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燭蛾  作者: 美輪神 龍也
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第48話 Countdown

イギリスのファーンボローで始まった『ファーンボロー国際航空ショー2018』は、連日一万人を超える集客を見せ大盛況だった。

ボーイングやエアバスなどのリーディングカンパニーが、ここぞとばかりに航空宇宙のビジョンを披露したり、誰もが驚く企業との提携をリリースし、およそ百ヶ国のプレスが集うメディアセンターは昼夜を問わず世界中にニュースを流し続け、五日間のビジネスデイにおける総取引額は千九百二十億ドル、日本円で二十一兆円を超えていた。

四菱重工のビジネスブースも、F36ライトニングを落札した効果で商談を希望する客が世界各国から殺到し、日本から連泊で出張している武藤、三沢、橋本は時差ボケも忘れるほど忙しく対応に追われていた。


「取締役、落札の宣伝効果は凄いですね!」

束の間の休憩時間、課長の橋本はロブスターのサンドイッチを頬張りながら興奮気味だ。

「そうだな、想像以上だ」

部長の三沢が補足する。

「今日で商談も最終日ですが、YRJの仮契約だけで……ざっと五十件もあります」

「部長、二年分の受注を軽く超えてますよ」

「そうだな。YRJ以外の商談もあったし、大手おおでを振って帰国出来ますね、武藤取締役」

武藤が大きく頷く。

「あとは、明日の航空ショーで我が社のエンジンを搭載したF36の勇姿を、世界中の関係者にご覧いただいて、仮契約を本契約にするだけだな」

「はい!グループの四菱自動車があんな事になって、明るいニュースが欲しかったところですから、起死回生の特大ホームランを打ちましょう!」


展示会場チーフのアーロン・ウィリアムズも、短い休憩時間を利用して、明日のエアショーに備える航空機を遠目から見ていた。

滑走路には英空軍が誇るアクロバットチーム『レッドアローズ』の真紅の機体ホークT1Aが九機出揃い、エンジニアたちが忙しそうに点検をしている。

その少し離れた位置でF36ライトニングも美しいアルミ製の機体を輝かせている。

アーロンの場所からは遠くて、親指と人差し指を広げた中に収まるサイズでしか見えないが、キューンというジェットエンジン特有のエンジン音と、ジェット燃料ケロシンの匂いにアーロンはワクワクしていた。

隣で見学する婚約者で同僚のセシル・エバンズがアーロンの腕をひっぱる。

「アーロン、そろそろ戻らないと。まだ仕事残ってるのよ」

「OK。セシル、先に戻っててくれる?」

「もう、アーロン!」

セシルは口を尖らせてツカツカとアーロンを置いて行ったが、夢中になると周りが見えなくなる彼の子供っぽさが可愛いくて好きだった。


ファーンボロー国際空港では、エアショーの成功を願うスタッフたちが夜通し働き、深夜になっても昼間のように煌々とした明かりを周囲に放っていた。


航空技術の粋を集めた日本のジェットエンジンが、全世界の脚光を浴びる晴れ舞台まで、あと残り十二時間に迫った。

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