238. 五の道 2 ★★
挿絵挿入しました(11/20)
挿絵二枚目挿入(11/25)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使い下さいm(_ _)m
サクラが会館入り口で待っていると、イシルが乗り物を引いてやってきた。
「自転車!」
異世界にも自転車があったのか。
サクラはイシルの元によると自転車をまじまじと見る。
「放置してあったのを昨日修理したんですよ」
普通の自転車だ。
前輪が凄く大きいとかなく、形は現代のものとかわりない。
「ありがとうございます!」
サクラは自転車にまたがった。
「え?」
イシルが意外そうな顔をする。
「ん?」
「サクラさん、自転車乗れるんですか?」
「はい、現世で乗ってましたよ。子供の頃学校で自転車乗るテストがあって、それに合格しないと乗っちゃダメでしたから、練習しました」
サクラが子供の頃はそうだった。
四年生になったら、皆集まって自転車許可をもらう実技試験を受ける。
白線で書いた八の字の道をはみ出さないように とか、並んだカラーコーンをなぎ倒さないでジグザグに とか。
校庭に信号や踏み切りの絵が描かれ、一時停止は必ず止まる。信号、踏み切り前も必ず止まる。歩行者優先、足がつなかい自転車には乗らない、出発、曲がる方向の手信号……
数々の難問をクリアして 初めて小学校から自転車に乗っていいと許可をもらうのだ。
キラキラのオリジナルステッカーと共に。
そんな小学生時代だった。
「そうですか、サクラさんは 皆普通にのれるんですね、、シズエの奥方が乗れないと言っていたからてっきり……」
なにやらイシルが残念そうだ。
イシルとしては、サクラを後ろに乗せたかったようだが、まさかサクラが自転車に乗れるとは、あてがはずれてしまったようだ。
サクラは気づかず話を進める。
「そういえば自転車乗ってる人って見ないですね、異世界では人気ないんですか?」
自転車の旅 楽そうですが?
「一時期ブームはありましたが、盗難が多く、廃れましたね」
「そうなんですか」
「はい、馬と違い 持てますし、騒ぎませんから 持っていかれやすいんです。山道にも向きませんしね。ちょっと目を離した隙に荷物ごとごっそり、、」
なるほど。
現世でも多いね、盗難は。
「じゃあ、行きましょうか、旧イシル邸へ」
サクラはペダルに足をかける。
「はい」
ぎしっ、と、後ろに重みが加わり、サクラの腰に腕のびてきてホールドされた。
「にゃ!?」
イシルが自転車の後ろにすわり、片腕でサクラの腰を抱いたのだ。
「イシルさん、あの、、」
「サクラさんが漕いでくれるんですよね?」
アイター!2人乗りだったか!!
てっきりイシルさんは自転車の横を走ってついてくるのかと思っていたよ。
「イシルさん、後ろに乗るのはかまいませんが、イシルさんなら私に捕まらなくても大丈夫じゃないですか?」
サクラはやんわり抵抗を試みる。
「危ないので」
そして やんわり退けられた。
嘘だ、きっと手放しでも大丈夫だよこの人は。
「……じゃあ、行きます」
サクラは足に力をいれ、ぐっと漕ぎ出した。
自転車は快調に走りだし、風をきって走り出す。
「気持ちいいですね」
イシルの長い髪が風にそよぐ。
サクラはそれどころではない。
今さらだけど――
一番痩せてない腹に イシルさんの腕がああぁぁ!!
サクラは自転車を漕ぐ足を速め――
「うわああ、どいてアイリーン!!」
サクラは猛スピードで自転車を漕ぎ、バーガーウルフへ出勤途中のアイリーンを追い越していく。
「きゃっ!」
アイリーンは振り向いておもわず声をあげた。
必死で自転車を漕ぐサクラの形相が凄すぎて。
サクラは ひいいぃ!と、叫びながら 目の前のカーブを 猛スピードで曲がり、五の道のへと消えていった。
「……なにやってんの、あの二人は、、」
だって、、
こんなの見られたら、、
(また道に変な名前つけられちゃうぅ――――!!)
三の道、カップルロードの二の舞はゴメンです。
漕いで、漕いで、漕ぎまくって、、なるべく早く人目のつかない場所まで行かなくては!!
とりあえず一番危ないリズとスノーには見られなかった!
クリア!!
(うおおぉぉ――――!!!)
「おぉ、イシルさ……」
「メイ先生こんにちは!さようなら!!」
声をかけるメイ先生の前をサクラはマッハで通りすぎる。
イシルはそんなメイに 自転車の後ろでヒラヒラと手をふり遠くなる。
「あら、今イシル様っておっしゃいました?」
「ホッホッホ、、エリザさん、『マイマイ草』にやられましたかな、幻聴が聞こえましたかねぇ~」
メイが作業中に顔をあげたエリザに返事をする
「マイマイ草なんて生えてましたかしら……」
「ホッホッホ」
「私、この薬草園は網羅したと思いましたのに!確認して参りますわ!」
「ホッホッホ」
エリザは畑の中にマイマイ草を探しに入っていった。
メイは 遠くなった自転車を眩しそうに見つめて呟く。
「青春じゃなぁ~……」
◇◆◇◆◇
「ゼー、ハー、、」
「サクラさん、スピード落としては?」
イシルに言われて サクラはまわりを見る。
このあたりに人通りはない。
サクラは見ている人がいないのを確認し、自転車の速度をおとした。
五の道の先はお墓だって言ってたし、人はいない。
……疲れた
ほっと息をつく。
(!?)
安心したのもつかの間、イシルが後ろからサクラの腰を両手で抱き直し ぽふんと顎をサクラの肩に乗せてきた。
(う///)
背中があったかく、二人きりをよけいに感じさせる。
(うわあぁぁ///)
一気に顔が熱くなり、別の意味でうまく息ができない。
背後でイシルかくすっと笑ったのがわかった。
余裕だな!ちくちょうめ!!
二人ともに何も話さず自転車のカラカラという音だけがやけに耳に届く。
お互いの体温がその存在を示し、背中のイシルが少し動くだけで 触れられている部分から熱を感じ、ドキドキしてしまう。
自分が後ろだったら このドキドキが伝わってしまっていただろう。
前でよかった。
背の高い林道に入り、ひんやりと空気が変わったような気がした。
オーガの村の竹藪に似た空気。
木漏れ日の中を 二人を乗せた自転車は ゆっくりと進んでいく。
「少し休憩しましょうか」
林道の途中で後ろからイシルがサクラに声をかけた。
声、近っ!!!
「あれが 墓地の入り口です」




