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子豚のクッコローゼと世界樹の家  作者: のの原兎太
第1章 病気を治す、すごい蓮の実
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03.クッコ、世界樹の家に帰る

 子豚のクッコローゼには家がある。


 クッコが住んでいるのは、石化した世界樹の大洞(おおうろ)だ。


「ぷわー、やっと着いたー」


 森狼を何とかまいて無事に自分の住み家に帰ってきたクッコは、岩山のように大きな石化した世界樹と、その周りを半分囲んだ湖の前で一息つく。


 石化した世界樹は半ばから折れていて、中が空洞になっている。

 とっくの昔に死んでしまった樹だけれど、石化した外皮はとても硬く分厚くて、ドラゴンでも壊せないのだそうだ。外からはネズミ一匹入る隙が無いのだけれど、湖側から一カ所だけ、中に入れる場所がある。


 けれども、この湖には凶暴な肉食魚がたくさん住んでいて、水に入るとあっという間に喰われてしまう。

 とても頭の悪い魚なので、湖に落ちたものなら何でも、それこそ木の葉や枝、石ころにだって襲い掛かる。だから船で渡ることもできない。

 立派な船を浮かべても、すぐに穴ぼこだらけにされて、乗った人ごと魚の餌だ。


 ちなみに捕まえる時は、(えさ)の代わりに石ころをたくさん(かじ)らせて、重くて動けなくなったところを吊り上げる。吊り上げ用に(ひも)の付いた石ころを上手に食べさせるのがコツなのだ。


 そんな凶暴な魚だけれど、食べないものが二つだけある。

 一つは湖の中まで伸びている石化した世界樹の根っこで、もう一つはこの湖を縁取るように生えている、でっかい(はす)だ。


 世界樹の根っこは硬いからさすがに学習したのだとしても、どうして蓮を食べないのかというと、この蓮と魚がいわゆる共生関係にあるからだ。


 とても大きな蓮の葉は、クッコどころかオーガが乗っても沈まないけれど、中にハズレが混じっている。小鳥のような軽い生き物でもハズレの葉っぱに乗った瞬間、ずぶんと葉に包み込まれるように湖の中に沈んでしまう。そして魚の餌になるのだ。


 この蓮は常にどこかの株が花を咲かせ実を付けていて、その実はすごく栄養価が高くて病気やケガがすぐに治る。だから、その実を求めて森の動物が来るのだけれど、実を付けた株の周りは全部ハズレの葉っぱで、実を狙った動物はもれなく魚の餌になる。実は完全に熟すと、石ころのように固くなって、魚でも食べられなくなる。そうして湖の底に沈んで、ゆっくりと成長していくのだ。


「今日のハズレはあれと、あれだから、このコースで行くとして」


 ハズレの葉っぱは日々変わるけれど、今のクッコはどれがハズレの葉かわかる。だから蓮の葉っぱを橋にして世界樹の家の入り口にたどり着ける。けれど、クッコ以外は途中でハズレの葉を踏んで、とてもたどり着けないだろう。

 初めてここに着いた日に、クッコが世界樹の中に入れたのは、"お招き"があったおかげなのだ。


「このオーガ、足が水に入ると、魚にかじられちゃうよね。暴れられても困るし、折りたたんでくくろう」


 大けがをして意識はないはずなのに、オーガは剣を握りしめて離さなかったから、クッコはオーガの腰から(さや)を外して剣を収めた。そして鞘に納めた剣を棒代わりに、オーガが剣を抱きかかえるように両(ひじ)と両(ひざ)を剣の鞘に括りつける。暴れないようにぐるぐるだ。

 剣の鞘がちょうどいい持ち手になったから、クッコはそこを肩に担ぐと、エイサホイサと蓮を渡って世界樹の洞に運んだ。


 頭をくくりつけるのを忘れていたから、ブランとしたオーガの頭が湖に浸かって後頭部の黒髪がだいぶん魚に喰われたけれど、慌てて持ち上げたおかげで皮膚を擦りむいたくらいで済んだから、上手に運べた方だろう。


 頭のてっぺんだけ髪の毛のなくなったオーガは、なんだかとっても滑稽(こっけい)で、クッコはちょっぴり楽しくなった。


「うふふふふ、うふふふふ」


 笑いながらくるくる回っていたせいで、10匹以上いた森狼を全部運び込んだ時には、日はすっかり傾きかけていた。



クッコのヒミツ:クッコは子豚さんだけど、半分魔物の血を引いているからとっても力持ちなんだ。

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