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234. 女子旅 20 (エピローグ) ★

挿絵あり(11/15)20時差し換え

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m


11/15 15時 数え唄修正しました。




バーガーウルフの休憩所でイシルはようやく鼻眼鏡を外してくれた。


「あまりにもまわりが鬱陶しいので変装してたんです」


「いやいや、イシルさん、あれは変装ではなく仮装ですよ、なんてチョイスするんですか」


サクラが笑いすぎて痛くなったほっぺを揉みながらイシルに抗議する。


「あれで振り向くと 全員硬直するんですよ」


そりゃびっくりですよ、後ろ姿はあんなにイケメンなんだから


「シズエからもらったんです。一緒に町に出かけた時にかけろと言われて」


シズエ殿、容赦ないな。


「笑ってくれたのはサクラさんとランだけでした」


うん、イシルさんが結構冗談言うの知らないと どう反応していいのかわからないよね。


「今日はあれをつけて、周りの音を完全にシャットアウトしてひたすらバーガー作ってたので 快適でしたよ」


それでバーガー製造マシーンみたいになってたのか。


(あれ?音を完全にシャットアウトって、イシルさん、私が声かけたの 聞こえてたよね?)


やぶ蛇になりそうなので サクラはあえて聞かないでおいた。

これは聞いたら完全に自分が窮地に陥るパターンだ。

学習しました。


「サクラ、昼食ったのか?」


何故かランがワクワクした様子で聞いてくる。

なんだ、ランが食事の心配してくれるなんて、怖いな。


「いや、まだ。スノーの運転が凄くて それどころじゃなかったから」


「イシルもまだだろ?」


「ええ」


ランは『そうか、しょうがないな』と言いながら 言葉とは裏腹に 嬉しそうに亜空間ボックスからバーガーを2つ取り出した。


「食えよ」


ちょっと恥ずかしそうにサクラとイシルに渡し、席を立つ。


「何?」

「何ですか?」


サクラとイシルはガサガサと包みを広げる。

何の変哲もない 普通のコロッケバーガーのようだが?


「イタダキマス」

「頂きます」


サクラとイシルがかぶりつこうとしたら ランから声がかかった。


「揚げたてだからな!気を付けろよ」


そう言って サクラとイシルの前に水を置く。


「えっ!?」

「ラン??」


ランが、気を遣ってる?


イシルが何かに気がついた。

これは、自分が作ってランに渡したものではない。


「もしかして、君が作ったんですか?」


「……おう」


ランの手作り!?

驚くサクラとイシルに ランが言い訳のように経緯を話す。


「昨日、コロッケバーガーが足んなくなってさ、リベラは料理致命的アウトだし、ハルも揚げ物出来ないから、その……いつも見てるオレが、、作ることになって……」


作ったんだ……

油 怖がってたのに お客さんのために作ったんだ……


()()()()残ってたから、、」


食べてほしかったんだ、私とイシルさんに。


「ランもお店手伝ってくれたんだね、ありがとう」


サクラはランの頭をくしゃっとなでる。

ああ、ランも成長してるんだな。


早速ランのコロッケバーガーを頂く。


「あぐっ///ん~」


出来立てのコロッケバーガーは ちょっとソースが多めだけれど、油もちゃんときってあり、サクサクだ。


「美味しい///」


「そうか」


ランが嬉しそうだ

イシルもコロッケバーガーにかぶりつく。


″サクッ″


モグモグしながら ふっ、と笑う。


「うん、美味しいです、キャベツが沢山入ってて」


「イシルが野菜食えって言うからさ」


褒められた照れ隠しに、ランは嬉しさを押し込めて喋りまくりだす。


「オレはさ、売り切れゴメンにしようとしたんだけど、リベラがどうしても作れって言うから……」


「うん」


カプッ、とサクラはコロッケバーガーを食べる。

コロッケとキャベツとソースにマヨネーズのちょっとした酸味がうまい。

ランが初めて作ったと思うと 更にうまい。


リベラ(アイツ)有無を言わせねーんだよ、バカって言うし、怒るし、オレを使うし、断れなくて……」


「もぐもぐ、、ランが断れないのはさ、リベラさんの怒り方に愛を感じるからだよね」


「は?」


ランがきょとんとサクラを見る。


「いや、だってリベラは……」


女が好きなはずだと ランは思う。

それでもサクラはリベラはランに対して『愛』があると言う。


「リベラさんの怒り方は愛情があるよ。恋愛じゃないよ?ランのためを思って言ってくれてるの わかるもん」


「どこが?」


ランはピンと来ないらしい。


「ん~、私が見たのだと、ハル君のところにエールを取りに行かせたり、サボった罰にしごいたり?リベラさんは自分の事のためにランを叱ったり 使ったりしてないからだよ。『友達を助けに行きなさい』『仕事は責任持ってやりなさい』って教えてくれてるわけでしょ?」


「そうか~?」


「ランがどこかで納得してるから 断れないんだよね」


バーガーウルフに引っ張っていかれた日に言ってた事、亜空間ボックスの開閉をギルロスにやらせろと言うランにリベラが言った言葉――


″隊長にそんなことさせられるか、バカ者″


確かに、リベラの言うことは道理が通っている。

組織というものの常識をランは知らないから 教えるために怒ったのだ。


「リベラはオーガの村に弟弟子(おとうとでし)が沢山いるみたいですからね、慣れているのでしょう」


イシルが付け加えた。


心配してくれるギルロス

怒ってくれるリベラ

見守ってくれるイシル

包んでくれるサクラ

ランが好きなサクラ――


(よくわかんないけど、愛って色々だな)





◇◆◇◆◇





「ハルくん、これ お土産なんだけど」


店じまいの時間になり、最後のお客が帰った後、帰り支度をしているハルに サクラが小瓶を差し出した。

ラルゴもオズももらったようだ。


「いいの!?ありがとう!、、です!」


ハルはありがたく受けとる。


「お手伝い 女の人だと思ったから こんなのなんだけど……」


ハルは何かなとラベルを見る。

ガラスのビンの中に沢山詰められたキラキラと光るグミ……


(つぶつぶ……)


ハルの目が とろんと蕩けるように下がる。


「ハルくん?」


ハルは酔ったように頬を染め 笑顔を浮かべると、フワフワのベールが舞うように サクラを両手でふんわり抱きしめた。


「好き///」


「「うわーっ!」」


緊急事態発生!!

慌ててランがイシルを押さえる。

イシルの手にはいつのまにかトネリコの杭とハンマーが握られている!

吸血鬼の退治の仕方だ。

ハルは半吸血アルカード、、


確実に()る気だ!!


「ハルをサクラから引き剥がせ!!」


ランに言われてラルゴとオズが あたふたとハルをサクラから引き剥がす。


ハルはすんなりサクラから離れると バーガーの包み紙を一枚カウンターに引いて その上にビンの中のグミをバラバラと出し 数え始めた。


「イシル、落ち着け!ハルの言う『好き』はグミの事だからな!な!」


ランがイシルに引きずられながらもなんとか押さえる。


「サクラ!帰るぞ、手伝えよ!」


「お、おう、イシルさん帰りましょう!」


サクラとランは イシルをなだめながら 森の家へと帰っていった。


「はー、ビックリしたー」


ラルゴは ほっと胸を撫で下ろす。

ハルはグミを一粒ずつ愛しそうに眺めては数えながらビンに入れている。





挿絵(By みてみん)





(唄ってる?)


小さな声だが、切ないメロディーが聞こえる。

ハルの甘い声で……


ラルゴは耳を傾ける。


ひとつ (ひと)() 夜道(よみち)小道(こみち) 一人(ひとり)ぼっちで(ある)かないで

ふたつ (ふか)(きり)(なか) (まぎ)れて(きみ)(さが)しに()るよ

みっつ ()つからないように (はや)家路(いえじ)につきなさい

よっつ 夜這(よば)(から)まる(つた)(あし)()られて(つか)まれば

いつつ (いと)()いたし(きみ)のもとへ

むっつ (むか)えに()るよ ドラキュラの馬車(ばしゃ)

ななつ ()いても(たす)けは()ない

やっつ 闇夜(やみよ)(なが)れる(しずく) (しろ)(はな)(あか)()

ここのつ この()のしがらみから

とおで (とお)くへときはなつ


ディオ・ニーミヤ、ディオ・ローチオ

(やみ)()った(しろ)(はな)

ディオ・ニーミヤ、ディオ・ローチオ

(かぜ)にそよいで(そら)()


(とお)く、(とお)く、お(そら)彼方(かなた)――

(とお)く、(とお)く、お(そら)彼方(かなた)――



(こわっ!!)


「君は赤いイチゴ味、、かわいい」


ぱくりとハルが赤いグミを食べる。


「ん///甘酸っぱい」


はぁ、と周りからため息が漏れる。


「君は紫 ブドウ味、、キレイだね」


あむっ、と食べて 噛まずに舌の上でころがし、ふふっと妖しく笑う。


「あかん!ラルゴはん、あかんで!」


「え?」


「嬢ちゃん達が――」


オズに言われて周りを見ると、広場にいる女性陣が 皆とろんと目が蕩けている。

二人程、寝てる?これ、子守唄?


「君は黄色 パイナップル、、チャーミング」


ぽいっ、とハルがグミを口にいれる。





挿絵(By みてみん)





ハルの口許を見て ああ、と まわりからのため息。


「わあ、意外、、バナナだ///好き」


こくんと喉を鳴らし飲み込み ペロリと舌で唇を舐め、(あで)やかに笑う。

もう一人、寝た――


「わー!!」


ラルゴは慌てて ハルを押さえる。


「なぁに?ラルゴ」


「ハル、奥で食べよう!休憩室で!な!」


「ん~」


「オレの分も数えていいから!」


「わてのも数えさしたるさかい、な!」


ラルゴはハルの後から脇に手を差し込みハルを抱えあげる。


「オズ!足持て!足!!」


オズがハルの足を持ち、二人がかりで エッホエッホと 休憩室へ。

ハルはされるがまま、グミを持ち うっとりと眺める。


「君は緑、、なにかなぁ」


「わー!まだ食うたらアカーン!おハルはん!!」

「弱点じゃないじゃないかハルーっ!!!」


どうやら野郎には効かないらしいから弱点、なのか?

ハルの姿が裏に消えると うっとりとしていた女性達も、眠ってしまった女の子も 皆夢から覚めたように無事覚醒した。





数え唄の呪文、逆回転すると……

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― 新着の感想 ―
[良い点] ランにゃん、すっかり成長して……;; 誇らしそうに嬉しそうにしゃべりまくる姿、熱いからと声をかけてお水を出してくれる姿がもう。 ママンに見せてあげたいです! ここにきて、いろいろな愛のカタ…
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