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異世界戦士  作者: 天蓋
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奇妙な客

「小説家になろう」では初投稿となります。投稿頻度は不定期になると思われますが、ご理解よろしくお願いします。なお、かなり短い区切りで投稿します。

「ああ…はあ……はあ…」男は目覚めた。砂漠の空の下で。 ここはどこだ?記憶を探る。私は誰だ、どこで、なにをして、………あれ?


思いだせない。なにもかも…私は誰だ?




正午。砂漠と草原の境にあるこの小さな町に、一人の余所者が入り込んだ。

ちぐはぐな男だった。奇妙な衣服を纏っているが、サイズが合っておらずつんつるてんだ。風貌は30代くらいなのに、辺りをキョロキョロと見回して歩く姿は子供のようである。


男は町の大通りに入った。その姿は完全に町の人たちから浮いていた。獣の顔をした人たちや爬虫類の眼がその男を注視する。彼らは口の中でなにか呟いては、男から目を逸らす。

しばらく歩くと、男を誰かが呼び止める。重機のような体格の男たちが男の肩を掴んだ。どちらも揃いの革の制服らしきものを着ている。警官のようだ…警官?警官ってなんだ?口角から牙をひらめかしながら、犬頭の警官は質問する。


「ちょっとあなた、どこの町の出だい?」

「すまないが、名前を」

私の答えは、二人の警官の意に沿わないものだったようだ。


「…わからないんです」

「わからない?」警官が疑い深い唸り声をあげる。

「そんなはずないだろう、王都からの人なら手形がないとキープを通れないし」

「砂漠から…」


またしても警官は疑いを深めた。

「砂漠ぅ?そんなはずはない。砂漠は地の果てだ…誰かが来るはずはない」

「どうする?」

「牢にぶち込むか…」

どうしようか、どう考えても危機的状況だ…その時。


「待って!」


誰だろう?人ごみの向こうから誰か走って来る。若い女性のようだ…。

「その人、私の連れなんです!」

「えっ?」

「ですから私の…」

「ああ、お姉さんのお連れさんですか」

「それは失礼を、では」


警官と思しき男たちは急に態度を変え、雑踏に再び溶け込んでいった。女性と見えたのは、本当のところまだ少女というべき年頃の、金髪碧瞳の美しい娘だった。彼女は息を切らしつつ私に向き合った。


「すみません、変なことを言って…私はメユです。あなたが連れていかれそうになっていたので、私、我慢できなくて…」


申し訳なさそうにメユと名乗った少女は言った。続けて彼女は


「あなたはどちらから来たんですか?この町の人…?」


私は再び答えに窮した。仕方ない、私は知っているままのことを言う。

「実は、何も覚えていないんだ…自分の名前も、どこから来たのかも…忘れてしまったんだ…」

「ええっ?」

「ごめん…」

「何も謝らなくても…でも、どうしよう…そうだ、とりあえず私の家に来ますか?」


どうすべきだろう…このまま、この子に甘えてもいいのだろうか…?


「いや、いいよ…そこまでしてもらったら悪いし」


と言ったところで、腹が減っていることに気付いた。言葉に詰まった私をメユが見つめる。よく考えれば、私はいま一文無しだ。これでは食料を得ることもできない、生活する場所もない…私は全くの疎外者なのだ。ならば。


「…いや、ごめん。申し訳ないが、家まで行ってもいいかな」


「ええ、わかりました。私についてきてください。こっちです!」


メユの行く先へついて、私は町の通りへ入っていく。




メユの家は小さな一戸建てで、両隣りの建物に挟まれるようでやや窮屈である。壁の材質は、いままで見たことのない漆喰材の一種のようだ。メユに促され中に入る。


中には女性が一人いた。メユは私の目線に気づき紹介する。

「私の母です。お母さん、この人は記憶がないらしいの、名前も知らないんですって」


「へえぇ、それは大変だねぇ」


メユの母親は穏やかにこたえる。


「あたしはヨコニだ、よろしくねぇ、お兄さん」


「よろしくお願いします、ヨコニさん」


私も挨拶を返す。


「それで、この家に何の用かね、ミモさんや」


「ミモ?」


「ああ、あなたはここの土地の人じゃないんだねぇ?ミモってのは“見知らぬ人”って意味だよ」


「ミモ、ですか」


「そうさ」


「では、私がミモなら、ヨコニさんやメユさんは?」


「あたしは“木”だよ、でメユは“林檎”」


「木と林檎ですか、いい名前ですね」


「あはは、でも妙だねえ、あたしらの言葉はわかるのに単語はわからないのかい?」


「ええ、おかしなことです…それで、これからのことなんですが」


「ああそうさね、ちょうどうちは部屋が一つ余ってるからしばらくはそこで住んでいいよ」


「えっ!あ、ありがとうございます、いいんですか、こんなにまでして頂いて…」


「いいっていいって、あんた、身寄りもないんだったね。それに、ここで追い出してもどうせメユが連れてくるだろうからね、なにせあんたみたいなミモを助けた娘だよ」


「あはは」


「もっもう、お母さん!でも、良かったですね、その、ミモ…さん?」


「はは、それは名前とはいわないんじゃないかな…」


こうして私は、人の厚意のおかげで仮の住まいを得た。しかし、生活の糧は自ら稼がないねばならないだろう。懸念と謎に頭を曇らせて、私は世界のどこかで眠りについた。


導入です。

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