表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/557

269. 蕎麦 ◎

あとがきに料理写真挿入(2021/7/30)

てんぷら揚げるエピソード加筆(2021/7/30)




その口にくちづけると とろけるような甘美な気持ちになる。


「んっ///」


ランは一呼吸おくと再びその口をむさぼるように吸い、もの足りずペロペロと舐めあげた。


思わずサクラが身を引く。


「ラン、くすぐったいよ」


「サクラ///もっと」


ランは潤んだ瞳でペロリと唇をなめ、催促する。


「もう、しょうがないなぁ」


ランは再びその口に吸いつく。


「焦らないでよ、ラン」


「はぁ///待てない」


我慢出来ずにランは一気に吸い上げる。


″ちゅ―――……″


ランを虜にして離さない柔らかなそれは……


『ぢゅ~るプレミアム』


とろ~りとろける贅沢なクリームの舌触りはプレミアムの名に相応しい。

その中には魚のつぶつぶを利用した濃厚リッチな食感のフレークが混ざっている。


サクラが二個目の『ぢゅ~るプレミアム』の()を ピッと切り、ランに差し出した。

ランは再びその()を含む。


「ラン、自分で持って食べてよ!指にあたってくすぐったいよ!」


「これはこうやって()()()が食べさせてくれる()()()だろ?」


「ラン、今猫じゃなく人じゃない」


「ご褒美おやつだから♪お迎え行ってやっただろ?労えよ」


サクラにも甘えられるおやつタイム。


『エビサーモン』『鳥ササミと白身魚』次は、、『シーフードミックス』か///


ランは次を催促する視線をサクラに投げた。


「二個以上はダメっ!」


にゃぬっ!?


「……ケチ」


ランまっしぐら





◇◆◇◆◇





「ただいま戻りましたサクラさん」


現世からサクラが戻って、ランが『ぢゅ~るプレミアム』を堪能した後マフラーを返しに行き、しばらくすると イシルがオーガの村から戻ってきた。


「お帰りなさい、イシルさん、今日は早かったんですね」


「ええ、夕飯は一緒に食べたいので」


ちょっとしたひと言がサクラの胸をくすぐる。

私も一緒に食べたいデス!!


「今日は麺の竹打ちをシャナに習ってきました」


あ、シャナさんに ですか……

あの格好のシャナさんに、、

イシルさんはドキッとしたりしないのかな


「シャナのあの格好はいただけないので、サクラさんの服を貸りていきましたよ」


「え?私の服??」


なぜ私の疑問がわかるんだ、、偶然?

しかし、私の服とは、シャナさんにはでかすぎなうえ、丈が短いのでは?


「トレーニングウェアを少し調節して」


ジャージかよ!!


「それで、これを……」


イシルが竹打ちで打ってきた麺は――


「お蕎麦!!」


「はい」


(そうか!ガレットがあるんだからそば粉があるんだ!)


サクラはローズの街で食べたガレットを思い出した。

蕎麦は糖質はあるが、GI値が低く、血糖値が上がりにくい。

イシルさん、ありがとう!


「あっさり山菜そばにでもしますかね」


いいすね!

麺だけより具材があった方がいい。


「でもランはそれでは足りないんじゃないですか?」


「そうですね……蕎麦はすぐ出来てしまうので 天ぷらでも揚げますかね」


山菜そばから天ぷら蕎麦に変更だ。

天ぷらはいいのかって?

蕎麦といえど、麺類を単品で食べると血糖値が上がりやすくなってしまうので、注意ですぞ!

具材がないよりは揚げ物でも取り入れることがおすすめです。

天ぷらなら、大根おろしをたっぷり入れたおろし蕎麦とも合いそうですしね!


「あ、私、シズエさんのところで生揚げ買ってきましたよ」


サクラが生揚げを取り出す。


「絹揚げですね!シズエの絹揚げはとても柔くて美味しいんですよ。僕には同じようには作れませんでした」


あは、イシルさん、嬉しそう。


「これは、焼いてそのまま食べましょう」


天ぷらを揚げている間に生揚げ(絹)を焼く。


コンロのグリルにアルミを引き、じわじわと弱火で 炙るように焼くのだ。

コレがなかなか時間がかかる。

絹揚げの中の豆腐は水分が多い。

その水分を中からあたためて、ふんわりと仕上げるのだ。


天ぷらはエビ天を中心に、ししとう、茄子、蓮、舞茸、イカ、玉ねぎ、鳥天。


天ぷらを揚げる順番としては、

葉野菜→堅い野菜(根野菜)→柔らかい野菜→肉→魚

水分や匂いの強いものは後回し。

油が汚れる上に、揚げたものから水分が出るとべちゃっとなるからだ。


今日の場合だと、ししとう→蓮→玉ねぎ→舞茸→茄子→鳥天→エビ→イカ


温度を下げないよう揚げるのが重要。入れすぎ注意。

イシルがてきぱきと天ぷらを揚げていく。


「サクラさん、これは、なんだかわかりますか?」


イシルが白身の魚を開いて見せる。


「知ってますよ、『キス』ですよね?」


「ええ」


衣をつけて、じゅわっと油の中へ。

こんがり、ふんわり、美味しそう。


「『キス』好きですか?」


「はい!好きで――……」


意気揚々に答えようとして、サクラははたと思い直す。

イシルを見ると、ニンマリサクラの答えを待っている。


「……普通です」


「……何ですか、普通って」


その手には乗りませんよ?ベタすぎます。


「キスより舞茸の方が好きです」


「……そうですか、サクラさんはいらないんですね、『キス』」


イシルは揚がったばかりのキス天を ランの皿に乗っける。


「あうっ!?」


ああ、私のキス天……


「何ですか?」


「……別に」


イシルさんのいじわるっ!!





「イシルさん、絹揚げ色がついてきましたよ」


「ひっくり返してもらえますか?」


「はい」


コンロのグリルでチリチリしてきた絹揚げ豆腐。

表面がパリッとなって、四方に焦げ目がついたところで箸でひっくり返す。


「うわ!柔らかい」


ふるふるの絹揚げ豆腐をサクラは崩さないように箸でひっくり返した。

再度、グリルIN!


ランがまだ帰ってこないので、サクラが食卓の準備をし、イシルは蕎麦にとりかかった。


たっぷりの湯を沸かし、パラパラとほぐしながら麺を入れる。

手打ち麺だから一分程。

差し水はせず、火加減の調節で頑張る。

蕎麦も素麺も、差し水せずにすむならその方が美味しく仕上がるから いいんだって。

火加減調節が簡単になった今は、差し水しなくてもいけますよ。


乾麺も生麺も、ゆであがりの後の麺を水で洗い、余計な粉を洗い落とします。

冷たい水だと、よりコシが増しますよ。


「ただいま~」


食卓の準備が整ったところで ランが帰って来た。

何てタイミングがいいんだ、どこかで見てたのか?


「ラン、もう食事の用意が出来ますから風呂は後にして手だけ洗ってきなさい」


「おっ、ラッキー♪」


ランはご機嫌に手を洗いに行く。

何がラッキーなの?

食事の準備がおわってたこと?

それとも風呂に入らなくていいこと?


「絹揚げも焼けましたね」


コンロから焼いた絹の生揚げを取り出す。


「うわぁ!膨らんでる!」


絹揚げは中に熱がこもってぷっくりと膨らんで 中央が盛り上がり、美味しそうに焦げ目もついている。


「早速頂きましょう」


ランは既に手洗いをすませて座っていた。


「「いただきます」」


天ぷらとあったかお蕎麦に絹揚げ焼き、常備野菜はカブの酢漬け、小松菜とじゃこのおひたし、コンニャクのピリ辛金平。


イシルは絹生揚げ焼きに箸を入れ、ランはエビの天ぷらにいきなりかぶりついている。

サクラは……


(やっぱりお蕎麦かな)


イシルが打ってくれたそばからまずは食べたい。

もちろんベジファーストはわすれません、小松菜を食べてからですが。


まずはスープを一口。


透明感のある出汁は、ふわんと優しい香り。


″ズズッ……″


「はぁ///」


やさしく体に染み込む味。

カツオと昆布などの素材の旨味が溶け込んで、透き通った見た目からは想像できないほど味がしっかりしている。


次は蕎麦。

打ってくれたのは十割蕎麦かな?

色が濃い。

濃いから十割てわけでもないけどさ。


″ズルズルッ……″


サクラはお蕎麦を豪快にすする。

蕎麦は音をたててすする!

これが美味しい食べ方ですよ!


つなぎがないぶん柔らかいかと思いきや、中々どうして!ハリもコシもあり、途中で切れたりしない!


「むふっ///」


蕎麦は喉ごしというが、ちゃんと噛んで食べます。

えぇ、ロカボダイエット中ですからね。


″ズルズルッ、ズルッ″


麺の表面に、そば粉の粒子のザラザラした舌触りを感じ、噛むとそば粉の粒子が砕けて、味と香りが、ふわっと口中に広がる。


「ふふっ///」


十割蕎麦は切れやすいイメージがあったんだけど、すごく纏まってるのは打ちたてだからかな


「美味しいです!イシルさん」


「よかった」


舌に触れる粒子のつぶつぶ感と、歯を当てたときのモチモチ感。

混じりっけのない蕎麦粉の豊かな香りの波紋が口の中に広がり、鼻に抜ける香りの濃さが違う!


エビ天を一緒に食べる。


″じゅわっ……″


天ぷらの油ががダシにとけ、ぶわっと広がる。


″サクッ、はむっ″


プリっプリのエビ!

蕎麦のダシを吸った天ぷら最高!


″ズズッ″


蕎麦と天ぷら一緒に食べると、また違う味になる。

エビもさることながら、エビエキスのしみた天カスと蕎麦の合うこと!


「贅沢~」


目の前ではイシルが幸せそうに絹揚げを食べている。

生姜とネギを添え、醤油をかけて。


(イシルさんお豆腐本当に好きなんだな~)


ちょっと、、イケナイ顔してますよ///

イケメン蕩け顔ご馳走さまです!

サクラも絹揚げに箸を入れる。


″サクッ、、″


箸にカリッとしたアゲの表面があたり、中々に抵抗力がある。

それを強引に割ると


″はふん″


中からほっこり湯気をあげて 白い絹豆腐が現れた。

何てなめらか……

震える姿は艶かしくさえある。

これがイシルを虜にした絹の肌……

イシルを()()()()にさせた張本人。

ちょっと、妬ける。


サクラは醤油ではなくポン酢をかける。

ネギと生姜とポン酢だ。


「はむっ、はふっ///」


熱い!!

大丈夫か!?ランは!?

ああ、まだ豆腐には手をつけてない。

エビ天蕎麦に夢中だ。

しかし、凄い。

アゲの中に湯豆腐が入っていた!!

しかも、なんだろ、ふわっふわ!!

全てがアゲの中にこもってる!!

何だこれ!?


「ん~///」


んんまいっ!!

じわじわ焼いただけよ?


外のアゲがカリカリに固くなって、裏返して焼く頃には 中の水分を閉じこめ、上のアゲが固くなると、中で旨味がふっくり閉じこもり充満してくる。

アゲの中で調理された絹豆腐……


「んくっ」


香ばしく焼かれたまわりのアゲのパリッとした食感と絹のふわふわなめらかなコントラスト。

飲み込むとふんわり腹の腑におちた。


これは、、イシルさんにあんな顔させちゃうよ!


ジリジリと焦らしながら調理された絹揚げ焼き!

焦らしプレイ最高!


「はぁ///」


サクラは自分もイシルと同じ表情(かお)してるなどとは知る由もなく、、


絹揚げ豆腐のやわやわ布団に 思いっきりダイブした。






挿絵(By みてみん)


蕎麦にのっけるてんぷら。

エビ、イカ、キス、なす、いんげん、まいたけ、はす、カボチャ、さつまいも、ちくわのいそべあげ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いらないのか。『キス』(笑 難しい~~~! 答えに詰まりますね(笑 [一言] 舞茸も美味しいですよね。キス天は大好きです~ 他の天ぷらも大好きです~(全部)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ