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268. ランのお迎え

挿絵挿入しました(12/21)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m




現世ランチを堪能したサクラは いつものごとくドラッグストアーで口紅を物色し、スーパーで買い物をし、リュックはパンパン、両手に荷物を持った買い出しスタイルで、いつもより小一時間程遅くシズエ殿の豆腐店へとやって来た。


(おっ、休憩中かな)


店先のベンチの上にちょこんと奥さんが座っているのが見える。

今日はイイ天気だから、日向ぼっこかな。

奥からシズエ殿が飲み物を手にやって来て 奥さんの隣に座った。

シズエ殿が手にしているのは ペットボトル入りの豆乳のようだ。

シズエ殿は蓋を開けると 無言で奥さんに差し出す。

ラブラブだな……


(シズエ殿はあの渋い顔でデレたりするのかな)


イシルさんにデートの仕方やらナンパの仕方やら いらんことを教えたシズエ殿、一体どんな顔してそんな話してたんだ。


「あら、いらっしゃい」


奥方がサクラに気づき声をかける。


「こんにちは」


「今日もすごい荷物ね」


奥方はイチゴ豆乳でシズエ殿はメロン豆乳か……可愛いな。


「はい、あれもこれもとつい買いすぎちゃって……あの、カートありがとうございます。すみません、使わせていただいてます」


シズエ殿に向き直って礼を言うと、シズエ殿は無表情で『ああ』と一言。


「やだアナタったら、照れちゃって」


テレる?今のが照れてるのか!?まったく表情変化ナシでしたよ?

奥方にはわかるんだ。夫婦って凄いな。


「今日もおからドーナツかしら」


「はい」


今日のドーナツは何だろう……

サクラは手書きの黒板を見る。


おからドーナツ

プレーン120円


本日のドーナツ

ストロベリーナイト 140円


(……)


いつも通り、素敵なネーミングですね。


「ストロベリーナイトって、何が入ってるんですか?」


「イチゴだ」


ど――――ん!


サクラの質問にシズエ殿が事も無げに答える。

いや、わかるよ。ストロベリーですからね、イチゴはわかる。


「他には何が……」


「甘い夜だ」


どど――――ん!!


いや、わからねぇ!!

真顔で当然のようにそう言われてもわからねぇよ!!

うふっ///て奥さんが隣で照れている。


「じいちゃん達旅行に行って来たんすよ」


目が点になっているサクラに店の中からお孫さんが声をかけてくれた。

うふふっ、と ハートマークを語尾につけて奥さんがそれにつけ足す。


「この人が結婚記念日のサプライズで、夜のいちご狩りに連れていってくれたの。LEDライトに照らされて 幻想的だったわ~」


結婚記念日のサプライズにストロベリーナイト!シズエ殿ロマンチスト……

豆乳の蓋をとってから渡したように イチゴのヘタもとって 奥様の口に入れてあげたんですね、シズエ殿。


「お泊まりデートだったの///」


わっはー!ごちそうさまです、甘い夜。

何年たってもラブラブおあついですな!

素敵だなぁ、こんな老後……

幸せのお裾分け、ごちそうさまです。


「じゃあ、ストロベリーナイト20個ください」


「はいよ~」


(お豆腐も買っていこう)


「あと、生揚げの(絹)も……」


お孫さんが用意してくれてる間、のろけ話をいっぱいご馳走になって、サクラはストロベリーナイトを手に シズエ豆腐店を後にした。




挿絵(By みてみん)





◇◆◇◆◇




薬をもらい、薬局を出ると光に包まれ、サクラは異世界へと戻ってきた。


(ランを呼ぶかな)


道は覚えたし、魔物避けも朝かけてもらったから一人でも帰れるのだが、いかんせん荷物が多い。

この山盛り買い出しルックで山道は辛すぎる。

ごめんよ、ラン、荷物持ちで。

サクラは心でランを呼んだ。


「だから受け取れないって言ってるだろ!」


呼ばれたランに怒られた。


「ひいっ、ごめんなさい」


「なんだ、サクラか おかえり」


「ごめん、何かの途中だった?」


「んあ?いいよ、大したことじゃないから」


ランは手に何か持ってる。

……マフラー?


「ラン、マフラーなんてするんだ」


「いや、これはいらねーっつったんだけどさ」


あれ?


「返そうとしたらサクラに呼ばれたんだよ」


ありゃ!?

もしや告白されてる最中に呼んでしまいましたか!?申し訳ない!!


「ごめんなさい」


「別にいいけど」


ランはサクラの荷物を亜空間ボックスにしまい、歩きだす。


「ランも受け取らないことあるんだ」


アイリーンが高価なものは受け取らないのは知ってるけど、ランもそうなのかな?

偉いな。


「手作りなんだよ、コレ」


「え?」


良く見たらマフラーは 目が不揃いで、明らかに手編みのようだった。


「手作りのものって苦手なんだよ」


(ぬおっ!!)


(まじない)かかってること多くてさ、悪夢見る」


(確かに、それは、嫌かな)


異世界なら現世とちがって(まじない)の効果が出るのだろう。

夢に出てきたり、心臓がチクチクしたり、地味に()()らしい。

気持ちまでへの作用はないようだけどね。


サクラは如月のところで作ったイシルへの手作りカフスボタンを思い返す。


(……重い、かな)


呪いはかけていないが、サクラの気持ちはこもっている。

サクラが遮ったので、イシルから直接『好きだ』と言葉で聞いたわけではないが、イシルのサクラへの好意はあからさまだ。

断っておいて手作りのプレゼントを贈るなんて矛盾している。

箸や湯飲みなんかの実用的な既製品ならまだしも、そんな気持ちが形に残るものを贈るなんて……


(無神経だったな……)


「お前からならさ///オレはなんだって――……って、聞いてる?サクラ」


「え?ごめん、聞いてなかった」


またひとつ、サクラの秘密の引き出しにイシルに渡せないプレゼントが増えてしまった。


「……なんだよ」


あ、拗ねた。


「ランへのお土産は新商品の『ぢゅ~るプレミアム』だけど?」


「ふおぉ!」


ランの尻尾と猫耳がびこんと立った。


「早く帰ろうぜ!サクラ」


ランがサクラを抱えあげる。


「うひゃあ///」


そして、軽快に走り出した。


(お姫様だっこぉ!!?)


「ラン、おろ///おろしてよ」


ランはサクラを見てニャッと笑う。


「大人しく抱かれてろ」


余計なこと言わなきゃ良かった……







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― 新着の感想 ―
[良い点] >「甘い夜だ」 >どど――――ん!! に大爆笑しました。くそう、シズエ殿、あなた海〇王になれますよ(えっ) いくつになってもラブラブご夫妻、ごちそうさまです^^ そしてラン君きみ、イケメ…
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