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第14話 仮想世界

「模擬戦をするのはいいとして、一体何処でするつもりなんだ?」



 【アリッサ親衛隊】の3人に連れられて着いたのは、サイズの異なる魔道具が数多く並んでいる施設だった。

 どう見ても模擬戦などに使うような施設には見えない。


 だが、この施設の入り口には『模擬戦場』とデカデカと書いてあった。

 それもやけに大きく書かれていたため、俺が読み間違えた、という訳でもない。

 しかし、こんなにもメカメカしい魔道具がいくつも並んでいるのを見るととてもじゃ無いが『模擬戦場』には見えない。



 というかそもそもが狭い。狭すぎるとってもいいくらいだ。

 広さだけならば【ベーコ】でガルフ爺ちゃんと模擬戦をしていた広場の方がまだマシなレベルだ。

 国最高峰の学校の模擬戦場がここなのか……?



「さあ、早く『仮想世界(バーチャルワールド)』に横になりなさい!」

「……『仮想世界(バーチャルワールド)』?」



 俺がそういうとエマは「はぁ?」といった様子で



「え、何?あんた『仮想世界(バーチャルワールド)』を知らないの?」



 まるで「そんな人間居たんだ」とでも言いたそうな顔をしながら言われても、俺はつい最近まで修行ガチ勢だったんだから、最近のことには詳しくないのはしょうがないだろう!?


「その様子だと本当に知らないのね……。まあいいわ。あたしが教えてあげる。仮想世界(バーチャルワールド)ってのはねーー」




 エマから教わったことを簡単に要約すると『仮想世界(バーチャルワールド)』とは簡単に言うと使用者の精神と肉体を切り離し、精神のみでの活動が出来るようになるという超大型魔道具のことらしい。

 勿論、精神のみであるため仮想世界(バーチャルワールド)内で怪我をしたとしても肉体に影響はないし、仮想世界(バーチャルワールド)の精神のみを扱うという性質を利用すれば実際にはかなり距離の遠い地域に住んでいる者であっても簡単に交流が可能というこの時代に革命を起こした魔道具なのだとか。

 だが精神を切り離した後の安全性やその技術の確立の困難さから実現するのはまだまだ先のことだと思われていたらしいが、カルナラが誇る【天才魔技師】マリエルによって出された改良案により、安全性も問題ないとされつい一年ほど前から正式に導入されたらしい。



「ーーということで仮想世界(バーチャルワールド)で模擬戦をするのだけど、仮想世界(バーチャルワールド)を使っての模擬戦は……経験無いわよね?」

「当然。ないよ」



 初めてその存在を知ったばかりなのにそれを使っての模擬戦なんてした事があるわけがない。



「そうでしょうね。なに、そんな難しくないわよ。仮想世界(バーチャルワールド)で横になると[ログインしますか?]と聞かれると思うからその時に「ログインする」と念じなさい。するとアカウントの設定に関する説明が自動的にされるはずよ」

「なるほどな」



 そのくらいなら俺でも出来そうだ。



「じゃあさっさとログインしなさい」



 エマに促されるままログインを済ませるために空いている仮想世界(バーチャルワールド)を探す。

 エマが直ぐに仮想世界(バーチャルワールド)に横になるようだったら探すフリをしてここからおさらばさせて貰おうと考えていたのだが、生憎とエマにその様子はない。

 ちなみに何故俺がエマとしか会話をしていないのかというと他の二人は俺が仮想世界(バーチャルワールド)の説明を聞いているうちにキャシー、ゴルゥラの二人はそそくさと仮想世界(バーチャルワールド)に行ってしまったからだ。

 エマが気の回る奴でなかったら「使い方が分からなかったから」とか言ってそのまま無かったことに出来たかもしれないのに。くそう。


 しばらく空いている仮想世界(バーチャルワールド)を探し、無事に空き仮想世界(バーチャルワールド)を発見してしまった俺はエマに促されたように横になる。



仮想世界(バーチャルワールド)にログインしますか?]



 聞いていた通りの言葉が俺の頭の中に()()響いてきた。

 どうやら耳を経由することなく言葉が脳に伝わっているようで、少し不思議な感覚を覚えた。



(ここで[ログインする]と念じるんだっけか?)



 俺はエマに教わった通りにそう念じた。すると、



[了解しました。利用者情報(プレイヤーデータ)の確認中……。確認できませんでした。新規登録をしますか?]


(おお!これがエマの言ってた魔道具音声って奴か。というか本当に自動的に説明がされるんだな……。えっと……[はい]でいいんだよな?)


[了解しました。では個人情報(ステータス)の開示を求めます]



 脳内に響いてくる魔道具音声に促されるまま、俺は個人情報開示(ステータスオープン)する。



[情報処理中……。処理が完了しました。ラゼル様でお間違いありませんか?]


([はい])



 ……って、こんなにも簡単ならエマに聞くまでもなかったな

 


[ラゼル様の利用者情報(プレイヤーデータ)を記録中……。記録が完了しました。本日はどのような目的でのご利用ですか?]



 まあ、ここまで丁寧に教えてくれたことだし……しょうがない、模擬戦してやるか……。



([模擬戦]っと)


利用者(プレイヤー)ラゼルは『模擬戦』の使用条件を満たしていません]





















(……は?)


[現在、利用者(プレイヤー)ラゼルは利用可能の項目がありません。ログアウトしますか?]



 え?ちょ、ちょっと待てよ!どういうことだ!?

 利用可能な項目がない!?



 そんな俺の疑問に答えるように、淡々と魔道具音声が説明をしてくれた。


利用者(プレイヤー)ラゼルは当魔道具を使用するための最低限の等級(レベル)である等級(レベル)5という条件を満たしておりません]



「……はは」


 


 とんだ無駄足だったわ!!!!




















 俺は仮想世界(バーチャルワールド)から体を起こす。

 キャシーとゴルゥラは勿論のこと、エマも俺が仮想世界(バーチャルワールド)に横になったのを見た後に仮想世界(バーチャルワールド)を使用したようで、【アネッサ親衛隊】の3人は仮想世界(バーチャルワールド)を利用したまま意識を無くしているようだ。


 そんな訳で結局、模擬戦をすることもなく模擬戦場を出ると、待ち合わせ場所に居なかった俺を探していたアリッサと運良く合流した。

 アリッサには「なんでこんなところにいるの!」と少しお説教をされたが、流石に俺は悪くない気がする。

 そんなこともあったが、俺達はそのまま《グラントーレ》を後にすることにした。

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