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222. 女子旅 8 (タワーバーガー) ★

挿し絵挿入しました(11/3)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m




サクラは孤児院の年長さん達と夕飯のバーガー作りをしている。


キッチンにはハンナさんが焼いてくれたバンズと 生野菜、グリルされた野菜、パテを中心とした肉類など、具材が並んでいる。


「先ずは一個皆で作ってみようか」


サクラが子供の顔程もあるバンズにバターを塗る。

今日のハンバーガーはお子ちゃま仕様なのでカラシは抜きだ。


「さあ、好きなものを挟んでみよう!」


先ずはバンズの上に肉汁たっぷりのパテ。


「ベーコンもいい?」


「いいよ~」


「目玉焼きも?」


「いいよ~、なんでも!」


「俺はハムが好き!」


肉ばっかりだな


「サラダは入れないの?」


サクラが子供達に聞く。


「だって腹にたまらないし」

「肉がいいよ」

「野菜って草の味がするじゃん」


いや、草だから。


「知らないの?ハンバーガーは野菜も一緒に挟んで食べることで更に肉を美味しく感じさせるんだよ?」


「そうなの?」


「そうだよ」


サクラが力説する。


「この『レタス』、これだけで食べると確かに草の味がする。でも、これをハンバーガーに入れると、レタスのシャクっとした食感に ホロホロとほどけるハンバーグの挽き肉の弾力が重なる。むぎゅっと噛むたびに肉汁が溢れて、レタスの瑞々しさが肉の旨みを比較するように引き立ててくれる」


子供達はサクラに見いり、味を思い浮かべている。

サクラはさらに続ける。


「レタスの上にトマト。ちょっと硬めのトマトがいいな。トマトの酸味が 後を引く肉のあぶらっぽさを さっぱりと引き締めてくれ、1段階上の世界に連れていく」


「上のせかい、、」

「とまとのさんみ、、」


想像しただけで胃が反応してお腹がなりそうだ。


「そしてオニオンスライス、シャキッと水にさらされてハリを持ち、噛むと独特の甘みと辛みが鼻に抜け、ハンバーガーにパンチを加える」


「パンチ!?うわ、、」

「なんか、すごそう……」


ここで今まで力説していたサクラが大げさに身を引いた。


「キミタチにはまだオトナ味すぎるかな~」


「そんなことない!」

「食べられるっ!」


引いた波に引き寄せられるよう子供達が身を乗り出す。

サクラがさらに引く。


「ピーマンは、無理だろうな~、あの苦み、、」


「た、食べられるよ!」

「子供じゃないんだから」


子供達がムキになる。

野菜も食べてほしいが、ちゃんと美味しく食べてほしい。


「安心したまえ、諸君!そんなオトナ味を残しながらも、マイルドに仕上げてくれる魔法の食材があるんだよ?」


「何、なにそれ」

「魔法の食材、何だろう」


「わかる?」


「秘密なの?」

「教えて、サクラ」


「知りたい?」


子供達はうんうんと頷く。


「それはね……」


思わせ振りにサクラが()()()


「チーズよ」


「「チーズが!?」」


「そう。どんな食材も包み込み、味をマイルドにしてくれる魔法の食材!肉、野菜、チーズ……これらをバランス良くバンズで挟むと、それはもうえもいわれぬ極上の味に仕上がるのです!!」


「「ゴクリ」」


「さあ!勇者達よ、極上の味を求めて、いざ、旅立たん!!」


「「おーっ!!」」


みんなの心が1つになる。


「バカ言ってないで早く作んなさいよ」


「……すみません」


スープを作っていたアイリーンに怒られた。


「じゃあ、レタスをはさむよ」

「マヨネーズつける」

「いいね~」

「目玉焼き!」

「一回パンを挟もうか」

「いいの?パン重ねて」

「ダブルOK」

「じゃあ、ハンバーグ二枚重ねでもいい?」

「もちろん!」

「アボカド~」

「トマト入れてみよう」

「そしたらスライスオニオン」

「スライスチーズも?」

「行っちゃおう」

「レタス」

「も一回パン」

「ハンバーグ」

「カリカリベーコン!」

「トマトソース」

「焼いたキノコ」

「ここでチーズを炙ってトローッと、、」

「うわあ!!」

「これも、、」

「こうして、、」

「これつけよう」


最後にフライドポテトをまわりにしきつめ盛り付ける


「勇者の()の完成!」


「「うわあ!」」


こうして、特大のタワーバーガーが完成した。


「あんたね、こんなのどうやって食べるのよ」


「え?ハンバーガーはかぶりつくでしょ」


アイリーンに突っ込まれたが、これは『夢』だ。

食べにくさは関係ない。

子供の頃の『お誕生会』みたいなわくわくを子供達と楽しみたいのだ。


「まったく、あんたは年取ってるくせに子供ね」


アイリーンは呆れ顔だ。

サクラがタワーバーガーをダイニングに運ぼうとするが、グラグラしてうまく運べない。


「だから言ったのに、貸しなさいよ」


「アイリーン、崩さないで!」

「そのまま持っていきたいよ~」


アイリーンがタワーバーガーをサクラから奪ったので 子供達は崩されるんじゃないかとハラハラだ。


″ぷすっ″


アイリーンは 長い串焼き用の長い串を出すと、タワーバーガーの上からぶっ刺した。

背の高いハンバーガーが 一本支えを入れたことによって安定する。


「これで運べるでしょ」


「ありがとう、アイリーン」


「ふん///」


サクラはタワーバーガーに刺してある串の先端に 千代紙で()をつける。

お子さまランチに刺さっている旗のように。


さあ、食卓に運ぼうかというところで、ダイニングから子供達の悲鳴があがった。

アイリーンがダイニングに走る。


「どうした!大丈夫!?」


アイリーンがダイニングに飛び込むと、興奮した子供達が一斉に喋りだした。


「あのね、あのね、()()()()が来たんだ」

「大きな鳥さんが火を吹いたんだよ」

「狼さんが空を飛んだの!」

「おねーちゃんが風をだして、凄いの」

「火の玉が飛んできて 怖かったよ~」

「大きなハンマーで パコーンって」

「おっきいイノシンがいたよ!」

「この前来たの、同じおじちゃんがいたよ」


なにがなんだかよくわからない。

その時シャナとリズが外から入ってきた。


「何があったの?」


アイリーンの問いにスノーが答える。


「強盗がきたんですけどぉ、シャナさんが追い払ってくれましたぁ~」


アイリーンはシャナを見る。

シャナは心配顔のアイリーンに少し微笑んでみせた。


「もう、来ないと思います」





◇◆◇◆◇





子供達が食卓をキラキラした目で見つめている。

食卓には見たことのないようなご馳走が並んでいたのだ。

丸々ローストチキンにサーモンのパイ包み、ポトフ風コンソメスープにヨーグルトフルーツサラダ。

そして 何と言っても真ん中にそびえるタワーバーガー。


「「いただきます」」


ヒナが器用にローストチキンを切り分ける。

ジューシーな身にぱりっとした皮目、見た目だけじゃなく味もご馳走だ。

香草の香り漂うローストチキンに さっぱりレモンをかける。


「はぐっ、はふっ」

「あむっ、もぐっ」


子供達が夢中で食べ始める。

サーモンのパイ包みも サクサクのパイの中は ふっくらと蒸し焼きにされたサーモンの柔らかい身。

幸せの薄い桃色の身が パイとホワイトソースと絡まり 贅沢な味わいになっている。


「何これ!」

「美味しい!」


そしてサクラは ハンバーガーをサーブする。

残念だがこのままでは食べられない。

子供達が見守る中、サクラはハンバーガーに刺さった串を抜くと、タワーバーガーを三分割にした。

そう、丁度間に挟んだパンの部分で。

その上にバンズの()をのっけると タワーバーガーは三つの特大バーガーに姿を変えた。


ワクワクする不思議な食べ物。

子供達が身を乗り出す。


上階層、トロッとチーズとグリル野菜とキノコのハンバーガー

中階層、ハンバーグ二枚重ねのさっぱりトマトとアボカドのダブルバーガー

下階層、ハンバーグ、ベーコン、ハムのトリプル肉と目玉焼きのトリプルバーガー


サクラがナイフで切り分ける。

それは まるでケーキのようで、子供達の喜び様は凄まじかった。

赤、緑、茶色、ピンク、白とミルフィーユ状にきれいに重なった断面。

そこにとろっと流れる目玉焼きやチーズの黄色がかかる。

黄色は魔法の食材。

すべての食べ物を美味しくしてくれる。


テンションマックス!

切り分けてもビッグなバーガーにかぶりつく!!


「はぐっ、むぐっ」


サクラが食べたのは肉々しいトリプルバーガー。

パテは文句なく美味しい。香ばしく焼き上げた断面に対し、中はふっくら肉汁を閉じ込め、噛むと弾力を感じる粗挽き具合。

あっさりパストラミハムの黒コショウが程よく効いている。

ベーコンはあぶらのりが半端ない!

そこに目玉焼きの白身がぷりっとタンパクなのが トリプル肉のしつこさを軽減!

さらにレタスが手伝って 清涼感と新たな食感を産み出したところに、目玉焼きのトロッとした黄身がこっくりと巻き返しをはかる。

バター、BBQソース、マヨネーズと、調味料が程よく絡まる。

それをすべて包み込んだバンズは 具材の味を引き出すために少し甘めに作られている。


「んんっ、最っ高///」


ご満悦のサクラの隣でアイリーンがため息をついた。


「……最っ低ね」


「え?」


「見てごらんなさいよ」


アイリーンに言われてサクラは子供達を見る。

みなさん、幸せそうにハンバーガーにかぶりついていますが?


「ドロッドロのベッタベタじゃない!!」


子供達の手や顔は ソースまみれだった。


「あはははは!」


幸せの色に染まる子供達をみて、サクラが笑う。

子供達も笑う。


「じゃあ、皆でお風呂に行こうか」


アザミ野には銭湯(テルマエ)があるのだ。

皆で行ったら きっと楽しい。





挿絵(By みてみん)




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― 新着の感想 ―
[良い点] うわー! タワーバーガー楽しいい! こんなゴージャスな勇者の塔なら、ぜひとも挑戦したいです!!(ΦωΦ)クワッ しかもお料理はそれだけじゃないという天国。 ローストチキンにサーモンのパイ包…
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