコの顔が 近づいてきて、サクラの唇に――――
″チュッ″
額に柔らかい感触。
唇ではなく、額にヨーコの唇が触れたのだ。
(なっ///ヨーコ様ぁ!?)
「唇を奪っては後が怖いからな、、わらわの加護じゃ 受けとるがよい」
「加護?」
サクラが額を押さえながらヨーコに聞き返す。
「サクラは魔力が少ないからのぉ、これで少しはマシになるであろう」
「ありがとうございます///」
「魔方陣一回くらいは使えそうね」
アスが魔力がどれくらい増えたか横から教えてくれた。
「それ!凄い助かる!!」
なんかしらんが、力をもらったようだ。
これでドワーフ村に一人で行ける。
イシルやランの手を煩わせずに済みそうだ。
(ヨーコ様にはもらってばっかりだなぁ、、今度お礼しなくちゃ)
「部屋はどうじゃ?気に入ったかえ?」
「はい、とっても風情のある素敵なお部屋でした。静かなのに自然の息づかいは感じられる 落ち着いた部屋で、イシルさんも気に入ったみたいでしたよ」
「あそこは他の部屋と少し離れておる。月影の間……月の影に隠れる部屋じゃ」
へぇ、そんな意味の部屋なんだ~
「だから 密事には適しておる」
「へ?」
ヨーコとアスがニヤリと嗤う。
「アタシも邪魔しないから」
何を言ってるのアス、恋愛するつもりないの知ってるよね?
「存分に楽しむがよい」
ヨーコ様?
サクラがキョトンと二人を見る。
「あれ?受け入れたんじゃないの?イシルのこと」
「なっ///」
どこでどうしてそんな情報が!?
「子ブタちゃんもイシルも いつもと纏う空気が違ったんだけど」
アスは感情が匂いや味でわかってしまう。
サクラとイシルの変化を読みとったのだろう。
原因はきっと昨日のイシルのくちづけだ。
組合会館の地下で イシルがサクラに施したキス。
甘く、優しく、執拗に求めてくるイシルの唇に サクラは――――
(~~~~///)
思い出して顔が赤くなる。
応えてしまった。
イシルの執拗なくちづけに反応してしまったのだ。
すぐに突き放したけど、イシルの震える心が見えた。
お互い何かが通った気がした。
やっちまった。
「何も、ないよ」
何もなかったことにしたいサクラとしては 変な気づかいして欲しくない状況だ。
幸いイシルはその後何も仕掛けてこない。
このまま忘れて欲しい。
今たたみかけられたら……
今告白されたら 突き放せる自信なんてない。
「で、どう?簪の具合は。一応これ見てやってみたんだけど」
アスがサクラの渡したホテル雑誌にうつっていた『花魁』を指差した。
「そうだねぇ、、」
サクラは仕事脳に切り替えて 改めてヨーコの髪型を見る。
アスが結ったのはいわゆる『横兵庫』とよばれる髪型の変形だ。
前髪をあげ、3つの櫛簪で留めてあるが、サイドは流してある。
上にまきあげ、ちりめんっぽいリボンでまとめ、後ろは蝶の羽根のようになっている。
「ちょっと、簪多すぎかな。実用的じゃないよね」
「アタシはゴージャスで好きだけど」
「でも、パーティーに来るお嬢様方には向かないんじゃない?」
「そうねぇ……」
「これは、抜いて、、」
サクラは日の光のように前髪に刺さっていた飴色の四本のヘラ形簪を抜いた。
後ろに刺さってるヘラ型は残しておく。
そして、抜いた簪のがわりに 玉のついた簪を一本そこに挿した。
ゆれもの簪というのかな?
玉飾りから伸びたチャームがヨーコの目の前でキラキラと揺れる。
前髪をまとめた櫛のサイドには ビラ簪が挿してある。
ビラ簪は短い簪で、花飾りの下から歩揺とよばれる銀のすだれがシャラシャラ光ってキレイだ。
前はよし、と。横は………
「これ、素敵だね、アスがデザインしたの?」
「うふ。そうよ」
緩くまとめた髪の上に、羽の多いトンボのような花のような髪飾りがつけてある。
「エフェメロペンナよ」
なんだそれ
「エフェメロペンナは幼体の時は土の中にいるの。獲物が自分のテリトリーに入ってくるのを待っている。そして、足を踏み入れたが最後、ずるずると足元が崩れ引き込まれる。その様は 恋のよう……抜け出したくとも抜け出せない」
蟻地獄?
「そして 生体になると複数の美しい羽を広げ フラフラと彷徨うように飛ぶの。魅惑的に 体を揺らしながら。その寿命はわずか一日」
エフェメロペンナ、、ウスバカゲロウか!
体が長く、羽の多いウスバカゲロウの魔物。
「その刹那さを簪にしてみたの。一日だけのイケナイ恋♪」
アスのこだわりが凄いです。
アスとあーだこーだ言いながらも、サクラたちはなんとかヨーコの支度を整えた。
アスが絵師を招き入れ、コンセプトを伝える。
「コンセプトは『切ない片思いあなたは気づかない』よ」
小◯今日子か!?
「何その長いコンセプト」
「簪に好きな相手の名前を入れるのを流行らせようと思って」
乙女チック!売れそうですね。
贈る野郎も自分の名前こっそり入れたりしてね。
「じゃあ、頼むわね」
絵師が準備を始めると セイヤが現れた。
どうやらヨーコが喚んだようだ。
「お主ら今のうちに屋敷の出来映えを見て参るといい。何か良き案があれば 教えてたもれ」
まってました!お屋敷探索!




