第11話 まさかこんなことになるとは
達成できないであろうと予想していた目標があっさりと達成できてしまったため、俺はいつになく浮かれていた。
それもそうだろう。アリッサは世界有数の『賢者』だ。
既に何処かしらで働いていたりしても何の不自然もない。
そんなアリッサが現在も無所属だっただけでも奇跡のようなことなのに、俺の仲間勧誘も快諾してくれたのだから、浮かれないほうがおかしい。
そんな風に俺は《グラントーレ》の前で一人喜びを隠せないでいた。
一人というのにも理由がある。
アリッサが《グラントーレ》を出る、ということを学園長とやらに報告しに行っているからだ。
流石に学校に何の連絡もなしに冒険者として活動できるはずがない。
ましてや『賢者』ともあろう人と突然連絡が取れなくなってしまったら、下手しなくても一大事だからな。
そういった事情から、現在俺はアリッサが帰ってくるのを一人で待っているという訳である。
アリッサが帰ってきた暁には俺達はそのままめ冒険者登録をしに向かう手筈となっているため、俺はウキウキとした気持ちが溢れまくっていた。
あ〜はやくアリッサ帰ってこないかなぁ〜!!
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そう考えてから何時間だったのだろうか。
待ち始めたのが朝の7時だと仮定しても、このオレンジ色の空からして、最低でも8時間ほどは経過しているのではないだろうか。
流石に8時間も待つとは考えていなかったため、俺ももう自分を誤魔化しきれなくなっていた。
……あえて言おう。暇であると。
本音を言えば、ポーションやらなんやらを扱う店などを探しに行きたいのだが、アリッサとの待ち合わせ場所がグラントーレの前ということで、下手に動くとアリッサを困らせることになる可能性がある。
そのため、俺はこの場にとどまりながら暇を潰さなくてはならないのだ。
こういった場合、いつもなら一人しりとりをするところなのだが、また一人しりとりをしたとして、再び不審者扱いされるオチが見えている。
他になにかいい案はないだろうかと俺が暇を潰す術を探しているその時。
「ちょっとそこのあなた?」
アリッサの着ていた服と同じ物、つまりグラントーレの制服に身を包む女達に俺は声を掛けられたのだった。