3.終焉の彼岸で
体がなまってもいけないので、リハビリをしていた。戦闘も自軍が優勢で、落ち着いてきていた。降伏の勧告文を敵軍に送ったとのことなので、もしかするとこのまま終戦となるかもしれない、とのことだ。
ただ、魔物の軍勢は血気盛んなものが多いので、むしろ追い詰められたとして開き直り、むちゃな作戦を展開してくるかもしれないので油断は禁物だと、大将がくぎを刺した。
剣を握り、盾を持って、実戦形式の剣闘訓練を行う。全く動けないのではないかという懸念はなくなり、むしろ動きの切れが良すぎて落ち着かなかった。もしかしたら、記憶が減ったことで処理にかかる時間が減り、思い切りよくやれるようになったのかもしれない。記憶がなくなったという利点を感じた。
落ち着いてきてハタと、師団長がやられるほどに強いオークロードを、なぜ私が倒せたのだろうか?と思った。師団長ということは相当に実力が認められているはずである。むしろ、師団長が弱らせていたから私が討伐できたのではないのだろうか。となると、昇格は疑問になってくる。2階級特進するほどの活躍ができていたのだろうか?私は師団長に尋ねた。
「それについては心配ない。彼は確かに師団長で、オークを弱らせていたことは事実だ。だが、貴公の働きは、多くの小隊に被害を与えた手負いのオークを一手に引き受け、そして斃し、貴公は生き延びた。もしオークが斃されていなければ、戦線は維持できず撤退は免れなかった。そうなっていたら、敗北はわが軍にもたらされていたかもしれない。2階級どころか3階級以上すら上がる可能性のある武勲だ。むしろ評価がいささか低いとも私は感じるが」
だそうだ。しかし、私は、と反発しようとすると、さえぎられた。
「貴公も2人の子供と妻を養っていかねばなるまい、そして死ぬわけにもいくまい。昇進するほど任される規模は大きくなるが、より安全になる。貴公ならばおそらく素晴らしい部隊を作り上げるだろう。そうなれば同程度の敵と戦っても、より生き延びられるようになる。せっかくだし受け取っておけ」
ここで私は自分の子供と妻の存在を知った。