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227. 女子旅 13 (コロッセオ地区)

ナンパ師イシルとサクラのデート引続き甘々ご注意くださいm(_ _)m




サクラとイシルはパステル通りからメイン通りに戻り、町の奥へと進む。


「このあたりは戦士や剣士風の人が多いですね。オーガの村が近いからですか?」


「それもありますが、アザミ野にはコロッセオがあるんです」


コロッセオ、円形闘技場だ。


「サクラさんたちのいる宿のあたりは観光客が泊まる地区ですが、コロッセオのまわりは 冒険者用にまた違った宿や店が並んでいます」


「面白そうですね」


「ええ、今度行ってみまょう」


「今日はダメなんですか?」


ローマのコロッセオみたいなヤツでしょ?

現役コロッセオ見たい!


「今日、ですか……」


なにかあるのかな?

イシルは行きたくなさそうだったが、結局、行ってみることになった。


コロッセオ付近になると 成る程、ガラリと町の顔がかわる。

予想屋が並び、昼間っから酒を飲む男達。

腕試し屋もいる。

『一本とれたら金一封』とか、『腕相撲に勝ったら景品』とかをもらえるヤツだ。

リズとスノーが嬉々として挑戦しそうだわ。

このあたりは少しガラが悪いからイシルさんは連れてきたくなかったのかな?


料理もガッツリ系が多い。

ざっくりとした肉の大鍋煮込み料理、大ぶりの肉の串焼き、肉しか挟まっていないようなパンなど、安くて量が多い。


「出場者は選手カードというものを持っていて、見せると半額にしてくれます」


「町をあげて応援してるんですね」


学生街、そして学割みたいだ。


「町の大事な収入源ですからね」


サクラとイシルはお昼のかわりにピザを半分に折ったものを購入し、コロッセオまでの道を食べながら歩いた。

シンプルに マルゲリータ1種類のみしか売ってなかった。

トマトソースに白いチーズがこれでもかというくらい入っている。


コロッセオの外観は見ごたえがあった。

壮大な石造りの神殿のような円形の建造物。

入場時の混雑を回避するために作られた80箇所ものアーチ型の出入り口が印象的だ。

その大きさに圧倒される。


一階部分はチケット売場の前までは入れるようになっていて、絵が飾られていた。


「この肖像画の人達は誰ですか?」


「歴代の殿堂入りの猛者達です」


「へぇ~」


筋骨粒々の戦士、日本刀みたいなのを携えた剣士はオーガかな?ごっつい鎧の男は巨人のよう。額に第三の目を持つのは三ツ目族とでもいうのか……


「外の屋台も見ましょうか、観光客用に色々出てますよ?」


「さっきピザ食べたばかりなので、もう少し見ましょうよ」


現世でこんな絵を見るには金がかかるのに見ないなんて勿体ない。

そんな中、サクラは一枚の肖像画に惹かれた。

他とは違い、繊細で華がある画風。


「あの絵、素敵ですね~ミュシャの絵のようで」


サクラはその絵にパタパタと近づく。


「あ、やっぱりエルフだ。ていうか、イシルさん似てますね」


ね、イシルさん!と サクラが振り返ると、イシルが気恥ずかしそうに苦笑いしていた。


「え?ご本人?」


「バレましたか……」


これがあるからコロッセオに来たくなかったのか。


「サクラさんに見られる前に燃やしてしまおうと思ったのに」


それって犯罪では?

本人だからいいのか?


「これ、女の人の服にみえます」


男女の区別のないユニセックスな服のようだ。


「その当時の流行りです」


ありますよね、ボディコン、肩パット、ケミカルジーンズ……当時は流行っていたのに今は見ないもの。

これは今もありそうですが。ウツクシイです。

皆様を魅了したことでしょう。


「実際着たおぼえはありません」


ああ、絵師さんの趣味ですね、わかります。


「危なく絵で脱がされるところでした」


それもわかります。

サクラはまじまじと観察する。


「顔はあんまり変わりませんね。少し幼いかな?」


生意気そうでかわいい。


「あんまり見ないで下さい」


この絵持ち帰りたいなぁ。


「もう、行きますよ」


イシルが強引にサクラを外に連れ出した。


「もっとじっくり見たいですよ、イシルさん~」


アンニュイな表情がたまりません!


「ダメです。そんな顔で見つめられたら若い頃の自分に嫉妬してしまいます」


イシルがぱふんとサクラの両頬を両手で包み サクラの顔を自分に固定させる。


「見るなら今の僕を見てください」


今日はグイグイきますね。


「いえ///ダイジョブデス」


ああ、今日は全力で来るんでしたねイシルさん、ナンパ師モードでしたね。


サクラとイシルは外に出ると、屋台を冷やかしながら闘技場広場を抜けた。


「この先に水路があるんですが、小舟に乗って宿の方に戻れます。船上から見る町の風景はまた違った趣が見られますよ」


「風流ですね~」


サクラとイシルは水路へと歩く。

少し日が傾いてきた。

近くに教会があるのか、鐘の音が聴こえる。


教会のわきを通るときに 美しい聖堂とは裏腹にすっとぼけた顔の石像があるのが見えた。


「あれは何ですか?」


「ああ、あれは『愚者の顔』ですね」


サクラとイシルが『愚者の顔』に近づく。

結構な大きさで、鼻、口、耳が空洞になっていた。


「手を入れて互いに質問するんですよ。ウソをつくと手が抜けなくなり、愚者に引き込まれるんです」


あれだ『真実の口』の 変形バージョン。


イシルが愚者の右の耳に手を入れる。


「サクラさんも」


「えー、、」


正直こういうのは怖い。


「遊びですから」


「うーん……」


某有名映画では男性が手を入れて抜けなくなったとウソをついて女性をびっくりさせるというシーンがあったが、ここは異世界、魔法の世界。

ウソをついたら本当に愚者に連れていかれるかもしれない。

口はなんとなく噛まれそうで怖いので、サクラは左の鼻に手を突っ込む。

ひんやりとした石の感触。

結構奥まで続いてるな……


「じゃあ、僕から」


イシルからサクラに質問する。


「僕の第一印象は?」


イシルさんの第一印象……

ウソじゃなく、無難な答えを探す。


「エルフって本当にいるんだな~って……」


めちゃんこ美形だなとは思ったけど、それって定番だし、システム的なナビゲーターキャラかと思ってたなんて言ってもわからないだろう。


「そうですね、サクラさん『エルフは雪の上を歩けるって本当ですか?』って僕に聞きましたからね」


うん、聞いたな、そんなこと。

よし、クリア!さて、私の番だ。

折角だからいつも聞けないようなことを聞こう。

なんか、答えづらいようなのがいいな。

やられっぱなしだから、回避できないような具体的な……


「今までの彼女の人数は?」


「え?」


イシルが戸惑っている。

数字なら具体的だ。


(うひひ、珍しく困ってる)


「……憶えていません」


「あっ、逃げましたね」


「本当に憶えていないんです」


ほらね、と、手を抜いてみせて嘘じゃないと証明する。


「え~、じゃあ、10人以下ですか?」


「……いいえ」


「20人以下ですか?」


「質問は交互です。次は僕ですよ」


残念。

再びイシルが右の耳に手を入れる。


「では僕の番です」


「はい」


「サクラさんは何人ですか」


「え?」


「彼氏」


「うっ、、」


「仕掛けたのは貴女ですよ」


「かっ、、片手で足ります」


「曖昧ですね、片手で足りるなら憶えてないことはないでしょう」


イシルから反撃をくらう。


「三人以下?」


「……はい」


「そうですか。いいでしょう」


「次は私ですね。で?20人以下ですか?」


「まだ聞きますか……」


「知りたいんです」


サクラがニヤリとわらう。


「僕が困るの見たいだけですよね」


「そんなことないですよ、純粋な疑問です。20人以下ですか?」


「いいえ」


うぐっ、自分で聞いといてなんだけど、ちょっとショック。

まあ、1200年の歴史ですからね。

平均がわからないから多いのか少ないのかわからない。

単純に1200÷20=60だから60年に1人だとすると少ないのか?


「じゃあ僕です」


はい。


「僕の事好きですか?」


「は?」


「好きですか?僕の事」


「……いいえ」


サクラはウソをつく。


″ガシッ″


「うわあぁ!!」


ウソをついたとたん、サクラは手首を掴まれ悲鳴をあげた。


(愚者に 引き込まれるぅ!?)


「ごめんなさい!嘘です!好きです!」


愚者の手がサクラの手首からそのまま手のひらに滑り、サクラの手をぐいっと引っ張った。


「ちゃんと言わないと連れていかれますよ」


(ひいいっ!!)


「イシルさんが好きです!」


愚者の手が止まる。

が、離してはくれない。


「あれ?」


イシルが嬉しそうに笑っている。

そして、握られた手には覚えがある。

この手は……


「イシルさんの手、ですか?」


「はい」


愚者(イシル)の手が愛しそうにサクラの手を指で撫でた。

5つの穴は中で全部繋がっていたのだ。


また騙された。


「あ~……あれですよ″好き″って、あの、人間的に好きの意味であってですね、、」


「はい」


「男とか女とか関係なくですね、、」


「はい」


「人としての好きであって、その、恋愛対象って意味では、あの、、」


「はい、男でなく女であっても″僕の事が好き″なんですよね?」


「そうなんですけど、それも何か違うような……なんていうか、ニュアンス的な」


「大丈夫です。わかってます」


イシルは上機嫌だ。

本当に わかってます?イシルさん。








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