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171. 焼肉で慰労会 ◎

あとがきに料理写真挿入(2021/5/8)




じゅうじゅうと網の上で焼ける肉の香り……

炭火で焼く肉は旨味が凝縮される。

表面はパリッと、中はふっくら柔らかく肉汁を閉じ込める。


「はぐっ、ん~///」


炭火による薫製といってもいいだろう。

炭のミネラルで香りづけされた肉は炭火の香ばしさがたまらない!

タレなんかいらない!是非塩胡椒で!


「今のは牛カルビかな~」


カルビ自体は噛みごたえのある肉だが、サシが細かく入っていてやわらかい。

この脂のり、サイコー!

噛めば噛むほど口の中で旨味が広がる。


″ジュワッ、ボウッ!″


肉汁が炭に落ち、ボワッと炎があがる。

組合会館の前広場に用意された大炭火BBQ、網の上にところせましと肉が並ぶ。

今日はラルゴとモルガン、村の職人さん達を招いて大慰労会。

星空の下で食べる焼肉は一層美味しい!


「かぷ、プリッ」


弾けるぷりぷり感、トントロ。炎の正体はこいつのせい。

とろのように脂がのってとろけるけれど、あとくちはさっぱりしている。

ねぎ塩でいただく。


「んふっ///」


炭火は遠赤外線効果により、食材そのものを発熱させるので、中までしっかりムラなく焼き上がっている。

少し焦げた感じがさらに味覚を刺激する。

牛は火は通すが焼きすぎないよう、豚はしっかりが、焼肉の基本!


次は何にしようかな~


「サクラちゃん、皿かして」


「いや、自分で……」


「いいから」


復活した(?)ラルゴが サクラから皿を受け取り、肉を入れてくれる。


「今日の主役なんだから、ラルゴさんもたべてくださいよ」


「サクラちゃんには世話になったからさ、はい」


「ありがとうございます」


ラルゴから皿を受けとる。


柔らかいハラミ、サクサクとした歯応えのタン、しっかりとした弾力のあるコリコリのミノ、まったり濃厚なレバー……


見事に……

見事に食べられないものばかり!!


ハラミはね、お肉かと思いきや、ちょっと内臓っぽい味がするのよね


ラルゴは食べてほしそうにニコニコとしている。


(ハラミならいけるかな……いや、牛タンなら……)


「美味しそうですね、僕がもらっていいですか?」


イシルがひょいっ、と サクラの皿を持ち上げた。


「あ、じゃあもう一皿……」


「ラルゴくん、モルガンが呼んでましたよ。僕がかわりますよ」


「そうですか?何だろう……」


もう一皿肉をよそおうとしていたラルゴからイシルがトングを受けとると、ラルゴはモルガンを探しに 厳ついドワーフの職人さんたちの間を巡っていく。

イシルはラルゴのかわりに肉を焼きながらサクラに新しい皿を差し出した。


「サクラさん、ローズの街で、フォアグラが苦手だと言っていたので、内臓系は食べられないかと」


そう言って 薄い肉をさっとあぶり サクラの皿に乗っける。


「ありがとうございます」


憶えててくれたんだ。

そして このさりげなさ……

オトナスギル!!


「はぐっ、んんっ!」


イシルがあぶってくれた肉を口に入れる。

溶けるような食感……リブロースだ!

肉質がきめ細かく、舌触りは柔らか。

上品な脂で、サシが多く入っているにもかかわらず、しつこくなく甘みが口の中に広がる。


「んー///」


サクラの反応にイシルも満足そうだ。


「手伝います」


食べてばかりじゃ申し訳ない。

サクラもイシルの隣で一緒に肉を焼く。

二人で焼肉奉行だ。


「サクラさんもう食べないんですか?」


「あ、はい」


「最近夜あまり食べませんね」


「んー、なんだか夜食べるともたれるんですよね……」


神の薬のせいなのかな?

いや、心配顔してますが、今日は貴方のせいです イシルさん。


イシルは()()()中々解放してくれず、サクラは仕込みの手伝いどころではなかった。


恋愛するしないの問題ではない。

翻弄されまくりである。


イシルはサクラに答を求めてはこなかった。

サクラが恋愛したくなるまで 待っている。

いや、厳密に言えば 行動は待っていないんですけどねっ、くそう!

サクラから『好き』の言葉を引き出そうとしている。

ラルゴが起きる気配がなければ どうなっていたか……

嫌味の一つでも言わないと気がすまない。


「イシルさんは いつもあんなに強引なんですか」


「なにがですか?」


「……いえ」


イシルがクスリと笑う。


「自分から追いかけたことなんてないのでわかりません」


悪びれもせず言い放ちましたよ!?

うぐっ、これだからモテる男は……


″じ~″


ん?視線を感じる……


ひょいっと 感じた視線の先を見ると ランがこっちを見ていた。


「ラン、どうしたの?肉、食べる?」


ランはBBQ台の前に来るとサクラに皿を差し出した。


「サクラ、なんかあったろう?」


「え?」


蒼い瞳が じーっとサクラを見つめる。


「なっ、なんにもないよ」


「ふーん……わっ!イシル、野菜入れんなよ!」


「たっぷりお食べなさい」


イシルが横からランの皿にせっせと焼き野菜をのせていた。

ランがイシルを睨む。

ランはサクラから皿を受けとると 、するりとまわってきてイシルとサクラの間に無理やり入った。


「お前ら、近い」


「おやおや、寂しかったんですね」


「ちげーよ!、だから、野菜入れんなって!」


ランが食べるそばからイシルが野菜を足していく。

コントかよ。いいコンビだ。


「サクラ、明日休みだろ?」


「うん」


「オレがいいとこつれてってやるからさ」


「いいとこですかー、楽しみですね」


「……イシルは誘ってないけど?」


「僕の目の前で誘うってことは僕にも来てほしいんですよね?」


「……」


「肉、あげますから」


イシルがひょいっ、と 肉をのっける。


「ふんっ!はぐっ、もぐ、んぐっ」


なんだ、皆で行きたかったんだ、ラン。素直じゃないなぁ。




ランがしこたま食べてお腹いっぱいになり、帰ろうかという頃には まわりはすっかり出来上がっていた。


「オレは、10000¥でもいいと思ってたんだ!街の料理人なんか、15000¥出してもいいって言ってたんだょうぅ~」


ラルゴは泣き上戸のようだ。


「わかったわかった、お前さんの気持ちはよ~くわかったから」


モルガンがよしよしとつきあっている。


「いーや、わかっちゃいないね!それを1980¥で売ろうとしてたんだから!ゼロをもう一個つけてもいいくらいだ」


「ははは、そりゃ言いすぎじゃて、原価はそんなにかかっとらん」


「オレはあの商品をそんな値段で売るつもりはない!あんたの腕はそんな値段じゃないんだよぅぅ~」


ラルゴは よよよとモルガンに抱きついて泣きじゃくる。


「ありがとな、ラルゴ。だが10000¥は言いすぎじゃろうて、ワシが考えた道具じゃない。なあ、サクラ」


モルガンは帰りの挨拶にやって来たサクラに同意を求めた。


「そんなことありませんよ」


モルガンは意外そうな顔をする。


「なんじゃ、サクラまで」


「私の居たところでは 食材をすりおろすための道具がありました。『おろし金』といって、こう、四角い金属で、沢山の小さな()がこう、立ってるんですけど、それが10000¥くらいでしたよ」


「金属の板がか?」


「そのおろし金で()()()()ものは、細胞が潰れず、水と繊維が分離しないので時間を置いても水分をたっぷり含んで、ふわっと、口当たりがまろやかな、風味の損なわないものが出来上がるんです」


「ほう」


サクラはおろし金の説明をする。


「その金属を、(たがね)と呼ばれる道具と金槌を使って、職人さんがひと目ひと目、丁寧に刃を立てていくんです。古くから職人さん達の間に受け継がれてきた製法、技術に 皆がお金を出すんですよ。凄く、いいものだから」


職人が立てた刃は一見するときれいに揃っているように見えるが、間隔や高さが微妙に不揃いになっていて、熟練の業がいるのだ。


「だから、ラルゴさんの言うことは もっともなんです。ラルゴさんは モルガンさんの職人としての腕をかってるんですね」


モルガンが とても嬉しそうに笑う。

そうか、そうか、と 目元を光らせて。


ラルゴは いい商人になった。

ホントに この村の一員になったんだな……


サクラとイシルとランは そっとその場を後にした。


「今日はお酒飲みあかさなくていいの?ラン」


「ギルも夜勤でいないし 明日出掛けるから」


ランは一体どこへ連れて行く気なんだろう。

サクラとイシルとランは いつものごとく 他愛もない話をしながら 家路についた。







炭火焼肉!!





挿絵(By みてみん)





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