2.兵士たちの証言
「まだ休んでいてください」と強く言われ、私は兵士たちの安置所に戻ってきた。
ついたと思ったら声をかけられた。
「ガーランドさん!よかった。生きておられたんですね!」
「あ、ああ、おかげさまで」
少し食い違いが出るかもしれないが仕方ない。何とか話を合わせておこう。
「あなたのおかげで、私を筆頭に小隊ともども無事です!これであなたがなくなっておられたら、顔向けができないところでした」
「そりゃよろしうございました」
話を聞いていると、どうやら彼らの小隊がオークと交戦中に、オークロードが乱入してきたようだ。ロードを抑えていた師団長がやられて、オークロードは手当たり次第に我々の軍の軍人たちをなぎ倒していたようだ。彼らも巻き込まれ、もうだめかと思ったところに私がオークロードを抑え、早く逃げろと声をかけたようである。
要領を得ない説明しかできないが、「助けられた」と思い込んでいるだけで、私は助けたつもりなど毛頭なかったかもしれないので、彼らの言い分を素直に受け入れてもいいものかと迷うのである。仮にオークロードを止め、彼らが逃げるのを手助けしたのが真実としても、その時に私がどう思っていたかははっきりしない。本当に助けようとしていたのかも定かではないし、もしかしたら私の責任で師団長がやられて、尻ぬぐいしなければ、ついでに恩を売っておこうと考えるような卑劣な者だったのかもしれない。私の人格の概形が分かるまでは、はっきりしたことは言えないのだ。
しばらく寝かされていたので、あまり多くの人から話を聞くことはできなかったが、助けた、という小隊の兵士たちがやってきて、口々に感謝を述べていった。また、私の担当戦線、というか対応する敵はもともとゴブリンリーダーとホブゴブリン達で、一応きやつらは撃退したということを、同一戦線の者を名乗る1兵卒から聞いた。
「ガーランド殿はバッタバッタとゴブリンどもをなぎ倒し、あっという間にゴブリンどもは逃げていきました。深追いは無用、むしろ追いかけて個々の防衛がおろそかになると、ほかの戦線ともども共倒れになるというのも、納得させられました」
そして、上司にあたる師団長は、
「お前の働きは報告しておこう。おそらく連隊長ぐらいにはなれるはずだ」
と言い残して、戦線に復帰していった。どうやら、それなりに実力のある者だった、ということは間違いないようだ。もちろん、それは過去の自分であることを忘れてはなるまい。消え去った記憶に、剣の持ち方や振り方が含まれていないとも限らないのだから。