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213. 麺づくり




イシルはジャケットを脱ぐと 白シャツの袖のカフスボタンを外し腕捲りをする。

シャツから伸びる腕……細く見えるが筋肉質で男っぽい。

肘から手首にかけての腕の筋、血管、長い指……


イシルは腕を上げ、首もとに親指を差し込み 長い金の髪を一つに束ね、髪紐でくるくるっと一つに纏めるた。

すっきりとしたシルエットの背中が見える。


手を洗う仕草、滴る水、手をふきながらこちらに戻ってくるイシル……

その仕草一つ一つが白シャツの清潔感に包まれて 妙に色っぽい。

服を着ているのに体の筋肉の動きがよく見える。

白シャツは、そんな魅力に溢れている。


組合会館の大テーブル。

用意されている麺の材料。

イシルに並ぶシャナは チャイナ服。

ただ、いつものチャイナと違い、ミニだ。

粉が舞ってもいいように、その上に白いエプロン。

それは、もう、何て言うか……服、着てる?

エプロンで服が隠れてしまい、イケナイ想像をしてしまう。


そんな二人が お互い顔を突き合わせ、麺づくりに試行錯誤している。

少ない水と粉をじらすように優しくなで、擦り合わせたりして麺のコシにつながるグルテンを形成していく。

なまめかしく動く手つきが、ヤバい。

イシルとシャナはほろほろと、粘りけがでるまで顔を突き合わせて麺の硬さを確認しながら指でこねている。

生地を見つめる真剣で熱っぽい()もヤバい。

二人とも、なんでこんなにエロっぽいんだ……


サクラの脳内で麺づくりの様子がアブナイ方向に変換され、某有名映画のロクロをまわすシーンが頭によぎる。


イシルとシャナは水分が馴染むまですこし生地をねかせたら、生地に()()を出すために上から押していく。


リズミカルに力強く上下するカラダ……

赤く上気してくる頬……

乱れてくる呼吸……


「「ゴクリ……」」


「そこの()()


「「はいっ!」」


サクラは呼ばれて現実に引き戻される。

イシルの目が冷たい……

隣ではラルゴが同じように返事をした。

ラルゴ、、お前もか。


「出来たら呼びますから、外で待ってなさい」


「「……はい///」」


サクラとラルゴの思考を読んだイシルに追い出された。


「あの、イシルさん」


「何ですか」


サクラは呼び止めたイシルにジト目で睨まれる。

大変言いにくい。


「あの、コシを出すために麺を鍛えるなら、袋に入れて足で踏んだらいいと思いますよ」


「……早く言ってくださいよ」





◇◆◇◆◇





外はいい天気だ。

サクラはラルゴと並んでのんびり日向ぼっこ。

おかしいな、シャナと二人で麺を作るはずだったのに、イシルは昨日のうちからスープを仕込んでしまい、麺作りも余裕でお手伝いだ。

シャナと少し仲良くなれるかと思ったが、何故かイシルが邪魔をする。

前に二人をくっつけようとしたから イシルが警戒してるのかな?


「これならバーガーウルフに仕事に行ってもよかったかも」


ぼそりとサクラが呟くと、ラルゴがそれをひろった。


「何言ってんだよサクラちゃん、サクラちゃんは働きすぎだよ」


「そうですかね」


現世では一日8時間労働が基本だった。

若い頃は掛け持ちで働いていたから12時間。

異世界に来たら、バーガーウルフは5時間程度だ。

アスの所の仕事なんて、物品の横流しをしているだけ。

仕事、しなさすぎでは?


「動くことだけが仕事じゃないよ。ちゃんと休んでる?家に帰っても仕事の事考えてるんじゃないか?」


……言われてみればそうかもしれない。


「休むってのは、体を休めることだけじゃなくて、頭も空っぽにしないと、、こんな風にさ」


ラルゴがぽけ~っと間抜けな顔をしてみせた。


「ラルゴさん、その顔ヤバいですよ」


結構二枚目な事言って男前をあげた矢先に、ラルゴは自分で自分を落とし込む。

ラルゴはやはり三枚目だ。

三枚目だけど、いい人だ。


「楽しそうじゃない」


ラルゴとベンチでぐだぐだしていたら 組合会館の広場入り口にアイリーンが現れた。


「あ!アイリーンも今日休みなんだ~」


こんにちは、ラルゴさん、と言って アイリーンはサクラの隣に座る。


「休みだからさ、銀狼亭でランチ手伝おうとしたらサンミさんに追い出されたのよ『休め』って」


ここにも休みなのに休めない貧乏性がいましたよ。


「あんたがここにいるって言うから……あの、来てみようかなって、、」


アイリーンはラルゴを見て口調を改める。

どうもサクラといると猫をかぶり忘れるようだ。


「アイリーン気にすんなよ、フランクで全然大丈夫だからさ、オレは」


「でも……」


いや、ラルゴよ、君は気づいていないだろうが君もアイリーンのターゲットだ。

ドワーフ村の中ではイチオシなのだよ?

アイリーンは婿候補の前では清楚で可憐でいたいのだよ。


「同じ村にいるんだしさ、他人行儀はやめようや、この村の人達は()()みたいなもんだし」


「……家族」


天然とは恐ろしい。

ラルゴは無意識のうちにアイリーンの心にヒットする言葉を使いやがる。


「サクラちゃんやリズやスノーたちと喋ってるアイリーンは自然体でいいと思うけどな~」


「そう、かな///」


おっ、これはいい感じ……

ラルゴ、行け!行っちまいな!!


「うん、サンミみたいで」


「へ?」


サクラが間抜けな声を出す。


「サンミ、、さん?」


アイリーンも聞き返す。


「うん、一緒に住んでるからかな、似てきたよね」


素直なところがラルゴの長所。

しかし考えなしのバカ正直者は始末におえない。

サクラの隣でアイリーンがわなわなしている。


「へぇ~ラルゴさんにはあたしがそんな風に見えてたんだ~」


バカラルゴ!!

全部ぶち壊しだよ!!


「うん。可愛い」


「「え?」」


「ん?何?可愛いだろ、サンミも」


恐るべしラルゴ!

ストライクゾーンが広すぎる!!

射程範囲どんだけ~!!?


アイリーンは表しかないラルゴの発言に再び頬を染めることになった。

なんか、お似合いだな、この二人。

ラルゴはクリーンヒットをガンガン打ち込んでることに全く気づいていないようだがね。


「二人とも働きすぎなんだからさ、旅行でも行ってくるといいよ」


「旅行、ですか」


「近場でもさ」


ラルゴの提案にサクラが答える。


「あ、じゃあ、私、アザミ野町行きたい」


「アザミ野に?」


「うん、アイリーンが帰る時、一緒についていこうかな、、この前は寄っただけでちゃんと観光できなかったし、アイリーンに案内してもらったら楽しそう」


「……そう?」


「うん、屋台とか目移りしちゃってさ、アイリーンなら何が美味しいかしってるでしょう?」


「そうね。バーガーウルフの参考にもできるわね。食べ物だけじゃなくて名所もあるのよ」


アイリーンが嬉々として語る。


「楽しみだな~ドワーフの村のおもてなしのヒントにもなりそうだね~」


サクラもアザミ野に思いを馳せる。


「また仕事脳になってるよ、二人とも」


「「あー、、」」


「しょうがないなぁ、ここは俺が一緒についてって……」


「「イヤイヤ」」


「え?ダメ?」


「今回は女子旅です」


サクラが丁寧にお断りを入れる。

ラルゴが来たらアイリーンは()がだせないだろう。


「あの、ラルゴさんとは、別の日に……」


「べ、べつの日……?」


アイリーンがラルゴに意味深に微笑みをむけた。


「ふたり、で?」


アイリーンが頬を染めてはにかみ、ラルゴの顔が一気に緩んだ。

アイリーンが演技なのか本気なのか、サクラには見分けがつかないが、この場にいるのは大変居心地が悪い。


サクラはよいしょと立ち上がる。


「どこ行くの?」


「ちょっと、御不浄へ……」


ホントは行きたいわけじゃないけど、なんか、二人いい感じだから、サクラは気を利かせて 組合会館へと入った。











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