253. 鬼の居ぬ間に…… ★
挿絵挿入(12/5)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m
サクラはバドミントンでかいた汗をシャワーで洗い流す。
クリーニングの魔法って便利だけど、やっぱり風呂に入った方がさっぱりするからね。
ランが待ってるから軽く汗を流して浴室から出た。
「あれ?」
おかしい。
持ってきたはずの服がない。
かわりに見慣れない青い服が置いてあった。
「?」
広げてみると ワンピースだった。
(こっ、、これを、着ろと!?)
胸にタイのようなリボンがついた青と紺のワンピース。
Aラインのコートのようなワンピースの中にもう一段階切り返して紺の膝丈スカートがついている。
「こんな可愛いの着れるかっ///」
しかし、他に服はない。
(ラン、、ここに入ったの!?)
とりあえずこれを着て出て、部屋に戻って着替えよう。
サクラは着替えて浴室を出た。
「あら、似合うじゃない」
「げっ、アス!?」
「″げっ″てなによ、傷つくわね」
「なんでいんの?」
お前の仕業か。
ちょっと納得。
「んふふ♪イシルの気配が消えたから~」
「おいで」と、サクラの肩を抱き 浴室へ連れ戻す。
「これが子猫ちゃんの髪紐ね~」
アスは有無を言わさずサクラの髪を整え、サイドにランの髪紐を結び、サクラのくちびるに赤い 紅をさした。
「うん、ワンピースこの色で正解!子ブタちゃんは色が白いから締まって見えるわね」
鮮やかな青に赤い色が引き立つ。
「このワンピース、ボタンのラインが強調されてるから目の錯覚で痩せて見えるでしょう?」
いや、服着てるのにそのせいで胸が強調されてますが!?
おかげで腹が引っ込んで見えるけど……
「さぁ、王子様が待ってるからね、行ってらっしゃ~い」
そう言って魔法使いはサクラを浴室から追い出した。
「ラン、アスがいたんだけど、大丈夫?」
サクラはリビングのランに声をかける。
振り向いたランは、、
「あ、サクラ、準備できたんだ」
正しく王子様だった。
「その格好……」
白シャツに紺のベスト、外のコートはサクラと同じデザインのブルー。
(ペアルック!!?)
「似合う、サクラ。かわいい」
着替えたランは別人のようで……
イッケメ~ン!!まぶしいっ!!
あ、ネコ耳がない。
「行こう、サクラ」
ランがサクラの手をとり家を出る。
ランとアス、いつの間に仲良くなったんだ?
ラン アスのこと苦手だったよね??
魔方陣の部屋からアスの館の魔方陣へ渡り、ラ・マリエの大階段をランのエスコートで降りる。
ライトの光がスカートにキラキラと揺れ、サクラの体を滑り落ちていく。
口紅はぷるんと赤く、グロスがテラテラとつややかに 見るものを誘う。
(水族館の時もだったけど、ランのおかげで視線が集中するなぁ……)
「かわいい~ペアルック」
「普段使いに、、赤い口紅!可愛い~」
「肌が白くてらっしゃるから」
「内側から発光してるような白さですわね、、なにを使ったらああなるのかしら」
(おおっ!なんか知らんが、高評価!そうか……)
アスが絡んでて、大人っぽいコンセプト、赤い口紅、デート仕様ペアルック、これは、、
(お仕事?)
◇◆◇◆◇
屋台通りは10日で店がいれかわる。
来館中の貴族たちを飽きさせないためだ。
サクラの提案した綿菓子屋は、今回はチョコバナナ屋だ。
勿論ランはウキウキ列にならんでいる。
″クンッ″
甘い匂いが漂ってきた。
ここじゃない、チョコの匂いじゃない、、
サクラは並ぶランに断りをいれて 匂いのもとへ。
それは チョコバナナ屋の斜め前にあった。
(知らない店だ、、ホットケーキ?)
店員さんが 生地の中に砂糖やナッツをくるみ、まるめ、鉄板の上に置くと 平らにして上から押し潰した。
ホットケーキのようになった生地をオヤキのように焼いていく。
「ホットク?」
『ホットク』とは、サクラがいた現世の 韓国屋台スイーツの代表格。
現世のシナモン入りの黒砂糖をパン生地で包んで焼いたデザートで、かむともっちり生地の中から溶けた密がでてきて、もちのような、パンケーキのような生地とからんで美味しいのだ。
「サクラ、食いたいなら買えよ」
「いや、ごはん食べずにデザートは……」
血糖値が大変なことになるよ。
目の前のランはごはん食べる前にチョコバナナたべてるけど。
バナナはおやつじゃないのかな?
「食えなかったら全部俺が食う」
ランの言葉に甘えて サクラは『プラケンタ』というそのホットクもどきを買う。
「姐さん、姐さん!」
その先の屋台からサクラを呼ぶ声がする。
この独特の喋り口調は 見ずともわかるオズボーン。
「いや~、えらいべっぴんさんがおると思うたら、姐さんやないですか!どこの貴婦人さんかと、、」
「オズ、いいよ、お世辞は……」
「いや、ホンマに。あの言葉撤回したのは間違いやったかなぁ~」
あの言葉とは初対面の時、オズがサクラに向かって叫んだ『結婚して』の事だ。
イシルのお怒りを察し、すぐに撤回に至ったのだが。
「いやまた隣に若いツバメをつれて、撤回せんでもわての入り込む隙間は1ミリもありまへんでしたな!ややっ!どこの王子様かと思ったらランはんじゃないですか!こりゃまた、、またまた、、」
オズは本当に驚いたようで、珍しく言葉が出なくなった。
「あっちにラーメンも出てるな、サクラ試食必要だろ?オレ買ってくるから」
「ありがとう」
ランはそんなオズを放置して ラーメンを買いにいってくれた。
「いや、たまげた。なんやあのオーラは、、そうや、姐さん、買ってってぇな」
試食してくれじゃなく『買ってけ』というのがオズらしい
「粉ものかぁ……」
これもランが半分食べてくれるかな?
「イシルの旦那から 姐さん専用のレシピを教えられたんですわ」
「私専用!?」
「長芋だけでも焼けるんやなぁ~お好み焼きって」
(……イシルさん)
やべぇ、かなりグラッときた。
今すぐ、ぎゅっとしたい。
今隣にいたら思わず抱きついてしまったかも……あぶね。
サクラはオズに長芋のお好み焼きを焼いてもらう。
たっぷり挽き肉とキャベツのお好み焼き。
挽肉多いな!ハンバーグになっちゃうんじゃない?
「サクラ、買った?向こうに食う場所あるから 座って食おうぜ」
サクラはランと共に イートンスペースへとむかった。
自由に座って外でお茶出来るスペースが設けられており、屋台で買ったものを持ち込んで食べることが出来る。
悪魔が常勤していて、頼めばお茶もいれてくれる。
普通に、ドワーフの村人も寛ぎにきていた。
貴族と入り交じって、なんだかおかしな風景になっている。
「「いただきます」」
ラーメン、お好み焼き、チョコバナナ、プラケンタ(ホットクもどき)、肉の串焼き、ホットドッグ、煮込み肉、、
「すごい、買ったね」
ランの亜空間ボックスから次々に出される屋台料理
「サクラ食いたいもん食えよ、残りはオレ全部くってやるから」
「ありがとう」
サクラは箸を手に取る。
ふと、まわりをみれば、試運転で出したラーメン店が珍しかったのか、寒いからなのか、ラーメンを食べている人が結構いる。
しかし、箸を使っているものはいない。
(やっぱりむずかしいかな)
サクラは箸を見つめる
「なんだ、サクラ、それを流行らせたいのか?」
「え?」
「箸」
「うん。ラーメンは箸で食べると美味しいから……」
ランが『そっか』とサクラに笑う。
そして、、
「へぇ、箸を使えるなんて、ツウだね、君は」
おもむろによく通るイケメン口調で話し出した。
周りがランの声に反応する。
「東の大国ではラーメンは箸で食べるものなんだろ?それを知ってて、使いこなせるなんて、君はなんて博識なんだ 食ツウだね、流行を先取りするなんて、さすが僕が見込んだ女性だ」
ランの『僕』発言に吹き出しそうになったが、まわりのラーメン食べてる貴族が自分もと 悪魔に箸を注文しだした。
ランが『食ツウ?』『最先端!』『博識』など、見栄っ張りの貴族達の心をくすぐったのだ。
(食えよ)
ランがサクラに箸を使えと目で訴えてくる。
サクラは箸でラーメンをすすり、ちゅるっと食べる。
「ふはぁ///」
試出店はとんこつ、そしてシャナさんの麺はもっちり中太お試し縮れ麺。
ああ、やっぱり美味しい。
ごくりと周囲から固唾をのむ音が聞こえる。
「やっぱ、食うな」
「?」
サクラは、今日は赤い口紅で口元が大変なまめかしい。
ダメだダメだ、と、ランは作戦をかえる。
こんなサクラはまわりには見せられない。
今ので また箸を注文するものが増えた。
「あーん」
ランはサクラに顔を寄せて口をあけた。
「ぐっ///」
(箸を流行らせたいんだろ?早くしろ)
ランが目で催促する。
これは、作戦だ!!怯むな!!
これは決してイチャイチャしてるわけじゃない、箸の魅力を伝えるため、うまく使いこなすのを見せるため、!そう、これは二人場織りだ!
サクラは自分に言い聞かせ、ランは猫舌だから、ふーふーさまして、ランの口にラーメンを運んだ。
″ちゅるっ、すずっ″
旨そうにラーメンを食べるランは 顔が上気し美しい。
「はぁっ///最、高、、」
ちろりと唇をなめ、誰をも虜に出来る妖しいイケメンスマイル。
いっちゃってる美しさ、サスガ天然ホスト様。
この場にいる全員にラーメンと箸を所望させ、箸ブームの火種をつくったのだった。




