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第21話 付与士の戦い方

「只今より、ラゼル対ゴンザレス、リスガンの模擬戦を開始する!」



強化魔法(ライズマジック)筋力増加(パワー)

 サイモンの開始の合図と同時に俺は俺の使える唯一の魔法である強化魔法(ライズマジック)筋力増加(パワー)を使う。

 魔法を扱う職業(クラス)ならこれくらいは当然だと思ったのだが、リスガンとやらは魔法を撃つ素振りを見せない。それどころかよそ見をしている。……なんだあいつ、俺のことを舐めすぎじゃないか?


 そこまで思考して、こいつが『魔導士』と決まっている訳ではなかったなと思い出す。

 リスガンとやらが後手有利となる職業(クラス)か、俺の油断を誘っている可能性が高いな。


 だが、敢えてその作戦に乗ってやろう。


 合図と同時に俺が魔法を唱えたように、ゴンザレスも行動を開始している。

 俺が魔法を使うことをゴンザレスは予測していたのだろう。ゴンザレスは背中に背負っていた大剣を構えながら俺に向かって馬鹿みたいに一直線に走ってくる。

 等級(レベル)1の『付与士』が使える魔法は筋力増加(パワー)だけなのだから、警戒する必要もないと考えたのだろう。もし、相手がなんの経験もない普通の『付与士』だったなら成す術もなく倒されていただろう。


 だが、俺を今まで見てきた『付与士』と同じように考えたのが間違いだ。

 

集中付与(コンセントレイション):足」


 俺は()()()()()の右足()()に魔法を付与した。

 そうすると何が起こるか。


「んなっ!?」


 案の定、片足だけ大幅に強化されたゴンザレスは俺の直ぐそばでバランスを崩して盛大に転んだ。

 当たり前だ。俺だって今でこそ転ばないが、通常の感覚しか知らない人間が集中付与(コンセントレイション)を初めて喰らったのに、バランスを崩さないなんてことがあったら俺はショックで泣いてしまうかもしれない。

 しかし俺が泣くような事態には一切ならず、ゴンザレスは俺の思惑通りに転んでくれた。

 そうして生ませた隙を俺が逃すはずもない。


強化魔法(ライズマジック)筋力増加(パワー)

集中付与(コンセントレイション):足」


 すかさず自身に魔法を使い、転んでいるゴンザレスをある所目掛けて蹴り飛ばす。

 

 狙った先にいるのは勿論、先ほどから戦う意思を微塵も感じさせなかったリスガン。

 何を考えているのかが不明で今の俺では理解出来なかったこともあり、取り敢えず遠距離攻撃も兼ねての行動だ。


 全力で蹴り飛ばしたからかは知らないが、ゴンザレスはとんでもないスピードで吹っ飛んでいく。


 そんな高速で吹っ飛んでくるゴンザレスを、よそ見をしていたリスガンに避けれるはずもなく、俺の狙いどおりに衝突した。いや、リスガンと衝突と言うよりもリスガンを巻き込んで訓練場の壁と衝突した、という方が正しいだろう。


 俺のからによる衝撃が、本来想定されるダメージよりも大きかったのか、訓練場の耐久性に問題があるのかは知らないが、俺が蹴り飛ばしたゴンザレスによってもたらされた衝撃によって、訓練場の壁には大きな穴が開いた。

 パラパラ……とそんな音を出しながら今も壁は崩れている。

 

 ……ヤバい。初めて人間に全力で蹴りを入れたけどこれ、ゴンザレス死んでないよな……?

 というか壁壊しちゃったけど、これ修繕費って俺持ちなのか……?

 いや、待てよ?相手はDランクの冒険者だ。この程度で死ぬはずがない。むしろ勝ったと考えて俺が油断しているところを虎視眈々と狙っているかもしれない。

 仮にもDランクの戦闘職というからには、並大抵の戦闘能力はあるだろう。

 ゴンザレスだって、『付与士』である俺の蹴り一発でKOされるほど柔な耐久をしていないはず。

 俺がDランクの『剣士』なら、この程度で気絶なんてしないからな。


 そう考えると、あのリスガンとかいう魔法使いにも同じことが言えるだろう。

 リスガンは最初から不自然だった。

 相手から目を離すなんて愚行をDランク冒険者がするとは思えない。

 っ!?まさか、幻影魔法……!?

 ありえない話ではない。

 というよりもそう考えると色々と辻褄が合う。

 だが、そうだとしたら一体いつから幻影だったんだ……?本体は一体どこに…?


 ……まぁ、兎にも角にもきちんとトドメをささないとな。

 

 そう思って蹴り飛ばしたゴンザレスの元に向かおうと足を向けたのだが、その足は止まることになる。

 

「こ、この模擬戦っ、ラゼルの勝利っ!」


 というサイモンの声が聞こえたからだ。

 俺としてはまだまだこれからだと思っていたのだが、これ以上続けるのであればそれはもう模擬戦ではなく殺し合いというのが正しくなってしまう。

 ここらで手打ちにするのが一番だという判断か。


「……これで俺の実力は示せたのか?」


「あ、ああ、それは、勿論だ……」




 こうして俺はゴンザレスたちとの模擬戦に難無く勝利し、冒険者になるための条件を満たせたのだった。

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