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241. 五の道 5 (パエリア) ★

挿絵挿入(11/22)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m




サクラが降りてきたのは玄関からみたら右側の屋根。

煙突のないほうだ。

この下はなんだろう?

家に入ったとき、部屋は1つしかなかった。

ここは?物置小屋?


「馬小屋ですよ」


なるほど。

愛馬のお部屋でしたか。

今はいないだろうけど。


「今度は自転車じゃなく、馬にも乗せてあげませんとね」


いえ、もう十分二人乗り堪能しましたよ。

でもイシルさんが馬を乗りこなすのは見たいなぁ……

悩む、、


裏をまわり、裏口へ。


「あっ、ここにも階段!」





挿絵(By みてみん)





裏口から家へ入る時、脇に 屋根へと続く階段が設えてあるのを発見した。

階段はそのまま屋根裏へと向かっているのが見える。


「ええ、()()()()からなら屋根から降りられるし、上れますよ」


ドワーフの遊び心にまんとひっかかったわけだ。

……飛び降りなくてもよかったじゃん。


サクラはイシルを睨む。


「だから言ったじゃないですか、()()()のはシャレでつけたって」


始めから踏み石えらびを間違えたようだ。

()()はこっち、裏側だったんだ、ちくちょう。

ジャングルジムかよ、この建物


「ほかにも何か仕掛けがあるんじゃないですか?」


サクラが疑いの目をイシルに向ける。


「さあ、どうですかね、探してみては?」


それも楽しそうだ。

とりあえずあやしいのは 馬小屋とまだ行ってない地下の作業場か。


部屋に入ると イシルが暖炉上部に薪をくべる。


「お昼はこれで作りましょう」


おお!石窯料理ですね!


石窯料理のいいところは遠赤外線効果にある。

遠赤外線、高熱で焼かれることにより外側はパリッと香ばしくやきあがり、内側はしっとりと、必要以上に水分を失うことなくしあげてくれる、理想のオーブだ。


「やっぱり石窯と言えばピザですか?」


「ピザはアザミ野で食べたでしょう?」


イシルはそう言ってフライパン、麦、魚介を取り出し、

フライパンにブイヨンと麦を入れ、具材をならべる。


この匂い、サフラン?

イシルが作っているのはパエリアだ!


難易度が高く見えるパエリアも、具材を並べて石窯にほうりこむだけ。

エビ、ムール貝、あさり、パプリカ、キノコ、玉ねぎ、、、

イシルはひと手間加えてエビの頭を軽く潰し、ミソをスープに溶け込ませる。


「出来上がるまで ガゴの編み方を教えましょうか」


焼き上がるまでにひと仕事。

この匂いの中で作業とか、拷問ですか!?

サフランの独特の匂いが パエリアやカレーを連想させてお腹がすいてくるよ……


サクラとイシルは向かい合ってカゴを編む。


「これ、今日ひろった蔦じゃないですよね?」


「ええ、拾ったばかりの蔦は柔らかくて編みやすいのですが、暫くすると水分が抜けて 編んだカゴの網目がスカスカになるんです」


なるほど。


今日拾った蔦はすぐには使えないようで、しまってあった処理済みの水戻しした蔦を渡された。


イシルが丁寧にサクラに教えてくれる。

相変わらずキレイな指がしなやかに動き、カゴを編んでいく。


まず、3本、4本を交差させ、芯をつくる。

そこに長い蔓を時計回りに巻き付けていくのだ。

芯を中心として上下しながら、ぐるぐる、ぐるぐる。


「ぎっちり編み込まなくてもいいですよ。太さや幅をかえるといい味わいがでますから」


なるほど。

使い勝手だけじゃなく、遊び心を入れていいのね。


サクラは別に細い蔓を三本とり、三つ編みにすると、それを本体のカゴに編み込んでみる。


「果物カゴによさそうですね」


誉められた!嬉しい。

イシルは サクラにカゴの編み方を教えながら 料理の様子を見たり、片付けをしたり せわしなく動く。

つくづくお母さん体質なんだなと、サクラはちょっと笑ってしまった。


″ピシピシ……パチパチ……″


暖炉から 音がする。


小さい音だが、石窯の中で 具材が焼けて弾ける音。

次第に匂いが濃くなる。

サフランとニンニク、ああ、エビの殻の香ばしい匂い、、

パカッ、パカッ、とアサリの口があき、中からエキスが溢れ出す、、


「そろそろいいでしょう」


カゴをひとつ作り上げた時に パエリアが出来上がりだ。

石窯からテーブルへ直行!

出来立てをいただきます!!


「どうぞ」


イシルがよそってサクラに渡す。


「いただきます!はぐっ、もぐっ」


はふはふ、、熱々のもち麦パエリア、表面はかりっと焼けてるのにもっちりやわらか 魚介のエキスをすったサフランもち麦。

具材の旨みの染み込んだ贅沢な味わい!


「ん!」


これは鶏肉だ。

麦ごはんの中に ダイスカットされた玉ねぎと鶏肉が混ざって、旨味がぎゅっと閉じ込められてる。

イシルさん、手が込んでますね~玉ねぎの甘さ、鶏肉のうまさがパエリアの米とベストマッチ!


「あむっ、むりっ、」


ぽろっとこぼれたムール貝も 一緒に口に運ぶ。

プリッとして身が大きく、甘みのあるさっぱりとした味、なめらかでとろける食感と磯の豊かな味わいが米とまざりあい……


ビバ!パエリア!!


エビ!エビもいこう!

エビは殻つき。殻つきのほうがエキスたっぷりでるからね。

でも背わたはとられてる丁寧な下処理ですね、イシルさん。

頭が下がりますよ。

頭をおとし、足とからをむきむき、、

すると、プリップリの身とご対面だ。


白いボディーに赤いシマシマの模様をつけたニクいヤツ。


「あむっ」


ぷりっ、ぷりっと 口の中で 引き締まった身が悶えてる。


「くぅ///」


サクラの身も心も悶えさせるエビの味。


「サクラさん、タオルを……」


「ありがとうございます」


ベタベタの手を見て イシルがおしぼりをサクラに渡す。

あ、口もか。


「これもかけますか?」


「はい!」


イシルがパエリアにライムを絞りかけてくれ、さっぱりといただく。


「はふぅ///」


アサリ、パプリカ、いんげん、、あ、イカも入ってる。

野菜もお肉も魚介もそのものの甘みが引き出され、素材本来の味を楽しめるんだな~

洋風炊き込みご飯パエリア、、豪快に海の幸ふたりじめ~


食べ終わる頃に イシルがアルミに包まれたものを石窯から取り出した。


「なんですか?それ」


まあるい、、焼き芋?


「開けてみてください」


熱いですよと イシルは一声そえる。

これも出来立て テーブル直行。

サクラは恐る恐るアルミをひらいた。


″ふわん″


バターとシナモンの香り


「焼きリンゴ!」


「砂糖抜きです」


それでも甘い香りがする。


「デザートです」


「わあぁ、、」


リンゴがとろとろに溶けている。


「あむっ、、ふわぁ///」


一口ふくめば、サクラの心も 同じくとろとろだ。

そんなサクラの顔を見て イシルの顔もとろとろ――


「イシルさん」


サクラがイシルの名前を呼び、少し気恥ずかしそうにスプーンの先を差し出す。


「……どうぞ」


これでイシルの心までもとろとろだ。

イシルはとろけるほほえみをかえし、口をあける。


「あむっ、、」


甘酸っぱい とろとろにとけたリンゴが イシルの胸を満たす。


「美味しいですね」


「ですね///」


イシルは あーん、と 再び口をあける。


「自分で食べてくださいよ///」


残念ながら二度目はないようだ。


「あれ?まだ何か石窯に入ってますか?」


何やら違う香りがして サクラは暖炉に目を向けた。


「今晩のミートローフです。折角火を入れたので 作っておこうかと。パエリアも、、」


ああ、ランの分か。

作って亜空間ボックスに入れておけば出来立てを食べてもらえるもんね。









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