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216. 女子旅 2 (オーガの村) ★

挿し絵挿入しました(10/28)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使いくださいm(_ _)m






一言でいえば、そこは神社のようだった。

赤い鳥居を潜り境内に入ると 途端に空気が変わる。


竹に囲まれた空間は、まるで外界を遮断するかのように静寂に包まれており 笹の葉の間から木漏れ日が降り注ぐ。

それは光のベールのようで、風が吹くと 下に落ちた影が 水のように揺らめきをみせていた。


こういうのを『聖域』というのかな。


鳥居から伸びた石畳は神の居わす神殿へと続いている。

女子旅御一行は オーガの村に入ると ヒナの案内で『竹』をもらいにこの場所へやって来たのだ。


「このあたりの竹の恵みは『ヨーコ様』のおかげなんです」


「ヨーコ様?」


サクラが聞き返す。


「はい。昔、私たちオーガ族に、大変な荒くれ者が誕生したそうです」


むかしむかしの物語。


男の名前はハオウ。

ハオウは力も魔力も強く、体も大きい鬼。


ハオウは普段は優しいのだが、怒ると怒りで我を忘れ、自分では止めることが出来ない男だった。


ある日ハオウはいつものように怒りに身を任せ暴れまわり、気がつけば親に手をかけてしまったそうだ。


「ハオウは一人村から離れ、この地に籠ったそうです」


泣いて、泣いて、泣き暮らし、100年が過ぎたある日、ハオウの前に 一人の女が現れた。


″御主は何をそんなに(なげ)いておるのじゃ″


神々しい声。

ハオウは人ならぬ女に答える。


『私は親殺しでございます。己の短気のせいで親を殺してしまいました。悔いても悔やみきれません』


ハオウの涙は止まらない。


″御主が泣いていては父君も母君も浮かばれぬ。親御殿は身をもって御主に教えたのじゃ。怒りに身を任せてはならんと。今度は悲しみに囚われる気かえ?御主は100年も泣いた。もうよかろう″


女が舞を一振り踊ると、地から竹が生え、竹林となった。

竹林の中にいると ハオウは心穏やかになれた。


″『短気』は『損気』じゃ。御主の修養も精神も、一瞬にして焼き払うのが怒りの炎。わき上がる激情は、無謀に始まり、後悔に終わる。十分わかったであろう?『短気』を起こしたらこの竹林を思い出すがよい″


そうしてハオウは この場所に村を作ったそうな。


「その女の人が『ヨーコ様』です。この村に剣の修行に来る者が多いのは ハオウの残した『精神統一』をマスターするためでもあるんですよ」


この村にはそんな成り立ちがあったのか。


風が吹けばそれを受けとめ、折れてしまわないよう受け流す竹。

辛いことや悲しいことがあっても折れずにいられる しなやかで柔軟な佇まい。

もし折れても、切られても、再び上を目指し、自分を見失うことなく 真っ直ぐに成長を続ける強い生命力。

それでいて、さざめく笹の葉のように、穏やかで優しい心。


それを求め 剣士はこの地にやってくる。


「そんな貴重な竹をいただいてもいいのでしょうか?」


シャナが恐る恐るヒナに聞く。


「今からヨーコ様に聞いてみます。オーガの村のためですからね。そのために私が来たんです。私は『ハオウ』の直系なんですよ」


ヒナは族長ザガンの娘だ。『本家』の娘といったとこかな。

ヒナは着替えてきます、と その場を離れた。


シャナ、サクラ、アイリーンは 竹で作られたベンチに座り笹の葉のそよぐ音を聞き、癒されながらヒナを待っていた。


リズとスノーは灯篭を眺めたり、手水舎の竹の柄杓で水を飲んだり、ちょこちょこ見てまわっている。


「ここは『狐』を(まつ)ってるんだ~」


サクラが呟く


「狐?」


「うん、ほら、あれ」


アイリーンの疑問にサクラが神殿脇に控えている銅像を示す。

狛犬ならぬ狛狐だ。


(もしかして、ヨーコ様って妖狐様なのかな?)


「キャアッ!!」


「「!?」」


隣に座るシャナの悲鳴にサクラとアイリーンが振り向いた。


「シャナさん!?」


見ると 竹の一部が金色に輝き、その光の中にシャナの腕が引き込まれている。


「シャナさん!!」


サクラがシャナを掴み、引っ張る。


「おっ!?」


だが、光の引力が強くてシャナは止まらない。


「サクラさん、放して!貴女も巻き込まれる!」


そう叫ぶと シャナは竹の中に引き込まれ飲み込まれた。

サクラは構わずシャナを助けようと食いしばる。


「サクラ!!」


アイリーンがサクラを掴み引っ張る。

それでも光の引き込む力に勝てず、サクラも引き込まれる。


「アイリーン!!」


リズとスノーが走ってくる。

が、手を伸ばしアイリーンを掴もうとしたところで、光が大きく輝き、リズとスノーの目を眩ませた。


「「きゃあっ!!」」


光が小さくなり、収まってしまうと、再び静寂が訪れた。

そこに三人の姿はなかった。

リズとスノーは竹林の中を三人を探し、声を張り上げ、名前を呼び続ける。


「シャナさーん、、」

「サクラー、、アイリーン、、」


リズとスノーの泣きそうな声が竹林に響く。


「どうしたんですか?」


不安そうに三人の名前を呼ぶリズとスノーの元に 巫女服に着替えを終えたヒナが帰って来た。


「サクラが、、アイリーンが、、」

「シャナさんがあぁ、、」


「「金色の竹に食べられちゃったー!!」」


うわーん、と泣き出した。





◇◆◇◆◇





竹の中に引き込まれたサクラとシャナとアイリーンは竹林の中にいた。

さっきまでとは明らかに違う場所だ。

右を見ても、左を見ても、延々と同じような竹林が続いている。


「空間が歪められているわ……ループの魔法がかかってますね」


シャナがこの竹林にかかっている魔法を見抜く。

インフィニティ、永遠に同じ場所を彷徨う魔法。


「閉じ込められたってわけね」


アイリーンがお手上げと肩をすくめた。


『『たけのこニョッキ、ニョッキッキ!!』』


『1ニョッキ!』

『2ニョッキ!』

『3ニョッキ!』


竹林に声が響き、ぽこん、ぽこん、ぽこん、と、小人が下からタケノコのように飛び出してきた。


狐の耳を生やした銀髪の 陰陽師のような服を着た小人――――


アイリーン、シャナ、サクラの前に如鬼(ニョッキ)が現れた!!

どうする?


→戦う

話す

脅す

かどわかす





挿絵(By みてみん)












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