230. 女子旅 16 (カミングアウト)
リズとスノーがひょいっと五つのベッドを中央に寄せて 六つの枕を付き合わせる。
女子旅最後の夜。
「旅の最後の夜は 内緒話が定番ですよ」
「しかも恋話限定ですぅ~」
またリズとスノーが暴走し出した。
この双子は出会ったときからそうだった。
恋に恋する夢見る夢子ちゃん。
「あんたたちないでしょ、恋話なんて」
アイリーンが リズとスノーに突っ込む。
「ありますよ!私にも」
「ありますぅ~」
「なぁに、お兄さんが好きとか無しよ?」
「う、、」
「ち、ちがいますよ」
そうだったんだな、かわいい。
「じゃあ誰よ」
「「イシルさん」」
ぶふっ!!
「お話ししたことはなかったんですけど、はじめてお見かけした時には絵本の中から王子さまが出てきたのかと思いました///」
「あれはぁ、私たちがまだトムやエイルくらいの頃かなぁ。幻かと思いましたぁ。魔物討伐に行く姿が凛々しくてぇ///」
「強くて、優しくて、勇ましい……」
「お見かけしたのはその一度だけでしたしぃ、魔物を倒した後全然村に来なくなってぇ……」
ああ、イシルさん青ヒゲ伝説引きこもり中の話しデスネ。
「サクラのおかげでお話しすることができて」
「もう、天にも昇る気持ちでしたぁ///」
「……それ、恋話?」
アイリーンが突っ込む。
「そうですよ!私達の想いは遂げられたんです!」
「成就しましたぁ」
この子達のイシルさん信仰は最近ではなかったのね。
「サクラは、イシルさんとはもう///」
「契りをむすんだんですかぁ///」
「は?」
ち、ちぎり!?
なんだ!?この子達の言う『契り』って、、
「Aは、終わってますもんね~」
「見ちゃったしぃ///」
「「ねー」」と声を合わせて顔を赤くする。
み、見られた?もしや、さっきの窓辺でのアレを!?
「カップルロードの名前まで生まれるくらいだし」
「憧れるなぁ……手繋ぎ///」
Aは、手繋ぎか、ビックリした。
「やっぱりサクラさんはイシルさんとお付き合いされてるんですか?」
ヒナがサクラに聞いてきた。
「してないしてない!」
慌てて否定すると、アイリーンに「まだそんな事言って」という顔をされる。
「そう、ですか……」
そして何故かヒナから暗い返事が帰って来た。
そういえばヒナには何回かこの質問をされている。
はじめて会った時にも聞かれたなぁ。
「なんか、まずいの?」
サクラの質問に ヒナは少し考えてから口を開いた。
「サクラさんは、リベラさんの好みのタイプなんです」
「は?」
「私、リベラさんが好きなんです。だから、サクラさんがイシルさんとお付き合いしてたらいいなと思って……」
まさかのヒナのカミングアウト!?
女子旅女子トーク随分なネタ持ってますね!!
「リベラさんは相手にしてくれないんです。私の気持ちは単なる憧れで、男の人を怖がってるだけだって、私に手を出してくれないんです」
手を出すって、ヒナさん!?
「でも、それはさ、ほら、それだけヒナの事を大事に思ってるってことじゃないかな?」
「そうでしょうか」
「そうだよ、ね?アイリーン」
サクラは一人では身に余るヒナの悩みをアイリーンにふる。
アイリーンもサクラに同意してヒナを励ます。
「そうね、アタシもそう思うわよ。自分本意に食ったりしないって事はさ、ヒナの事をちゃんと考えてくれてるって事だと思うわよ?」
「手を、だす?」
「喰っ、、ちゃうぅ?」
ああ、リズとスノーがぐるぐる考えてる
「きゃあぁ!それは///」
「Zまでいっちゃうってことですかぁ///」
もう、『キャー』を通り越して『ギャー』ですよ。
Zは何で、是非ともAの手繋ぎから何があるのか聞いてみたいものだが、今つつくとやぶ蛇になりそうなので止めておこう。折角自分とイシルから話題が反れたのだから。
「それで、どうだった?ヒナ、今日男の人と食事してみて」
アイリーンがヒナに聞く。
今日、、結局本当に合コンしたようだ。
「怖くは、なかったです。むしろ楽しかった」
「でしょ?吟味したもの」
「へぇ、どんな人だったの?」
サクラが今日の合コンの相手を興味津々質問すると、リズとスノーが身を乗り出してきた。
「今日、アイリーンがゲットしてくれたのは――」
「カトレア街の騎士さん達でしたぁ~」
カトレア街とはアザミ野のひとつ先の大きな街らしい。
「コロッセオに腕試しに来てたみたいで」
「腕相撲も中々強かったですよぉ~」
「え?リズに勝ったの!?」
ドワーフじゃなく 人、だよね?
「そこはアイリーンの教え通りに」
「わざと負けましたぁ~」
てへっ、と 二人して笑う。
アイリーン、なに教えてんだよ。
「男の人と食事したのなんて初めてです///」
「椅子ひいてもらっちゃいましたぁ///」
「女の子扱いですよ!」
「料理も取り分けてくれるんです!」
『キャー///』と大はしゃぎ。
「うまく行ったんだ」
「ちっともうまくないわよ」
あれ?みんな好印象に聞こえたけど?
「そいつらさ、道に迷ってたから案内してあげたのよ。見た目ヨシ、身なりヨシ、態度も身のこなしもヨシ、で、向こうも五人だし、丁度いい。案内しながら少し買い物につきあったら、、」
「?」
「奥さんへの手土産買ってた」
「ありゃ」
「全員既婚者。でも、お礼に食事をっていわれてさ。まあ、リズもスノーもヒナもこういうの初めてだったし、変なの選べないじゃない?シャナも乗り気じゃないし。向こうも浮気とかそんな空気は出してなかったから、ただ皆で楽しく御飯食べて はい、サヨナラ~」
リズとスノーとヒナの経験値をあげただけ。
「そりゃあ紳士だったわよ~、公務員は違うわね、やっぱり。一人くらい独身がいてもよかったのに……」
全滅か。お気の毒な。
「ま、今度部下を紹介してくれるっていうから 収穫はあったわね。バーガーウルフの宣伝も出来たし」
流石アイリーン、転んでもタダでは起きないようだ。
「でもさ、サクラも好きなんでしょ?イシルのこと」
わあ!反れたと思ったら急カーブで帰って来たよこの話題。
ヤメテアイリーン!!
「ドワーフの村ではさ、影でイシルの事を思ってる女だっていると思うよ」
アイリーンは話しながら チラッとシャナを見る。
「その子達のためにも諦めがつくように ハッキリしてあげたら?イシルはどうみたってアンタしかみえてないじゃない」
うぐぐ、、あえて見ないようにしているところを突きつけられてイタイ……
「私、一年したら、、もう一年ないか、あと10ヶ月で国に帰らなきゃいけないんだよね。そして、もう二度と会えない、だから、恋愛どころじゃないってわけ」
「えっ!?なにそれ、婚約者でもいるの!?」
「いないいない!国の決まり、かな」
「だから付き合えないっての?イシルは追っかけていくわよ、きっと」
「イシルさんは、私の国には入れないよ」
「なんだってやるでしょ、アイツなら」
「入れないんだ」
サクラの断言にアイリーンが勘ぐる。
「あんた、何か隠してる?」
うん、と サクラは頷く。
皆には話していいかな。
ヒナもカミングアウトしたんだ。
私もカミングアウト
「私ね、別の世界から来たの。神様がこの世界に連れて来た」
「「は?」」
アイリーン、ヒナ、シャナがすっとぼけた顔をした。
中々のレア顔だな。
「……勇者ってこと?」
今まで黙っていたシャナの言葉に とんでもない!と、サクラが否定した。
「いやいや、違いますよ」
「だよね、魔力少ないし」
アイリーンが続ける。
「アンタ、何しに来たの?」
サクラが来た理由、それは……
「……ダイエット」
「「ダイエットぉ?」」
「私の世界には『米』という食べ物があって、それを食べちゃわないように神が私をこの世界に連れて来たっていう……」
「つまり食べすぎを我慢できないから隔離された、と?」
「……そんな感じ」
「「……」」
「……バカ?」
「うわ、ひどいアイリーン、私だって傷つくよ?」
アイリーンがサクラに枕を投げた
「だってバカじゃない!」
サクラはよけて 枕はスノーにあたる。
「だって食べたいんだもん!!」
「好きなんでしょ!」
「好きだよ!悪いか!」
イシルのこと?米のこと??
サクラも枕を投げ返す。が、アイリーンがひょいとよけてシャナに当たる。
「あっ、シャナさん、すみません」
「私も、好きです」
「「え!?」」
シャナがバフン と サクラに枕を投げる。
「サクラさんの秘密を知ったので 私もお返しです」
え?シャナさん、好きって?誰を?何を?米!?
サクラの横でリズとスノーがサクラのかわりに枕を投げ、ヒナとアイリーンに命中する。
「きゃっ///」
「はふっ///」
「「命中~」」
リズとスノーはにゃははと笑う。
「……やりましたね」
「アンタ達のはイタイのよ!加減しなさいよね馬鹿力!」
大枕投げ大会へと突入してしまった。
枕と笑いががぽんぽんと飛び交い、、
よく分からない連帯感が生まれ、、
女子旅の最終夜は 弾けた枕の羽根が舞う中、、
騒々しく 幕を閉じた。




