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218. 女子旅 4 (ヨーコ様) ★

挿し絵挿入しました(10/30)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m





絶世の美女とはこのような(ひと)をいうのだろう。


神々しいオーラを放ち、涼やかでありながら威厳に満ちた声。

その容貌の美しさ はこの上もない。

屋敷に暗いところがなくなるほど光に満ちると言われる かぐや姫のように美しい。


ヨーコはいなり寿司を手に口に運ぶ。

己の命をなげうってでもかぐや姫を得たいと思った男達のように、世の男性諸君は ヨーコ様に食べられるいなり寿司さえ羨ましく思う事だろう。


ヨーコはいなり寿司を食すると うっとりと顔を蕩けさせた。


(うわ///いいもの見た)


サクラは如鬼(ニョッキ)がいれてくれた笹茶を飲みながら ヨーコの美貌を堪能していた。


「爽やかな香り……」


薄味でクセがなく、草の良い香りが感じられる笹茶にほっとする。

笹茶は初めて飲んだが、渋みが少なく、干し草のような風味のなかに ほのかに甘味も感じる。


「はう、美味しい///」


サクラのほっとひといきに 今度はヨーコが顔をほころばせた。

花がひらいたような、香りたつような可憐な笑み。


「口に()うたようで何よりじゃ。ヒナから 連れが竹に吸い込まれたと聞いて慌てたぞえ、まったくこやつらと来たら……」


ヨーコの呆れた口調に ニョッキ達は口々に言い訳を始める。


「だって、人間の女子(おなご)なんて滅多に来ないから、、」

「この期を逃せば次はいつ嫁候補が現れることか、、」

「しかも三人も来るなんて神の思し召しじゃと、、」


「黙れ、ヒナの客人ぞ?女子(おなご)なら他にも山ほど()るではないか」


「「ふわふわな女子(おなご)がよいのです!!」」


ヨーコにたしなめられたが、ここは引けないところのようで、ニョッキ達は声を揃えて力説する。


「オーガの女子(おなご)は強すぎて可愛げがないのじゃ!」

「修験者の女子(おなご)は皆ゴツゴツしてるのじゃ!」

「ヒナは外に出てしまって相手してくれないのじゃ!」


「「ふわふわの手で優しく撫でられたいのですじゃ!!」」


ヨーコがピシャリと言い捨てる。


「ヒナに袖にされておるのは前からであろう」


「「うっ、、」」


「しかも 仕掛けておきながら負けおって」


「「うぐっ、、」」


ヨーコ様はため息をつく。


「すまぬが其方(そなた)ら、こやつらを撫でてやって貰えんか?さすれば気も済み、外に出してくれるであろう」


三匹のニョッキが期待をこめた目でキラキラと見つめてくる。


「まあ、撫でるくらいなら」


アイリーンが了承する。


「ほら、来なさいよ」


1ニョッキが恐る恐るアイリーンに近寄った。

先程意地悪された心の傷がまだ癒えていないようだ。


「しょうがないわね」


アイリーンは中々近寄らない1ニョッキの脇に両手を差し込むと、ひょいっと抱え上げ、膝の上にのせた。


「ちゃんと勉強してイイオトコになったら考えてあげるわよ」


そう言って1ニョッキの頭をわしゃわしゃと撫でる。

1ニョッキは大きな尻尾をわさっと振って喜んだ。

なんだかんだ言って アイリーンは子供(?)の扱いがうまい。


「くすぐったいのよ!」


悪態をつきながらも、気持ち良さそうに アイリーンはしっぽに顔をうずめる。


「お主はやっぱり可愛いのぅ///」


1ニョッキはご満悦だ。


″ゾリゾリゾリ……″


「うにゃあああ!逆撫ではやめぃ!!」


あはは、と アイリーンが笑った。

イチャイチャ?


隣を見れば、2ニョッキは既にシャナの膝の上に座っておいなりさんを食べていた。素早い。

コラ、マセガキ、そんなに鼻の下を伸ばして、、シャナさんの胸は枕じゃないぞ?


3ニョッキはというと、、


「?」


サクラに近寄りたいのに近寄れず、一定の距離を行ったり来たり……


(なんか、怖がってる?)


おかしいな、餌付け成功したはずなのに……


「ん?其方(そなた)強力なまじないがかかっておるな」


ヨーコがサクラを()る。


(あ!魔物避け)


「それではニョッキは近づけぬ」


ああ、残念!なでくりまわしたかったのに!!


「これから旅を続けるならその術は解かぬほうが良いじゃろう」


断念を余儀なくされ 3ニョッキがくしゅっとなる。

自分だけ撫でてもらえない。


幼稚園で自分だけお迎えの来ない園児を見ているようで胸が痛む。

なんとか、ならないかな?


「この術、ヨーコ様は解けるんですか?」


「なんじゃ、解いても良いのか?」


サクラは3ニョッキをチラリと見る。

うるうるの瞳に弱い。


「はい、お願いします」


ヨーコは驚いた顔をしてサクラを見る。


「おかしな奴じゃな、()()()()()のために 身の安全を捨てるとは」


いや、こんな表情(かお)をした子供(?)を振りきるとか、鬼でしょ!

何よりもふりたいですし。


「ん~、、なんとかなりますよ」


「ふふ、おかしな奴は嫌いではない」


ヨーコはサクラにかかった術を解くためにサクラに手をかざした。


「ん?、、くっ、」


ヨーコの眉間にシワが寄る。

魔物避け解くの難しいのかな?


「この気配は、、」


ヨーコは唇をかみしめ、悩ましげな表情(かお)をする。


「うぐっ、小癪な!」


手こずっているようだ……

どうしよう、アスがやられたみたいに最後にタライが落ちてきたら……


ヨーコの額に汗が浮かぶ。


しばらく苦悶の表情をしていたヨーコがふう、と息を吐いた。

とたん、3ニョッキがサクラにダイブしてくる。

魔物避けが解けたようだ。


「うおっ!?」


「撫でてたもれ!撫でてたもれ!」


3ニョッキは サクラに抱きつき パタパタと三つの尻尾を千切れんばかりに振り続ける。


「はいはい」


サクラは銀色の髪を毛並みにそって撫でた。


「ふわふわじゃ///」


それはこちらのセリフですよ、ニョッキくん。

ああ、もふもふかわいい!


「やれやれ、あれはイシルの術じゃな、相変わらずイケズな奴じゃ」


ヨーコの口から『イシル』の名前がでてサクラは驚き、ヨーコに聞き返した。


「ヨーコ様はイシルさんを知ってるんですか?」


イシルさんそんなことは一言も言ってなかったけど……


「知ってるもなにも、奴は妾の婿候補であったからな」


そう言ってヨーコはコロコロと笑った。


「婿……」


「その話し、詳しく!!」


1ニョッキをいいようにあしらっていたアイリーンががっつり食いついてきた。

もしかしたら ヨーコはイシルの元カノかも!イシルの弱みを握れるかもしれない!と。


「ふむ、あれは いかほど前じゃったか、、ザガンが何処だかの国の特殊部隊とやらで傭兵をしていた頃じゃから、2、3百年前かのう」


2、3百年前を2、3年前みたいに言わないでくださいよ、ヨーコ様、、凄い昔だな。

サンミさん生まれてないんじゃない?

てことは、サンミさんとパーティー組む前ってこと?


「その頃、妾の所には婿候補が大量に押し寄せてきておってな、面倒じゃから ()()をだしたのじゃ」


うお!正しく『かぐや姫』じゃないか。


「その中に、イシルがおったのじゃよ。ザガンと一緒に帰って来たばかりじゃった」


イシルさん、特殊部隊で傭兵やってた時代もあったんだ……


「お題はクラーケンが持っているという宝『海の壺』これを持ち帰った者に会うても良いと」


「え?会うだけですか?」


シャナが聞き返す。


「妾にも好みがあるでな」


「なるほど」


シビアですね


「ああじゃこうじゃと言い訳をして、無理に妾に会おうとする男どもをよそに、ザガンとイシルは『海の壺』を持ち帰ったのじゃ」


サスガですね!イシルさん。


「それなのに、、妾の婿にしてやると言うたら、あやつ、なんて答えたと思う」


「?」


()()()()()()()と」


「は?」


サクラが間抜けな声を出す。


「『間に合ってます』と、断りおったのじゃ!!」


ヨーコ様、当時を思い出したのか 声が大きくなってきた。


「え?じゃあ何で『海の壺』をここに持ち帰ったの?」


アイリーンが疑問を口にすると、ヨーコは声を荒げてそれに答える。


「『海の壺』は、世界中の海と繋がっておるから、使ってみたかったんじゃと。魚は十分釣ったから差し上げますよとのたまったのじゃ!」


「うわ~、いやな奴」


ヨーコの気持ちをアイリーンが代弁し、同意を得られたヨーコは話を続ける。


「そうであろう!?だから、妾は()を無限竹林に閉じ込めたのじゃ」


いや、ニョッキ達のこと言えませんよね、ヨーコ様。

同じ事してますよ?


「そしたら、、そしたら、、」


ヨーコはふるふると拳を震わせ、怒りを膨らませる。


「あやつめ、竹林を破壊しつくしてのうのうと出ていったのじゃ!!」


怒りMAX!!

青い炎のようなオーラがゴウッとわき出て ニョッキたちが怯えふるふると震え しがみついてきた。


「お願いじゃ、お願いじゃ、アイリーン、ヨーコ様を鎮めてたもれ」

「シャナ、なんとかしておくれよ、ああなっては我らじゃ止められぬ」

「サクラ、ヨーコ様を笑わせておくれよ」


どうしろと!!?


「わかる、わかるわ、ヨーコ、、あの腐れ外道エルフは女心が分かってないのよ」


アイリーンがスキル『同調』を発動した!


「いつだって自分は何でもわかってますって顔がいけ好かないのよね」


其方(そなた)もそう思うかえ?」


ヨーコがアイリーンの話しに耳をかたむけた。


「ちょっと顔がいいからって、傲ってんのよ」


いや、アイリーン、本心まざってるよね?てか、本音オンリー?


「それは(わらわ)にも言えたことじゃな。男など選り取り見取りと(おご)りがあったのじゃ」


おっ、意外にも冷静に反省しだしたヨーコ様。


(わらわ)は ちょっと困らせたかっただけなのじゃ。ちょっぴり一緒にいてくれてもよかろうに。あんなに全力で拒否せんでも……」


イシルさんはヨーコ様のお眼鏡にかなったんだ。

甘酸っぱく まだ小さな恋のつぼみをイシルさんはバッサリ切り捨てたのだ。


「それはイシルさんの優しさだったのではないでしょうか」


シャナが参戦!スキル『説得』を発動!


「変に期待を持たせるよりも、ハッキリ断って すっぱり諦められるように……」


「そうなのかえ?」


「シャナ、なんか実感こもってるわね」


アイリーンがシャナに気安く話しかけ、なんだか女子トークに突入しだした。


「そうね、誰にでも優しい男って、一番始末におえないものね」


アイリーンが同意する。


「うんうん」


サクラも同意。


「ニコニコと愛想がよくて、、」

「誰にでも優しくて、、」

「いつのまにか相手の懐に入り込んで、、」

「警戒心をもたせない、、」

「八方美人、、」


「いるよね、そういう人」


サクラはアイリーンとシャナに合いの手を入れて笹茶を1口飲む。

冷めても美味しい。


「心を許してるように見えてそれ以上は踏み込ませない」


アイリーンがチロッとサクラを見る。


「期待させるようなことするのに空振り、、」


シャナもサクラを見る。


「自分だけを見てほしいのに他人をほっとけない」


(ん?)


「自分のことすら後回しで心配になる」


(何?)


「意外と融通がきかなくて意地っ張り」


げんなりとサクラをみつめるアイリーン


「結構強引、でも、、嫌じゃないんですよね、それが」


シャナもサクラを見つめてため息を吐く。


(何なの!?二人して、、)


「たちが悪いよね」

「本人自覚ないですからね」


(アイリーン?シャナさん?何でこっち見るの?なんか、いたたまれないんですけど!?)


「ヨーコ、イシルは今十分苦しんでるから 許してやってよ」


アイリーンがチロッとサクラに視線を投げ、ヨーコに示す。


「絶賛片思い中なの」


ヨーコは察したようで 再びサクラを見た。


イシルが心配してかけた魔物避けのまじないを ニョッキの些細な願いのために解除し、イシルの気持ちを易々と無下にしてしまう女……

そんな女にイシルは片思い中だというのだ。


ヨーコはコロコロと笑う。


其方(そなた)はやはり面白い奴じゃ、妾を笑わせおる、、わらわが、わらう、、ふふっ、、」


ツボに入ったのかヨーコがまた鈴が転がるように笑った。


(あんなダジャレで笑うの?)


3ニョッキの『ヨーコ様を笑わせて』に答えて サクラがスキル『ダジャレ』を発動した。


「布団がふっとんだ……」


「ククッ」


笑点低いな、箸が転がっても笑いそうだよ?


「ねこが()()ろんだ、猿が()()、ワニが()()なる」


「ふふふ///」


「校長先生ぜっこうちょう!部長は、でぶっちょう!」


「はははっ///」


意味、わかってる?ヨーコ様、、





挿絵(By みてみん)





【かぐや姫】

光る竹から生まれたかぐや姫、竹から小判がでるおかげで、育ての親であるお爺さんとお婆さんは裕福になった。


かぐや姫は美しく成長し、求婚する者も多く,とくに熱心な5人の貴公子に姫は無理難題を吹っ掛けた。その解決を結婚の条件にしたが 5人とも失敗する。

最後には帝の求婚もしりぞけ、十五夜の晩に月の世界へと昇ってゆく。


そのドS難題がこちら

↓↓↓

「仏の御石の鉢」

天竺てんじくの仏さまの使った石でできたちゃわん。

御釈迦様しか使えません。


「蓬莱の玉の枝」

仙人が住むという蓬莱という山があり、そこに銀を根とし、金を茎とし、白い玉を実として立つ木があるという。その一枝。


「火鼠の裘」

火山に住むといわれている火ネズミの皮でできた衣

火ねずみの毛で織った衣は もし汚れれば、火をもってこれを焼き、さらに清潔にする。とされている。


「龍の首の珠」

黒龍の首にかかる5色の光る玉

「千金の珠は必ず九重の淵にいる驪竜のあごの下にある」と記されている。


「燕の子安貝」

燕が卵を産む時に一緒に産み落とすといわれる子安貝という錦の貝

安産の御守り。




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