279. 迦 寓 屋 (プロローグ) ★
明けましておめでとうございます!
今年も宜しくお願いいたします(*≧∀≦)
挿絵挿入(1/1)
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なんだかんだとありまして、サクラは結局イシルと共にオーガの村に行くことになった。
オーガの村に行くためにドワーフの村の門をを出ると 豪奢な馬車が一台停まっていた。
黄金色の輝く馬車は 大きな車輪がついており、蔓草のような装飾が施されている。
馬車を引くのは二等の白馬。
それはまるで、シンデレラのカボチャの馬車のようだ。
御者席からイケメンの従者が降りてきて 馬車の扉をあける。
(あれ?この人……)
イケメン従者の首筋には見覚えのある薔薇の刺青。
そして、馬車の中には――
「いらっしゃ~い」
美しい馬車に見合う王子様が座っていた。
「アス!」
「子ブタちゃん待ってたわよ~入って」
サクラはアスに引きずり込まれるように馬車に乗り込む。
「アスも行くの?オーガの村に」
「んふ♪昨日イシルに美味しいご馳走を送ってもらったからね、そのお礼に馬車を出すの」
「美味しいもの?」
「肉はちゃんと我慢したのよ~」
「?」
でも、よかった。どうやってオーガの村まで行くのか心配だったけど、馬車で行くんだ。
抱っこちゃんじゃなかった!
「アス、反対に座れ」
イシルがアスを御者席側に移動させる。
「サクラさん、こっちに座って」
「あ、はい」
サクラがアスの座っていた場所に座り、イシルがその隣に座る。
馬車がゆっくりと動き出した。
(あ、、)
馬車が走り出してサクラは気づく。
(進行方向!)
そう、サクラが座っている場所は進行方向を向いていて、サクラに席を譲ったアスは 逆に進行方向を背にしていた。
サクラがイシルを見ると、イシルがちょっぴり微笑む。
(覚えててくれたんだ)
アザミ野の町でボートに乗った時、進行方向をむいていないと酔うと言ったことを。
イケメンスキルさりげなさすぎデス!!
キュンとしちゃいますよ!?
「いや~ん、甘~い♪」
アスがニヤニヤと嗤う。
嗤うな、アス。ほっといてくれ、恥ずかしいわ!
「別にアスは来なくても良かったんじゃない?馬車だけ貸してくれれば」
サクラは嗤われた仕返しにイヤミを言ってみる。
「あら、イシルと二人きりがよかった?」
攻撃は倍になってサクラに帰って来た。
……やめよう、反撃するの
「そうなんですか?サクラさん」
うわ、イシルの追加攻撃。
嬉しそうな顔しないで……
「いや、そんな///」
「アス、降りろよ」
「何言ってんのよイシル、ちゃんと用事があるの知ってるでしょ?ヨーコの絵を描かせてもらいにいくのよ!」
「お前は走った方がはやいだろ?」
「イ・ヤ!」
「あ、そうか、ヨーコ様の簪の絵描くんだ」
「そ♪」
「サクラさんは僕が仕事してる間、ヨーコの所にいてもらおうと思いまして」
アスをおちょくっていたイシルがつけ加える。
「あそこならヨーコの監視下にありますから、危険はないでしょう」
(お仕事だ!)
よかった、イシルの仕事の邪魔になるんじゃないかと思っていたけど、自分にも仕事があるならと サクラは心が軽くなった。
◇◆◇◆◇
ドワーフの村から二時間足らずで馬車が停止した。
(あれ?早くない?)
オーガの村まで 女子旅の時、荷馬車でかっ飛ばしても四時間はかかったはずだ。
いくら二頭引きの悪魔の馬車だって そんなに早くはないだろう。
何かあったのかな?
「ここからは歩いていくのよ」
イシルとアスが馬車から降りる。
サクラが降りようとすると、イシルがサクラに手を差し伸べてくれた。
「ダイジョブです」
サクラはそれを断る。
いや、慣れないよ、エスコートなんてさ!恥ずかしいってば!
サクラはぴょこんと馬車から降りる。
馬車を降りると 竹藪が広がっていた。
(こんな場所あったっけ?)
竹藪の前に看板があり、矢印が示してある。
『迦 寓 屋』
「か、ぐ、、や?」
サクラはなんとか文字を読む。
「はい、ヨーコさんの別宅ですよ」
「あ!温泉宿!」
「ええ」
オーガの村からドワーフの村に来る途中にあると言っていた ヨーコの温泉宿だ。
「準備段階だから まだ泊まり客は入れてないのよ。従者もラ・マリエで 仕込み中だし、子ブタちゃんに見てもらってアドバイスが欲しいってヨーコが言ってたわ」
「うわあ!それは楽しみ~」
サクラのテンションが一気に上がる。
サクラ、イシル、アスは竹林の中の石畳を歩く。
オーガの村にあるヨーコの『神域』のように 静寂に包まれた場所。
竹に囲まれた空間は、別世界へと誘うように奥へと伸びている。
風にさわさわと揺れる笹の葉の音が心地好い。
三月のまだ冷たい空気が 竹の香りと共にサクラの肺に入り込み、その心を優しく癒してくれた。
リラックス効果半端ない!
次第に温泉宿の外観が現れてくる。
「ふおぉ!」
日本家屋風の『迦寓屋』は、隠れ家のように竹林の中に鎮座していた。
その玄関には見知った顔のお出迎え。
「「ようきたのぅ!サクラ」」
1ニョッキと 2ニョッキだった。




