demonorhuman
「屋根よーリーた〜か〜い〜こいぬぉボォリィー」
「兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃん何歌ってんの」
「何って鯉幟に決まってるだろ」
そう答えた俺を見る弟の目は尊敬のそれではなかった
「下手っぴ」
そう言って弟は笑った
たとえ家族が笑ってくれるなら下手でもいいと思った
これはみんなを笑わせる為断じて下手ではないそう断じて
「ただいまー」
「お兄ーちゃん」
真ん中の妹の貴子が俺の名前を読んだ
「なーなー兄ちゃん今日も歌下手だったぜ」
「ほんとー?私も聞きたーい」
奥から泣き声が聞こえて来た
「やーだー私も行きたーい」
駄々を捏ねてるのは末っ子の双子小夜子だ
「小夜子はまだ小さいからもっと大きくなってからね」
「やーだー」
どれだけ姉である梨沙子がなだめても小夜子は泣き止まない
双子の弟である武雄と言えば気持ちよさそうに寝ている
「輪ちゃんおかえり」
俺のことをそう呼ぶのは近所に住んでいる幼馴染
高梨麗だ
大方配達の帰りだろう
「なんでいるんだよ」
呆れた調子で俺が質問する
「酷ーい折角出迎えてあげたのに」
「分かった分かったからもう帰れ風邪ひくぞ」
「じゃあおばさんまた」
「いつもありがとうね」
こんな毎日だが俺は満足している
決して裕福と言うわけではないが今が1番幸せなんだ
「みんなー便所行ったかー」
「はーい」
「じゃあ電気消すぞー」
パチッ
「いつもありがとうねお兄ちゃん」
「何がだ?」
そう答えた俺に梨沙子は不思議そうな顔をした
「いつもみんなの為に働いてくれてありがとう」
「なんだそんな事かそんぐらいどうってことないよ」
「そっかおやすみ」
「あれが柚木輪廻」
「何故あれが」