表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/557

240. 五の道 4 (旧イシル邸) ★

挿絵挿入(11/21)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m




自転車をひきながら林道を進んでいると 徐々に大木が増えてきた。


「大きな木が多いですね」


「この辺りは魔素が濃いですからね」


巨木は苔や蔦に覆われ緑の色が濃い。

光もあまり入らず薄暗いため、影が闇を作り、木の表皮を人の顔のように見せ 気味が悪い。


「怖いですか?」


どうやらサクラはイシルの手を固く握っていたようだ。


「いえ……」


ちょっと、一人では来たくないかな。

びくびく辺りをうかがうサクラにイシルがくすりと笑う。


「僕がいますから」


「……怖いわけじゃないです」


木の上の方をすーっ、と白いものがすり抜けていき、サクラはきゅっとイシルの手をにぎる。


(かわいい)


これだけでも 連れてきて良かったとイシルは思う。

まったく、アバタもエクボだ。


「独特の雰囲気ですね」


「はい、他にはない植物が咲きます。薬を作るにはうってつけの場所なんです。メイもたまに採取に来ますよ」


「危なくはないんですか?」


「村の中ですからね、魔物はでません」


()()()てことは 別のものは出る と?」


「……やっぱり怖いんじゃないですか」


「突然出たらびっくりするから、、何がでるんですか」


幽霊の類い、とか?


「鳥や小動物ですよ」


「なんだ、そっか」


サクラはほっと胸を撫で下ろす。


「あと、精霊、かな。ぼんやり光ってるのは 人型になれない程の森の精霊たちです」


「へぇ……」


「ああ、見えてきましたよ」


イシルが前方を指す。

建物の煙突らしきものが見え、次第に赤茶けた屋根の 小ぢんまりした平屋の建物が見えてきた。





挿絵(By みてみん)





サクラとイシルは入口に自転車をとめ、全貌をながめる。


「すっっごい蔦まみれですね」


旧イシル邸は 長く放置されていたからか、みっしりと蔦に覆われて緑の館になっている。


「最後に来たのはシズエがいた頃ですから 七年前ですしね」


飛び石を歩き、玄関まで行くと、イシルは蔦を剣で切りながら力任せに引き剥がしていく。

結構乱暴ですねイシルさん、ワイルドです。そんなところもカッコいいですが。


ドワーフの坑道で見た文字が刻まれているから 建物自体は相当古いはずだが、傷んではいないようだ。

サスガ ドワーフの技術。


「これは根本を断たないと らちがあきませんね。あ、サクラさん、そっちの地を這っていたほうの長い蔓だけとっておいてもらえますか?」


イシルがサクラへ手袋を渡す。


「後でカゴを編みましょう。僕は一周して蔦を枯らしてきます」


「わかりました」


サクラは軍手をすると 長い蔦を選び出し、マイクのコードをまくようにするするとまいて一纏めにした。

捨てるはずの蔓をヒモがわりにして きゅっととめる。

残った蔦ははしっこにまとめておいた。


しばらくすると くるくるまきにした蔦を肩にかけたイシルが戻ってきた。


「蔦は暫くしたら枯れて落ちると思います。中に入りましょう」


除草剤でもまいてきたのかな?

蔦の絡まる家って憧れてたから勿体ない気もするけど、サスガにこれは繁りすぎだ。


サクラはイシルに続いていて部屋へと入る。

薄暗く、ひんやりしている。


「埃っぽいですね」


サクラとイシルは手分けして窓をあけ、空気を入れ換えた。

室内に新鮮な空気と光が入り、止まっていた時間が流れ出す。


森の西洋館風のイシルの家とは違い、木と石、土の壁のような 素朴で暖かなつくりの家だ。


部屋は1つだけ。

机に椅子、棚はあるけど空だ。

薬を作っていたというから、薬が並んでいたのかな。

石造りの暖炉はそのまま石窯みたいになっている。

ピザ、焼けそう!

部屋の反対側は裏庭に続くドアがある。

脇に地下に降りる階段。


「シンプルな部屋ですね」


「住んでいた頃はもっとごちゃごちゃしてましたよ」


「地下が寝室ですか?」


「いえ、地下は湧き水が出ているので作業場に使ってました」


イシルは棚の後ろに手を突っ込むと 長い棒を取り出した。


「寝室はこちらです」


地下へ降りる反対側の脇の天井を その棒でとんっ、と叩く。

カチッと何かが外れる音がして天井が空いた。


「秘密の部屋!」


ドワーフが作る家には秘密の部屋がある。

組合会館では階段下から地下室に、バーガーウルフには休憩室にやっぱり地下室があった。

ここは、まさか上とは!!


「でも、どうやってあそこへ?」


「本来なら縄ばしごが落ちてくるんですが、なくなってしまいました」


イシルはサクラを抱えると、ひょいっと飛び上がる。


「うわあ!」


天井まで。

イシルさん、イシルさんには縄ばしごなんて必要なかったんですね。


「昇るなら昇るって言ってくださいよ///」


「すみません」


イシルさん、全然すみませんて思ってないセリフですよ?


屋根裏部屋には 大きな天窓とベッドがあった。


「わあ、眺めが良さそうですね~」


雰囲気ある。

月も星もきれいにみえるだろうが、日向ぼっこもできそうだ。


イシルは天窓をあけ、空気を入れかえる。


「これは、木も切らないと日があまり入りませんね、ちょっと行って切ってきます」


イシルは天窓から外に出ていった。

え?イシルさん?私降りれないよ?下ろしてから行ってよー!!すぐに帰って来てくれるんだよね?


サクラは天窓から顔を出す。


蔦は枯れて風に吹かれたのか、綺麗になくなっていた。

赤茶のレンガ色をした屋根が見えている。

そして、屋根のところどころに 色の違う石のようなものが 段々に埋め込まれているのが見えた。


これは……


(階段?)


足掛かりだ。

斜めに下に続いている。


屋根はそんなに高くない。

あの先にも下に降りる足掛かりがあるのかな?


サクラは天窓から屋根によじのぼると、好奇心に負けて 石に足をおろしてみた。


(イケる!)


屋根の傾斜も緩やかだからそんなに怖くない。

サクラは後ろ向きに石に足をおろし、ロッククライミングの要領で もそもそと屋根を降りていった。


裏庭のほうへ降りてきて、次の足掛かりを足で探っていると 下から声がした。


「そんなとこで何やってるんですか」


イシルの声だ。


「まったく、じっとしてないんだから……」


声に呆れが含まれている。


「飛んでください」


「え!?」


「その先に足掛かりはありません、それはシャレでついているだけですから」


「あー、じゃあ戻りますね、、」


「戻っても自力じゃ降りられないでしょう?」


ですね


「そろそろお昼にしますから、丁度いいから 飛んでください」


飛ぶって、、


「ちゃんと受け止めるから大丈夫ですよ、手を離せばいいだけです」


うう、だけど……


「お昼、食べないんですか?」


食べたいッ!!


サクラは手を離し イシルの胸にダイブした。



























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ