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子豚のクッコローゼと世界樹の家  作者: のの原兎太
第1章 病気を治す、すごい蓮の実
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19.クッコ、ガウルードに蓮の実をあげる

 子豚のクッコローゼは、大切な蓮の実を全部ガウルードにあげてしまった。


 理由はすごく簡単で、病気の子供たちも、そのお父さんたちも可哀(かわい)そうだと思ったからだ。

 暗くなるまで、一生懸命蓮の実を採ろうとするガウルードを見て、あんな風に大事にしてもらえる子供たちが(うらや)ましいとクッコは思った。

 そして同時に、一粒の蓮の実も採れないまま、焚火(たきび)の前で夜明かしをするガウルードがとても悲しそうに見えたのだ。


 クッコは病気やけがの時、とっても心細くなる。

 ガウルードの子供たちも、きっと同じ気持ちだろう。いや、薬が無くて何日も悪い状態が続いているなら、もっと(こわ)いかもしれない。

 そんな子供たちを置いてきたガウルードは、どんなに心配なことだろう。

 目の前に薬になる蓮の実があるのに手に入らないのは、どんなにつらい事だろう。


 世界樹のミミルは、人間はとっても(かしこ)い生き物で、その賢さを悪いことに使う者もいるといっていた。

 ガウルードが悪い人間ならば、クッコに(うそ)をついたり(おど)したりして蓮の実を(うば)うこともできただろう。


 けれどガウルードは、クッコに蓮の実をくれと2度とは言わずに、クッコの大切な蓮の実を取り上げようとはしないで、自分で何とかしようとした。

 それは、クッコのことも子供たちと同じくらい大切に思ってくれたからではないだろうか。


「そうだったら、いいなぁ。そうじゃなくっても、ガウルードになら、いいや」


 子供たちを助けよう。心配して悲しんでいる大人たちも助けよう。

 なにより、大好きなガウルードを助けてあげたい。


 そんなふうに思えたから、クッコはあの日、(ねむ)(ごけ)(けむり)を使った後、ガウルードとありったけの蓮の実を台車に乗せて、《森の噂話(サーチ・フォレスト)》で木々の声を聞きながら、ガウルードを国の近くまで送り届けた。


 普段は使わない(けもの)()けの薬草を()いていたから、1日と少しでガウルードを届けることができたけれど、獣除けの薬草が効かない魔物がいないか、おっかなびっくりの道行きで、途中何度もガウルードを起こそうかと迷ったくらいだ。

 クッコは世界樹の守り人で、樹魔法が使えるから、眠り苔も獣除けの薬草も効かないようにできる。それでも半分オークのクッコからすると獣除けの薬草はとっても臭くて、クッコの鼻までバカになってしまう。

 初めて来る遠い森で、臭いがかぎ取れないのは、とっても不安なのだ。


 それでもガウルードを起こさなかったのは、もしも起こしてしまったらお別れがつらくなってミミルの所に戻れなくなる気がしたからだ。


 クッコはガウルードのことが大好きになったし、ガウルードの子供になって、一緒に暮らしていたかった。けれども、クッコは世界樹ミミルの守り人で、ミミルを見捨てることなんて、絶対できないことだった。


 だから、ガウルードが寝ている間に送り届けて、起きないうちにさよならをした。


 転がるように森を走って、飲まず食わずで住み家に戻った。

 そうしていないと、大きな声で泣いてしまいそうだったからだ。知らない森で大きな声で泣くなんて、森の獣に食べてくださいといっているようなものだ。

 だからクッコは、何にも考えられないくらいに夢中になって森を走って帰ったのだ。



クッコのヒミツ:クッコの縄張りは世界樹の周りだから、人間の国の近くまで来たのは初めてだったよ。大冒険だったんだ。

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