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子豚のクッコローゼと世界樹の家  作者: のの原兎太
第1章 病気を治す、すごい蓮の実
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09.クッコ、ふたりでご飯を食べる

 子豚のクッコローゼは毎日ボッチ(めし)だ。


 世界樹のミミルはいるけれど、水だけで充分で一緒に食事をしてはくれない。


「おぉ、飯を持ってきてくれたのか! クッコローゼは優しいな」


「……なんで(なわ)が外れてるの?」


「いやなに、クッコローゼがくれた矢でちょちょいとな!」


 クッコが戻ってきてみると、ガウルードは縄をほどいて固まった手足を伸ばしているところだった。

 なんと、クッコが放った矢を使って、縄を切ったらしいのだ。人間というのはなかなかに器用な種族らしい。


「ぷう、後ろに下がって!」


「そんなに警戒(けいかい)しなくても、なんもしやしないよ」


 (おり)から手を出すガウルードから十分距離を取りながらクッコは言う。

 腹ペコの獣はイライラしていて危険なのだ。それくらい、クッコだって知っている。


「食事いらないの? 後ろに下がって!」


「へいへい、苺ちゃんは気難しいね」


 ガウルードはちょっとおかしい。腹ペコのはずなのに、なんだかとっても余裕を感じる。

『苺ちゃん』なんて呼び方もむずがゆくって、クッコの方がイライラしてしまう。


「変な名前で呼ばないで!」


「じゃあ、なんて呼んだらいいんだ?」


「……クッコ」


「オーケイ、クッコ。うまそうなスープだ、ありがたく頂くよ」


 檻の一番奥までガウルードが下がったのを確認して、クッコは檻の隙間からパンとスープを差し入れた。

 ガウルードはクッコが下がるのを待ってから、クッコをおびえさせないように、ゆっくりとスープに近寄って、「いただきます」と言って食事を始めた。


「おぉ、こりゃうまい。こんなにうまいスープは初めてだ。パンもふかふかだな!」


 ガウルードは人間だっていうけれど、オーガみたいによく食べた。

 うまい、うまいと、最後の一滴までパンで拭うようにして食べたから、お代わりがいるかと聞いてみたらニカッと笑って欲しいと言う。


 クッコはいつも自分の料理を、おいしいなと思って食べるのだけれど、料理を人に食べさせたのも、おいしいと言ってもらえたのも初めてで、自分でおいしいと思って食べるより、なんだか胸がいっぱいになる気がした。だから、ついつい3回もお代わりを運んで、ついでに自分のぶんも持ってきて、檻を挟んでガウルードと二人で夕食を取った。


「ふー、食った、食った。ごちそうさん。なぁ、クッコが俺を助けてくれたんだろ?」


「違うよ。森狼はガウルードが倒してたよ。ガウルードも倒れてたけど。最初はオーガだと思ったから、回収したんだよ」


「ははは、オーガか。俺はでかい方だからな。でも、やっぱりクッコが助けてくれたんじゃねーか」


「違うよう。保存食として持って帰ってきたんだよ」


「おおおい。俺を太らせて()うつもりかよ? だったら、もう少しお代わりをもらおうかな」


クッコの保存食発言に、ガウルードはおおげさに驚いてみせる。

ちっとも怖がっているようには見えないし、さらにお代わりなんていうものだから、クッコはくすくす笑ってしまう。


「じゃあ、クッコはお代わりにガウを食べちゃう。うぷぷ、嘘だよー。ガウは人間だから。人間は食べちゃダメだから、食べないよ」


「そうか。それ、信じるぞ? 信じるからな? 食べちゃだめだぞ。

 それにしても俺、結構ケガしてたと思うんだけど、クッコが治療してくれたのか? ずっと縛られてた割に、手足も大して痺れちゃいないし」


「それは、たぶん蓮の実の効果。死にそうだったから、蓮の実の粉を飲ませたの」


「蓮の実?」


「うん。すごく栄養があるの。ガウの頭の毛、魚に食べられちゃったけど、うぷう、もう、ちょっぴり生えてきてるね」


「毛? ………………アァ!? 剥げてんじゃねーか!」


「ぷぷぅ、変な頭ー」


「あー、まじかー。まぁ、生えるから、いいかー」


 クッコとガウルードは二人で顔を見合わせて笑った。

 クッコはいつの間にかガウルードのことを「ガウ」と縮めて呼んでいて、とっても仲良くなれた気がする。

 ガウルードは悪い人間なんかじゃない。クッコはとっても鼻が利くから、そういうことは分かるのだ。ガウルードがいい人で、クッコはなんだか嬉しくなった。


「うぷぷ、うぷぷ、うふー」

「笑いすぎだぞ、クッコー」

 

 こんなにたくさん笑ったのは初めてで、たくさん笑うとお腹が痛くなるんだと、クッコは初めて知ったのだった。



クッコのヒミツ:クッコは食いしん坊だから、お料理にはこだわりがあるんだ。

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