274. 遠足 4 (だるまさんが転んだら) ★
登場人物が多いので昨日のお話しの最後に子供達の絵を乗せました。
よろしければご参考までに。
(文章で書き分ける力がなかとです(T_T))
(12/27)
「はじめのい~っぽ!」
かけ声と共に子供達がピョコンと一歩前に出る。
サクラは木に片手を折ってつき、頭をつけて目隠しをすると、声を張り上げた。
「だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だっ!」
″だっ!″と同時にサクラが振り向き、子供達がピタリと止まる。
『だるまさんが転んだ』
鬼が言葉を言い終わるまでは動いてイイが、言い終わり、振り向いたところを鬼に見つかると捕まってしまう遊びだ。
弁当を食べ終わった後、皆で遊ぶ。
先ずはサクラが鬼をかって出た。
「だ~るまさんがー……こ、ろんだ!」
″くるっ″
サクラが調子をかえて振り向くが、誰も動いていない。
いや、、
サクラはじーっと見る。
「……」
トムと同じ年でお調子者のザムザが 片足をあげたまま止まっていた。
サクラはしばらくザムザを見つめる。
じーっ……
″グラグラ″
ザムザが堪えきれずバランスを崩し動いた。
「ザムザ!」
「うわー!サクラひでぇ!」
「世の中とはそういうものだよザムザくん」
サクラがよくわからない言葉を発しながら、早よ来いと 手をニギニギした。
「ちえっ、」
ザムザは鬼のサクラに捕まり、サクラと手を繋ぐ。
(!?)
(そうか、はじめに捕まれば……)
(サクラと手を繋げたのに)
(失敗した!!)
トムとユーリは心の中で舌打ちする。
サクラはザムザと手をつないだまま再び木に向かい目隠しした。
「だるまさんが~……こ~……ろんだ!」
″ピタリ″
またしても誰も動いていない。
″クッ、、クスクス、、″
「?」
マナ?笑ってる?
「あはははっ!やめてよザムザ!」
「へへーん」
どうやらザムザが仲間を増やそうと、変顔をしたようだ。
「マナ、動いた~」
「もう!」
マナがザムザと手を繋ぐ。
テトとララは、ちょっと動いたりしてるが、まだ小さいから少し大目にみて、サクラはまた木をむいた。
そして間髪いれず叫んで振り向く。
「だるまさんがころんだっ!」
「きゃっ!」
「うわっ!」
「ふわぁ」
「トム、エイル、テト、アウト~」
三人釣れた。
ちょっと意地悪だったかな?
マナの手をトムが握り、エイル、テトの順で繋ぐ。
残っているのはユーリ、シムズの男の子二人とおっとりノーラ、小さなララ。
一番手強そうなトムを捕まえて サクラはちょっと気が大きくなった。
これは、全員捕まえられるかな?
再び木にうつ伏せる。
「だるまさんが~ころん……」
″ピッ″
(えっ!?)
切られた。
サクラは驚いた。
まだそんな近くにいた者はいなかった筈なのに、サクラとザムザとの繋ぎ目が手刀で切り離されたからだ。
「切ぃーった……」
手刀と同時にイイ声がサクラの耳に響き、ぞわっとした。
(ギルロスさん~!!?)
参加してたんですかアナタ、知りませんでしたよ、一歩も動いてなかったですよね!?
いや、はじめの一歩は動いたかな?
鬼から解放された子供達が ワーッと走り出す。
トムはテトを抱えて走ってる。
意外と優しいな。
「とまれっ!!」
″ピタッ″
鬼のサクラに号令をかけられ、全員が止まった。
『だるまさんがころんだ』のルールは、残ったものが鬼に捕まらずに『切った』と声を発し、鬼と切り離すことで捕まった仲間を解放する。
解放されたら逃げるのだ。
鬼は逃げた子を『止まれ』で静止。
ここから指定された歩数で静止した相手のところまでたどり着ければ鬼交代だ。
はじめに決めてあった歩数は……
「何歩だっけ?」
「五歩、だな」
トムが答える。
「五歩かぁ~」
捕まっていなかったシムズ、ユーリ、ノーラ、ララは論外、遠くにいる。
鬼に近かったザムザは逃げ足が速い。
テトを抱えたトムも五歩じゃ無理。
抱えて走ったとは言っても、力持ちのドワーフにとって テトの重さは軽い羽と同じことだ。
やっぱり女の子が近い。
マナか、エイルか、、どっちも五歩じゃ無理かな?
(あれ?)
もう一人いた。
ギルロスだ。
意外にもギルロスが一番近い。
(あそこなら届く)
サクラは勢いをつけ、ギルロスに向けてスタートを切った。
「いち、に、さん、、」
大股で、飛び石を跳ぶようにはねる。
「し、ご!!」
(とどけっ!)
地面を思いっきり蹴ってギルロスに飛び込んだ。
″ぼふっ″
(届いた!)
サクラがギルロスにしがみつく。
「やっ、、たっ!」
ギルロスの胸から顔をあげギルロスを見上げると――
「捕まえました!次はギルロスさんが……」
鋭い瞳とぶつかる。
「……鬼」
サクラの背中にギルロスの腕がまわされ サクラを包みこんだ。
「なっ///」
捕まったのは サクラのほうだった。
「捕まえてくれて嬉しいよ、サクラ」
胸に響くギルロスの低い声がサクラを襲う。
(うわあ!声に甘さを含めないでぇ~!!)
「ギルロスさん、離して……」
「お前が飛び込んできたんだろ?」
いや、そうですけれど違います。
サクラはギルロスの胸を押すがびくともしない。
てか、胸筋///凄っ!!
「恋愛はしませんって!」
「それは いただけんな」
ギルロスがサクラを落としにかかる。
声、艶々ですね!
「断ったじゃないですか!」
「それを乗り越えるのが恋愛だろ」
山があると越えたいタイプですか!!
障害があると燃えちゃうタイプですか!?
「……好きだ」
「ひっ///」
ギルロスの本気の声。
この声を聞いちゃダメ!
サクラは耳を手で塞ぐ。
が、ギルロスがサクラの手をとり 耳から引き剥がす。
「人の心は変わるんだぜ?サクラ」
耳を塞がないと……
「変わっていいんだ」
心が蕩けてしまう……
「好きだ」
甘く言い聞かせるギルロスの声に心が麻痺する。
ギルロスの顔がサクラに近づき 唇を求めてきて――――
″ランっ!!″
サクラは寸手のところでランを喚んだ。
サクラの呼び掛けと同時に風が起こり、サクラを巻き上げる。
「ふわぁ!?」
次の瞬間、気がつくとサクラはランの腕の中にいた。
「手ぇ出してんじゃねぇよギルロス」
「チッ、お前がいたか」
「てめぇ、、」
「口が汚ねぇーぜ、坊っちゃん」
「うるせぇ!」
ギルロスは一瞬でランの懐に入り込むと、ランからサクラを奪い返す。
「わっ!」
「まだまだだな」
ふわり、サクラは再びギルロスの腕の中へ。
(ひいぃ///)
「返せよ!」
「取り返してみな」
ギルロスの挑発にランがのり、攻撃を開始。
ギルロスはサクラを抱えたまま ランの攻撃を受け流した。
あっちにとび、こっちにまわり、あまりの速さにサクラの目が回る。
(あわわ///)
◇◆◇◆◇
一方こちらは子供達。
「やっぱりギルはすげぇなぁ~」
「サクラを抱えたまま押してる」
トムとユーリ。
「かっこいいなぁ~」
「速すぎて消えた!?」
「お兄ちゃんもがんばれぇ~」
これはシムズとザムザとテトだ。
女の子達は、きゃあきゃあと目の前の展開にはしゃいでいる。
大興奮。
「まったく、困ったものですね」
そんな子供達の後ろから声がかかった。
「あ!イシルさん」
エイルが振り向き声を上げた。
狩人の登場である。
「子供達をほったらかしにして自分達だけで遊ぶなんて……」
イシルは木の枝に手を伸ばすと、パキリとへし折る。
「これはおしおきが必要ですね」
「イシルさん、怒ってますか?」
「そう見えますか?マナ」
「木を折ったから」
「怒ってませんよ」
いや、お怒りですね!!




