262. cherry´s かんざし編 ★
挿絵挿入しました(12/14)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m
「目の前に座るのは紫の薔薇。
やわらかなレースの質感に高い位置にウエストを据え、大人っぽく見せるために広がりを抑えたスカートライン。
袖に切れ込みを入れ 肌をちょい見せし、肌の白さを強調する。
その白さが 今回推し出す口紅の『赤』を際立たせてくれる。
髪は予定どおり簪でアップにして、イシルがつけてしまった痕を隠すために首にタイを巻き、簪を下にも差して飾りをちらし、隠す。
今回の宝石類はダイヤモンド……
宝石で有名なルピナス商会から取り寄せたダイヤモンドと、繊維大手のダリア商会のなめならかな紫のレース。
その最高の素材二つを織り成したドレスは夜空にキラキラ輝く星をちりばめたような神秘的な美しさだわ……」
アスは飾りつけたサクラを見てため息をつく。
今着せたばかりなのに――
「ああ、脱がせたい」
ジロリとサクラがアスを睨む。
「胸も、背中も、首も、イシルの希望どおり隠した。かわりに袖に細工をし、生腕をチラ見えさせ、、濃い色のドレスの下に隠れた肌の白さから性欲を刺激させる。
緩やかなレースに胸元が波打つたびにダイヤが星の瞬きのように揺れ、閨へと誘うの。
簪をぬいて、スルリ……あの柔らかなレースのドレスをほどいたら、ハラリ……とびきりのプレゼントがアタシの目の前に、、一枚ずつ……花びらを散らすように――くふ///くふふ……」
「アス、全部声に出てるよ、盛大なるセクハラ発言」
イエローカード、警告!何だよ『紫の薔薇』って。
「ほんとは着せるより脱がせる方が得意なのにぃ~」
はい、イエローカード二枚目~退場するよ?私が。
「別の人でやってくれ」
アスが身悶えしてる。
口を慎め!色欲の悪魔め!自由すぎるわ!
「だって今日の子ブタちゃん (気持ちが)艶々で(気持ちが)潤ってて(気持ちが)溢れてて美味しそうなんだもん、おあずけキツいわぁ……」
さっきまでイシルと一緒だった。
手をつないで ドワーフの墓場まで 使兎に指輪を返しに行ったのだ。
門をくぐって 墓場の中に入ると、とても穏やかな空気が流れていた。
使兎に囲まれたイシルは、和やかに笑っていて、その姿が可愛くて可愛くて……
「ふふっ///」
イシル充電が満タンなのだ。
「ほら、漏れた。今日は香水いらずね」
それはアスにだけでしょ。
「ところで、首の痕って何?」
「あらやだ、もうこんな時間!アタシも着替えなきゃ~子ブタちゃんには迎えが来るから、二人で先に会場行ってて~」
サクラの質問が聞こえないかのように アスが言葉を被せて来た。
「う、うん、わかった」
なんか、はぐらかされた?
(まぁ、いいか)
アスじゃなければ、迎えはマルクスが来るのだろうか。
アスが出ていった後、サクラは鏡の前に立ち、己を見つめ、タメ息をつく。
ああ、こんな真紫のドレス、、普段なら絶っ対に着ない!
こんな高そうなキラッキラのダイヤモンド、、落としたらどうすんだ!
ここでバイトしてたら、確実に後ろついて歩くね。
拾ったら儲けもんだ。
そして、なにより、この口紅……
ありえん!
この、人を食ったような赤!!
「毒々しいなぁ……」
「そんなことないよ」
サクラのすぐ後ろで男の声がしてゾクリとする。
この、甘いキャンディーボイスは……
「ハルくん!?」
いつ、来た?
ドア、開いた?
「とっても綺麗な赤だ」
ハルは 振り向いたサクラの顎に手をあて上を向かせると、うっとりとサクラの唇を見つめる。
「血のように 赤い」
「なん……」
トロンと笑顔を見せるハル、いつもと雰囲気が違う。
「折角キレイな首なのにタイで隠しちゃうなんて勿体ない……」
ハルの目が赤く 妖しく光る。
「いやいや、人様にお見せするほどのモノではござらぬ故……」
なんだかアンニュイな雰囲気のハルに違和感を感じ、言葉遣いがおかしくなるサクラ。
ハルは サクラの赤い唇からなめるように首筋へと目線を移す。
「白くて、柔らかそう、、牙がウズいてきちゃった……」
「牙??」
ハルがにしゃりと八重歯をみせて嗤う。
(いや、ドラキュラじゃあるまいし!!)
ハルの手がサクラの顎から首へと滑り、頭を持ち上げようと、サクラの耳の後ろ側――イシルのキスマークに――指を差し込んだ――
「つっ!!」
瞬間、パァンと弾かれたように ハルが手を放した。
(あれ?)
サクラは鏡を見直す。
(気のせいか)
さっき、ハルが鏡に写ってなかった気がしたのだ。
今はちゃんと写っている。
「サクラさん、今日は別人みたいだ、、ですね!」
君も今さっきまでとは別人みたいだよ?
「迎えって、ハルくんなの?」
「そう!です」
見直すと ハルは正装していた。
白地に金と黄緑のラインの入った王子服を来ていて、若々しい光の国の王子様といったところだ。
(正に白王子!!肩にモップついてる!)
常々思っていた。
絵に描かれている王子服を見るたびに、肩に乗っているアレ
体育館の緞帳の紐のような、小さなモップのような……
ホントに、ついてるんだ……
ソレ、必要?
「アスがサクラさんを連れて、先に行けって。お菓子食べてていいからって……です」
「ハルくん、無理に敬語使わなくていいよ」
「ダメ、です。今日はお仕事、ですから」
ハルが腕を差し出す。
「サクラさん、お手を」
「う、うん」
なんか、テレる///
こんなの若いツバメと奥様(?)ではないか。
(おお!そうか)
今日のコンセプトは『オトナっぽ~い』
サクラが大人っぽく見えるように 今日はパートナーが可愛い弟くん系のハルなのだ。
(合点が行ったぜ!)
これはお仕事だ。
ハルもそう言っているではないか。
お仕事社会人モードに切り替えないと!
サクラは一人納得してハルにエスコートされ パーティー会場へと向かった。




