第17話 合流
アリッサと合流した俺は、まず始めに待ち合わせ場所に居れなかったことを謝罪した……のだが、アリッサは一切嫌な顔せず許してくれた。
そう、許してもらえたのだ。
アリッサは女神なのかも知れない。
流石にそれは悪い気がして何度も謝らせて頂いた。
だが、アリッサは自分に親衛隊なんてものがあるのが恥ずかしかったらしく、終始顔を朱に染めていた。かわいい。
そんなことを考えながらふと横を見てみると、アリッサが顎に手を当てながらボソボソ何かを呟いていることに気づく。
「エマさん達にラゼルくんのことを知られたのは不味いかもしれない……。ラゼルくんは格好良くて優しくて素敵でイケメンだしもしかしたら、なんてことも……」
あまりにも小さな声で聞き取れはしなかったが、今俺のことを話していた……よな?
「ごめん、聞き取れなかった。申し訳ないけどもう一回言ってもらえる?」
「んくっ!?や、やだなぁ〜ラゼルくん。私ナニモ言ッテナイヨ?」
え?絶対に何か言っていたと思うんだけど……。
まぁ本人が触れて欲しくなさそうにしてるし、アリッサには悪いことしたから聞かなかったことにして別の話題を振るか。
「そういえばなんだけど、仮想世界には機能制限があるんだな」
やはり触れて欲しくなったのか、アリッサは食い気味に返事をしてきた。
「ま、まあ時代に革命を起こすって言われてるレベルの魔道具だからね。模擬戦は等級10を超えたら利用できる筈だよ」
「れ、等級10!?等級10って言ったらDランク冒険者になれるかどうかってくらいの等級じゃねーか!?」
マジか!?
そんな等級になるまで学校が支援してくれるってのか!?
さ、流石は天下のグラントーレだぜ……
「あの、勘違いしてるみたいだけど、エマさん達の等級は確か3だったはずだよ」
ん?エマ達の等級が3?
もしそうなら、エマ達も仮想世界が使えないんじゃ……?
だが、あいつらは俺みたいに[利用条件を満たしてません]なんて言われてなかっただろうし、もし言われていたとしてもそれならそれで俺は今ここに居ることはなかったはずだ。
俺の抱いた疑問に答えるようにアリッサが説明をしてくれた。
「エマさん達が仮想世界を使えるのは『グラントーレ』に通う生徒とその教師全員に特別許可が出ているからだね」
「特別許可?」
「簡単に言うと機能制限の免除だね」
「なるほどな。だからあいつらは仮想世界を当たり前のように使えて、俺だけが使えなかったって訳か」
そうなるとあいつらはこの制限を免除するシステムのことを知らなかったってことか……
だが、そう考えるとあいつらは俺とアリッサの関係や、俺が《グラントーレ》に来た訳もわかっていないのにも関わらず、俺に突っかかってきて、無駄に俺の時間だけを奪ったってことになるのか……
(よし、今度会ったら覚えていろよ…。絶対目に物見せてやるからな!エマ!キャシー!ご、ごる、・・・・・ゴリラ!!)
密かにアリッサ親衛隊3人組に仕返しをしようと決意した俺だった。
「ーールくん!ラゼルくん!!ちょっと聞いてる!?」
「っと悪い、ちょっと考え事してて聞いてなかった。スマン」
「そんなことだろうと思った。ほら見えてきたよ」
見えてきた?見えてきたって一体なにが……
アリッサのいう見えてきたモノに皆目見当もつかない俺は辺りを見渡してみる。
だが、アリッサがいう見えてきたモノが何なのか俺には見当もつかなかった。
「・・・嘘でしょラゼルくん。ほらあれだよ。あれ!」
嘘でしょとはなんだ嘘でしょとは。
流石の俺でも来たことのない街で突然「見えてきたよ!」とだけ言われても分からない。
そう言いながらアリッサはある建物へと指を指していた。
その建物の入り口の上にはある施設をイメージしたマークが刻まれていて……
そこまでして、ようやく俺は何が見えてきたのか理解した。
アリッサが「嘘でしょ」と言いたい気持ちも今では完全に分かった。
まあ確かに「嘘でしょ」ってなるよな。
アリッサが指差していた建物は、俺が幼い頃から目指していた夢を叶えるには欠かせない施設、冒険者組合だったのだから。