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197. お好み焼き ★◎

関西弁がおかしいところはご愛嬌でお願いしますm(_ _)m


挿し絵挿入しました(10/20)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をお使い下さい。


あとがきに料理写真挿入(2021/9/8)




「いやー、ホンマすんまへんなぁ、初対面やのにエライよぅしてもろて、おおきに、おおきに!助かります~」


いや、まだ何もしてないよね?

挨拶して、お茶、だしただけだよね?


「あんさんがコロッケを作ったっちゅうサクラはんでっしゃろ?いやー、ほんまに大したもんやわ、あないな旨いもん食うたことないわ!ホレボレするわ!凄すぎて泣いてまうがな!」


只今サクラは村長にお願いされ、ラルゴと一緒にハーフリングの村から来た商人の男の相手をしている。

これがまた、関西弁のすこぶるマシンガントークで……


「いやー、こういうのを『天才』ちゅうんやな~″ズズ……″あー『天才』のいれたお茶はまた格別に旨いっっ!何をやらしてもあんさんの右に出るもんはおらん!なあ、ラルゴはん」


「はぁ、、」


ハーフリングの男は対面からずっとサクラを持ち上げまくっている。

ラルゴは相手が何を言っているのか半分もわかっていない様子で生返事を繰り返すばかり。


「あんさんの噂は聞いとりまっせ~えらいべっぴんさんやいう話しやってんなぁ、噂通りの、、、人の良さそうなお人やわ!わてはあんさんに会えて幸せやわ~」


あなた、私が関西弁聞き取れないと思って油断してますね?

現世では標準語と同じくらい聞き慣れてるんですよ。

ええ、上司が関西弁でしたからね。

見た目がチョロいからと侮ってもらっては困ります。

『噂通りの』の後、言葉を失くしましたね?

いや、わかります。

べっぴんさんとはほど遠いですからね、いいんです。

言葉を切り替えたあたりよしとしましょう。


しかし、マシンガントークで威圧されるのは気分が良ろしくない。

これがハーフリングの商人の武器なのだろうが、サクラには通用しない。


「こんな女神はんがこの地におられるとは、これは運命や!天が引き合わしてくれはったんや!な!ラルゴはん!」


「はぁ、、」


とにかく、このマシンガントークを止めなくては、ややこしくて先に進まないではないか。

ラルゴが聞き取れなくては話しにならない。

あまりやりたくないが、仕方がない。


サクラは大きく息を吸い込むと、声をはりあげた。


「いやー、遠路はるばる遠いところを半日かけてよう来はりましたなぁ!ご苦労さんなこって!大したもてなしも出来ひんですけど、ぎょーさんコロッケでも召し上がってってください。お土産にも(こう)てってもらえたら、うちもえろう助かります~おおきに、おおきに」


ハーフリングの男とラルゴの目がテンになる。


「べっぴんさんやなんて、いややわぁ、あんさんもえらい男前でんなぁ!しゅっとしてはる!神は二物を与えるんでんなぁ、男前やし、喋りは上手いし、足腰は丈夫やし、商売上手、床上手、夫婦円満、健康第一、家内安全、商売繁盛、毛がボウボウの火の用心で万々歳や――――!!って、なんでやねん!」


″シ――――――――ン″


やっと静かになった。

タメ口で支離滅裂なのは勘弁してもらおう。

関西人(本職)じゃないのだから。


サクラは声のトーンを戻し、話を進める。


「それで、私に話しがあるというのはなんですか?」


「あ……あの、、」


ハーフリングの男は 改まって姿勢を正し、やっとここに来た理由を話し始めた。


「ハーフリングの村にも、何か名物料理を考えて欲しくて……」


なんだ、普通に喋れるじゃないか。


男は″オズボーン″というらしい。


「オズと呼んでください」





◇◆◇◆◇





オズはまず、先程の非礼をサクラとラルゴに謝った。

ハーフリングは見た目が子供程しかないので、どうしてもはじめに押していかないと相手になめられる事が多いのだそうな。

だから、ハーフリングの商人は言葉で押すことをまず始めに教えられるらしい。


元々ハーフリングは陽気で人懐っこく、物怖じしない種族なので性にも会うのだろうけれど。


「いやー、でも姐さんがハーフリングの言葉を使えるとは思いませんでしたわ、感服いたしました」


いや、エセ関西弁だけどね。

伊達にじゃり◯子チェのDVDもってるわけじゃないよ。


「貴族がたまに来るんで、うちの村ではステーキを売りにはしてたんやけど、人をよぶほどやないし、最近こちらさんに貴族がぎょーさん来てはるから、折角やから、うちの村にも来て欲しい。うちの村は何かつくっとるわけやないし、なんとかせな、と……」


ドワーフの村の……

サクラのせいだといえなくもない。


「それで、ハーフリングの村は何が採れるんですか?」


「ドワーフの村とかわりませんなぁ、麦、芋、キャベツ、トウモロコシ……」


うんうん、一応聞いたけどね、もう、何を売りにするか、大体決まってるんだよね。


「ステーキは何で調理してるんですか?フライパン?」


「店にでっかい鉄板を置いて客前で焼くのがウリなんですわ」


鉄板がある!よし。

関西弁を聞いたときから頭に浮かんでしょうがなかったものがあった。


「お好み焼きを作りましょう!」


「オコノミヤキ?」


ラルゴとオズがハテナ顔をする。


「必要なのはキャベツと卵と小麦粉です!」


うまく行けば、『ラ・マリエ』の遊歩道の屋台にもお好み焼きが並ぶ!!


「ラルゴさん、イシルさんを呼んで来てもらえますか?」


サクラは組合会館のキッチンへと入る。


「おう」


ラルゴが組合会館を出て イシルを呼びにメイの治療院へと向かった。

隣なんだけどね。


卵はある。

キャベツも、小麦粉も、あるな。


ああ、あの香ばしいソースの香り……

想像しただけでヨダレが出る。


「あ、しまった、ソースがない」


お好み焼きはあの甘酸っぱいソースとマヨネーズが欲しいところ……

母上は何で代用してたっけ?

あ、うちはケチャップとマヨネーズのオーロラソースだった。

お子ちゃま仕様だ。


ソースは、ウスターソースを基本にして、ケチャップだったかな。

バーガーウルフでウスターソースとケチャップは開発済みだから、覚えてもらおう。


「何を作るんですか?」


イシルがお隣さんから帰ってきた。

ラルゴにはそのまま、サンミのところにウスターソースとケチャップを取りに行ってもらう。


「お好み焼きなんですけど、長芋ってありますか?」


「ええ」


「あと、豚肉もスライスが欲しいんですけど」


イシルが亜空間BOXから サクラに言われた材料を取り出す。


豚バラ肉(好きなだけ)、キャベツ200g,薄力粉100g,卵1個,水100ccこれで二枚分だ。


オズには見ていてもらい、イシルがキャベツを千切りする。

イシルならキャベツの千切りなんて包丁ですぐだが、ここは是非とも モルガンピューラーを前に推したいところ。

うまく行けばハーフリングの村で買ってもらえる。

その辺はラルゴに頑張ってもらおう。


イシルはピューラーを使い キャベツを千切りにする。


「おおっ、早いな!」


イシルがキャベツの上でピューラーを滑らせるだけでキャベツが千切りされていく。

オズはモルガンピューラーの威力に見入っていた。


「やってみますか?」


オズは、イシルから薦められてモルガンピューラーを手に取る。

料理のお願いに来ただけあって、オズは料理の心得があるのか、いたく感心していた。


「楽やわ!しかも、なんや楽しいなぁ」


オズがやってもすぐに千切りキャベツの出来上がりだ。


千切りキャベツはコンビニで売ってる袋サラダのヤツをそのまま使ってもいい。

キャベツの歯応えを感じたければ、千切りではなくざく切りでも、お好みで。


「生地を混ぜます、粉っぽさがなくなるまで」


卵と粉と水をよく混ぜた後に中にキャベツを入れ、混ぜる。

キャベツは水が出るから、なるべく焼く前に合わせた方がいい。


空気を含ませるように底からぐいっと大きく返し、生地とキャベツが まんべんなくなじむよう素早く混ぜる。


今日は鉄板ではなく、フライパンで焼く。


中火で熱したフライパンにサラダ油をひき、生地を流し入れて平たく広げ、豚バラ薄切り肉を上に並べ蓋をして中火で蒸し焼きにする。


「材料、あれだけでっか?」


「はい、でも、肉を変えたり、チーズを入れたり、魚介を入れたりアレンジ出来るんですよ」


「へぇ……」


ダシを入れてもいいが、豚肉から味も出るし、鰹節ものせる。ソースも濃いからダシなしでも十分美味しい。

サクラはあえてダシをはぶく。まずは簡単に。

なれた頃に教えてあげよう。


焼き目が出来、生地が垂れなくなった頃(ひっくり返しやすくなった頃)裏返し、再び蓋をして中火で3分蒸し焼きにする。

おさえつけるとふんわり感がなくなるので注意してね~


「なんや、いい匂いしますなぁ」


「でしょ?」


豚肉から脂がにじみ出てきているのだ。

この匂い、最高!


サクラはお好み焼きの端をヘラで持ち上げて 底をのぞいてみる。


「うん、いい色」


豚肉がこんがり焼けたらもう一度ひっくり返す。

にじみ出た豚の旨味が反対側の生地に染み込むように。

串を刺して 生地がくっついてこなければ出来上りだ。


「完成でっか?」


「まだです。ソースが……来た!」


ラルゴが戻ってきた。


「サクラちゃん、貰ってきたよ」


「ありがとうございます」


サクラはソースを作る。

ウスターソースとケチャップをまぜ、味見。


「甘さが足りないかな……」


サンミのケチャップは甘さ控え目だ。

砂糖?うーん……あ!


サクラは蜂蜜に手をのばし、ソースにいれてみた。


「うん、これくらいかな」


蜂蜜、合うわ。


お好み焼きにソースを塗り、マヨネーズをかけ、イシルに鰹節と青海苔をだしてもらいかける。


現世に行ったら()()を買ってこよう。

見本があればドワーフの村の人ならコテくらい作れるだろう。


「どうぞ、召し上がってみてください」


サクラは切り分けて皆に差し出し、試食してもらっている間にもう一枚作るため、キッチンへと戻る。

二枚目はすりおろした山芋入りを焼く。


「「いただきます」」


″はぐっ、もぐ″


「なんや、これは!」


オズは驚愕する。

外側が少しかりっとしているのは豚肉のせいか?

豚肉のうまみと、キャベツの甘味、そしてパンとは違う、しっとりとした生地が全てを包んで一体となっている。


「小麦粉と卵だけやったのに……」


もちっ、と、口の中に程好い歯応え。

パンケーキとも違う少しトロリとした不思議なキャベツの口当たり。


「とまらへん、このソース」


甘酸っぱいソースが食欲をそそり、上にかかった鰹節から旨味が追加され、青のりが磯の風味を加える。


「完璧や……完璧な食いもンや!!」


ぺろりと平らげたオズは、もう一枚焼いているサクラのもとへ、皿を持って近づいた。


キラキラした瞳でサクラを見つめる。


「もう出来ます」


″じゅわ~″


サクラはフライパンの上のお好み焼きに、ソースを垂らす。


「うわああああ///」


フライパンで焼けたソースの匂いがキッチンに立ちこめ、オズを包む。


″チャッ、チャッ、チャッ……″


マヨネーズを左右に振りながら線を描き、串を使ってマヨネーズの縞に直角に交差するよう、等間隔で線を引く。

美味しそうなマーブル模様になった。


「芸術や!」


″パラパラ……″


鰹節をかけると、ふよふよと踊り出す。


「アメージング!!」


魔法の粉をかけるかのようにサクラの手からパラリと青海苔が降り注ぐ。


オズの手の皿にお好み焼きが乗せられた。

オズはうっとりとサクラを見上げる。


「姐さん、結婚して!!」


″ガタンっ!!″


オズの言葉と共にキッチンの外で椅子の倒れる音とラルゴの悲鳴が聞こえた。


「わーっ!イシルさんっっ!!落ち着いて!!!」





挿絵(By みてみん)















挿絵(By みてみん)


キャベツと卵と小麦粉の豚玉(山芋入り)

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